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【映画】最近観た映画2023年7月
先月の投稿に対して「観る気も起きない」とディスるツイートがあったけど、備忘録なのであしからず。ちゅうかやかましいわ!ほっとけ!
7月は待望のホン・サンス「豚が井戸に落ちた日」のリバイバル上映があって、やっと観る事が出来た。初期作は未見だったので、ついでに「カンウォンドのちから」と「オー!スジョン」もDVDと配信で鑑賞。ホン・サンス作品は新作未公開を除くと、残すところは「映画館の恋」だけ未見。今回観た初期三作は結構重めの内容で、ホウシャオシェンやツァイ・ミンリャンらの台湾ニューシネマ辺りの雰囲気みたいな印象だった。「オー!スジョン」辺りから今のホン・サンスっぽくなってくるのだけど、90年代の作品は世相を表してるのか不安さと暗さがある。特に「豚が井戸に落ちた日」は思っていた以上に面白かったので、観られる機会があれば是非オススメ。
他に劇場で鑑賞したのが「リバー、流れないでよ」、「イノセンツ」、「ノー・ホーム・ムーヴィー」、「アシスタント」、「マリア・ブラウンの結婚」。
話題になってた「リバー、流れないでよ」は記憶を受け継ぎながら2分間ひたすらタイムリープしていく話で、アイデア一発な感じは中々面白い。
試写で観た「イノセンツ」は観劇中、これは「童夢」では?と思ったら案の定「童夢」から影響を受けた時監督がインタビューで漏らしていた。派手な描写に頼らず、子供の無垢な暴力性に恐ろしさを感じる。
アケルマンの遺作「ノー・ホーム・ムーヴィー」は特集上映の時にタイミングが合わなかったので、やっと鑑賞。母とユダヤとアウシュヴィッツというテーマが各アケルマン作品に内在されているのだけど、母親の口からストレートに過去の話が出てくる辺りが他の作品と異なる。
ワインスタイン問題の一側面を扱った「アシスタント」。女性としての社会立場をひとりの女性の視点で淡々と描かれる。自分の視界の外で女性が搾取されている事に勘づくものの、助け舟を求めた先が絶望的という地獄の描き方は中々にリアル。
特集上映の客入りが良いと評判のファスビンダーの「マリア・ブラウンの結婚」。男性監督があの時代にフェミニズム映画を撮っていた事も凄いが、内容もかなりぶっ飛んでる。昨今の社会的なテーマに似通っていて、先見性というか本質を見通していた人なんだなと。
ガールフッド/セリーヌ・シアマ
— marr (@moi_iommoi_iom) July 2, 2023
話はスケバンヤンキーマンガみたいなんだけど、心境が変化する度にライヒみたいなミニマルな音楽が流れていて、繊細でじっくりと丁寧に描き出す描写は流石のシアマ。撮影も色合いがヴィヴィッドで良かった。 pic.twitter.com/MBgWek4POh
トラック/マルグリット・デュラス
— marr (@moi_iommoi_iom) July 3, 2023
デュラスとドパルデューがシナリオの読み合わせをしながら、その物語を想起させる産業道路や農業地帯を走るトラックの映像が被さる。
ユダヤや共産主義を織り交ぜながら、トラック運転手と老女との会話が、読み合わせの対話の中で輪郭を持ってくる。 pic.twitter.com/5QJHIe5LDh
スターフィッシュ/AT・ホワイト
— marr (@moi_iommoi_iom) July 4, 2023
友人、恋人、喪失をSF調に描いた不条理もの。ラストとかめちゃくちゃ好みなんだけど、怪物と物語的要素がちょっと余計な感じがあったかな。ただ心理描写や映像、メタな展開は良かったので、その辺りをもっと観たくもあった。 pic.twitter.com/nXdokVZZlx
リバー、流れないでよ/山口淳太
— marr (@moi_iommoi_iom) July 6, 2023
アイディア勝負な感じで普通に面白かった。日本のインディ映画好きな人は必見だと思うけど、そうでなければそんなに無理して観る作品でもないかなと。
パンフレットは完売してました。 pic.twitter.com/wFfimvwSk6
X/タイ・ウェスト
— marr (@moi_iommoi_iom) July 7, 2023
まあこんなもんだろうなと思ってたから劇場では観なかったんだけどなんか物足りず。「悪魔のいけにえ」や「シャイニング」、「サスペリア」、「サイコ」などなどへのオマージュ盛り盛りなんだけど、それらにある不条理な怖さがどうも薄くてちょっと拍子抜け。 pic.twitter.com/8WgKNPdQlA
アンブレイカブル/M・ナイト・シャマラン
— marr (@moi_iommoi_iom) July 7, 2023
平凡な男が抱える凡庸な脆い日常。非日常の中にヒロイズムに救いを求める男の妄執と皮肉。かなり凝った撮影をしてるけど、今観るとちょっと時代を感じる。
