小説 本好きゆめの冒険譚 第四頁
「ママ〜何で桃太郎は1人なの?」との問いに「え?」ママはびっくりしたのか、(だって、主人公は1人って決まってるじゃない。)と思いつつも
「お婆さんが一人で川に洗濯に行ったから、ひとつしか桃を持てなかったんじゃな〜い?」と答えた。
「じゃあ、お爺さんが芝刈りに行くのを止めて、お婆さんと洗濯に行ったら、桃太郎は2人だね!」
と、笑いかける私に
「そ、そうね、明日から桃太郎は2人にしましょうね。」母が答えた。
次の日の朝
「パパッ起きて!ゆめが凄いのよ!」
いつもは寝坊助のパパも「ゆめ」と言う単語に即座に反応して飛び起きる。
「ゆめが病気なのか!?」
興奮を抑えきれないママが昨日の夜の顛末をパパに伝えた。
パパは顔を高揚させ、「凄いぞー!」っと叫んだのであった。
その日から幼稚園で、ボーッとする時がたまにあって「ゆめちゃん、どうしたの?」と先生に聞かれたり、友達から言われたりすることが多くなった。
今夜のご飯は「喫茶店のオムライス」。
これも私のお気に入り。ケチャップたっぷりのチキンライスを薄い卵で巻き、ケチャップで「ゆめ」と書いてある。
ママの作るご飯は全部美味しい。
オムライスのたまごの黄色・ケチャップの赤色を見て、「お姫様のドレスみた〜い!」って言うもんだから、本来の所、病気か?と疑う所を二人は、凄いと称賛、パパはまたもビデオカメラで私とオムライスを撮影する。
今日の読み聞かせは「人魚姫」。
あれ?ママは今日から桃太郎が2人の話をするんじゃなかったっけ?
「人魚姫」はロマンチックな話なのだが、まだ人を好きになった経験のない私には、ピンとこないまま眠りについた。