【映画】シヴィル・ウォー アメリカ最後の日Civil war/アレックス・ガーランド
タイトル:シヴィル・ウォー アメリカ最後の日Civil war 2024年
監督:アレックス・ガーランド
「エクスマキナ」、「アナイアレイション」といつたSFや、前作「MEN」での異様で不条理な世界を描いてきたアレックス・ガーランドがストレートな映画を作る意外さを感じたけれど、思い返せば「28日後」での人気の無いロンドンの街並みなど、作家として過去作との繋がりは少なくない。
アメリカでの内戦というのも議事堂占拠の事件もあって、ポピュリズムに傾倒したアメリカはトランプ時代にすでに実現されてしまっている上で、再度トランプが台頭する危機に直面している。バイデンが降りた事で、その可能性はいくらか下がったとはいえ、アメリカが抱える民主主義の脆さや分断が消えた訳でもない。
この映画はアメリカ国内で内戦が起きた場合の話よりも、今国外で起きている戦争をトレースした時に、それぞれで何が起きているのかをも描き出す。かつてISに捕らえられ、公開処刑された様子や、日常が戦果に巻き込まれた状況を、アメリカ国内に置き換わった時に、そのリアルな状況が今の生活にダイレクトに繋がっているからこそ、アメリカでヒットした要因だったのではと推測する。
しかしながら、日本でそのリアリティが肌で感じられるかというと中々難しいとも思う。アメリカに住む人たちが感じる生々しさを、同じ様に感じるには少しハードルが高い。日本での公開が半年遅れたのも、ダイレクトに感じるキャッチーさに欠けているのも理由のような気がする。けれども、もしアメリカが崩壊した先に日本や韓国など米軍が駐留する国からアメリカ軍が撤退したらと考えると、ロシアや中国が日本や韓国の領土を奪いにくる可能性を想像したりもする。あながち無関係な世界でもなく、さらにその先を想像すると明日は我が身ともいえなくは無い。
中東が戦火に見舞われる中、第三次世界大戦の引き金になりかねない状況と、東西の関係の危うさなどなど、それらをコンパクトにアメリカ国内に置き換えて描いた映画とも言える。
ただ映画としては少し大味な印象も強く、A24が大作へと乗り出した事は、インディペンデントの持ち味が薄れ始めているようにも感じられた。メジャー大作にくらべれば、マグナムのジャーナリズムを取り入れている部分にまだアーティーな雰囲気は残るものの、客層と内容の部分に剥離が生まれているのも事実だろう。
サントラはポーティスヘッドのジェフ・バーロウが担当しているが、既存の曲が多く使われていて、冒頭のシルヴァーアップルズやスーサイド、デラソウル(一瞬スライ・ストーンか!?と思った)など、独特な選曲ながらマッチした歌詞が映画の状況を伝える手段として取り上げられていた。
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