悪くないんだけど、ギミックが目立ってしまって、ちょっと流れが不自然な感じもある。 pic.twitter.com/J8K7HtpwEz
女が階段を上がる時/成瀬巳喜男
— marr (@moi_iommoi_iom) July 8, 2023
いやーやっぱ凄いわ成瀬。端的に表す無駄のない脚本と、ダイレクトに伝わってくる人物描写。高峰秀子の変化する表情と淡々としたモノローグが掛け合わさる時の悲哀さ。ラストも完璧。 pic.twitter.com/ODx7B1E5eD
童夢やAKIRAっぽいなと思ったら、大友克洋オマージュの作品だった。派手な能力バトルはないのだけど、その分生々しい描写が多い。映像が結構面白い。
— marr (@moi_iommoi_iom) July 10, 2023
【映画】イノセンツ De uskyldige/エスキル・フォクト|marr @moi_iommoi_iom #イノセンツ衝撃の夏休み https://t.co/pP8Mw71CA3
奪還者/ダニエル・ミショット
— marr (@moi_iommoi_iom) July 10, 2023
経済破綻したオーストラリアというマッドマックスな感じの映画ではあるのだけど、描き方がとにかくドライ。クライムサスペンスなロードムービー。タランティーノっぽいなと思ったら、絶賛してるのね。 pic.twitter.com/i9eGRxEob8
やっと観れた。
— marr (@moi_iommoi_iom) July 12, 2023
会話や長回しのショットに、過去の記憶や死への予感が漂う。
アケルマンの過去作で込められた、ユダヤやアウシュヴィッツについて母の言葉から語られる。
【映画】ノー・ホーム・ムービー No Home Movie/シャンタル・アケルマン|marr @moi_iommoi_iom
https://t.co/7ecAoO8ree
ボヤージュ・オブ・タイム/テレンス・マリック
— marr (@moi_iommoi_iom) July 13, 2023
原始から現代までを映像で綴る…というよりもニューエイジな世界観の方が色濃い。コヤニスカッツィのナショジオっぽさに似た感じや、2001年のスターゲイトがどうしてもチラつく。映像は金がかかってて凄いのだけど、それ以上の感想は出てこないかな。 pic.twitter.com/8lyMWwVSel
ハラスメントを考える上で、ここまでミニマルかつタイトに描ききった監督の技量に感服する。日本社会の問題と照らし合わせると、事の重大さはリアルに伝わってくる。
— marr (@moi_iommoi_iom) July 13, 2023
【映画】アシスタント The Assistant/キティ・グリーン|marr @moi_iommoi_iom https://t.co/mZTpOadWO1
ナイチンゲール/ジェニファー・ケント
— marr (@moi_iommoi_iom) July 15, 2023
家族を奪われた女性の憎しみと復讐、そこにレイシズムやコロニアリズムが絡みあう。同じ白人でも虐げられてきたアイルランド人を主人公の出自や、アボリジニー文化がラストに効いてくる。
主人公が抱える恐怖をもう少しじっくり描けていたらもっとよかったかな。 pic.twitter.com/2DYZtoFiLr
パプリカ/今敏
— marr (@moi_iommoi_iom) July 17, 2023
虚構と現実の境が曖昧になっていく様を、祝祭感と悪夢でガチャガチャと盛り立てる。途中テリー・ギリアムっぽいなと思ったら影響受けてるのね。ファスビンダーのあやつり糸の世界や、スローターハウス5にも通じる不条理な世界観。 pic.twitter.com/vOoKk9rsii
風の谷のナウシカ/宮崎駿
— marr (@moi_iommoi_iom) July 17, 2023
やっはアニメ版は中途半端だなあ。ブリッ子仕草のナウシカと悪玉なクシャナのキャラがどうもねぇ。
漫画版の後半のテーマはもののけ姫に転用されてしまってるので、本人はフルでの映画化はしなかったんだろうな。やって欲しかったけど。 pic.twitter.com/TO9XgDGCQs
タレンタイム/ヤスミン・アフマド
— marr (@moi_iommoi_iom) July 18, 2023
コーダとかOnceみたいな超王道ドラマなんだけど、それ以外の情報量が多くて、冒頭から「ん?」となるものの、人種や宗教観の壁が結構丁寧に描かれてる。
月の光が流れながら、物語に絡めた風景や誰もいない部屋の醸し出す空気感が何よりも良かった。 pic.twitter.com/RiEJZa9GKo
やっと観れた。
— marr (@moi_iommoi_iom) July 22, 2023
めっちゃ傑作じゃないですか!
近作のラフさとは全然違うけど、台湾ニューシネマみたいな暗さがある。
【映画】豚が井戸に落ちた日 돼지가 우물에 빠진 날/ホン・サンス|marr @moi_iommoi_iom https://t.co/ltThsrFWoA
秋津温泉/吉田喜重
— marr (@moi_iommoi_iom) July 23, 2023
物語が進むにつれ生死観が入れ替わり、刹那な関係が行き詰まる。
ドラマ自体はあまり面白味を感じなかったのだけど、カメラワークの凄みとはっきりした顔立ちの岡田茉莉子が時折りみせるアンニュイな表情(後半はずっとアンニュイだけど)がとにかく良かった。 pic.twitter.com/z0AIpSMnFX
カンウォンドのチカラ/ホン・サンス
— marr (@moi_iommoi_iom) July 24, 2023
同じモチーフの繰り返しとそこから生まれる差異は、これ以降のホン・サンス作品全てに共通する描かれ方なんだけど、まだ俯瞰して見てる感じがある。同じ時間と同じ場所ですれ違う様と、ラストで金魚が物語る男女の関係性にほろ苦さが残る。 pic.twitter.com/kFJUqXAXSI
リトルショップオブホラーズ/ロジャー・コーマン
— marr (@moi_iommoi_iom) July 24, 2023
リメイク版を観るつもりが間違えて元の方を鑑賞。B級おバカ映画というと身も蓋もないのだけれど、ジョン・ウォーターズやラス・メイヤー、ロッキーホラーショーに連なるキャンプ感と露悪さはあっけらかんとした感じ。 pic.twitter.com/ZoqEsjCpvB
デモンズ/ランベルト・バーヴァ
— marr (@moi_iommoi_iom) July 24, 2023
ここの所体の調子が悪くて、軽い映画を観ようと久しぶりに鑑賞。まあこんなもんだろうという印象は変わらず。ただ地下鉄や街の風景など80年代らしい雰囲気は◎。あと悪魔化した人たちの目が光るのは画的に良い。
まあ当時のデートムービーですよね。 pic.twitter.com/XUQjzJSSZc
オー!スジョン/ホン・サンス
— marr (@moi_iommoi_iom) July 25, 2023
しょうもなく駄々をこねる稚拙な男たちの姿。そのあられもない醜態を描く居た堪れなさは、カッコ悪い恋愛を経た人ほど刺さってくるのでは?
前半後半のパラレルな差異による物語の膨らみ方の違いが面白い。 pic.twitter.com/98jeBv1u8e
オズの魔法使い/ヴィクター・フレミング
— marr (@moi_iommoi_iom) July 28, 2023
デヴィッド・リンチに限らず影響を与えているのはよく分かる。視点をずらせば悪夢の様なファンタジー映画であるのだけど、ディズニーを含めファンタジー世界がここから逸脱せずに踏みとどまっているのも強く感じる。 pic.twitter.com/faKImFY9y3
暗殺の森/ベルナルド・ベルトルッチ
— marr (@moi_iommoi_iom) July 28, 2023
物語と台詞、そこから浮かび上がる感情が映像と結びつく神がかったカメラワークの洗練の極み。華やかなパリと、イタリアのファシズムが渦巻く陰謀と、心の内に秘めるセクシャリティを、物語以上に映像美で魅せる。超傑作。 pic.twitter.com/kcvpoCs0Sm
エッシャー視覚の魔術師/ロビン・ルッツ
— marr (@moi_iommoi_iom) July 30, 2023
一見ドラッギーな反復は突飛な発想から来たわけでなく、自然を注視して見た中で培った素描と、北アフリカ文化のモチーフをロジカルに(とはいえ数学が得意な訳ではないみたい)描いた中で個性を確立していった経緯が綴られている。 pic.twitter.com/XN89jR5Xzs
あの時代に、女性主体であそこまで徹底して描き切るファスビンダーの凄み。
— marr (@moi_iommoi_iom) July 31, 2023
そしてなによりもハンナ・シグラの美しいこと。
【映画】マリア・ブラウンの結婚 Die Ehe der Maria Braun/ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー|marr @moi_iommoi_iom #note https://t.co/EQ7SVPMEPg