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螺旋じかけの海/永田礼路(作) :: 身体の説明が詳しいコミックだと思ったら作者は医師で noterさん
年明け体調が思わしくなくテレワークや有給休暇を使い、出社したのはまだ1日。
ベッドに潜りながら、Kindle Unlimitedのお勧めでこの本を見つけ1巻目を読んでみると面白く、4巻まで読んでみた。
「ヒトの線引きからあぶれた生き物を好きにしていいのなら、私も私を好きに扱っていいだろう――?」
遺伝子操作が産業として発達し、人間であることの線引きを自由に操作することすら可能となった世界。
水没した街の残骸で暮らす人々の中には、人間以外の動物の遺伝子を持つ「劣った」者が存在する。遺伝操作を生業とする生体操作師・音喜多(おときた)。
自身も何種もの異種遺伝子を抱え、自分を実験体にし続け生きる彼の元に、様々な事情を抱えた者たちが訪れる――。
「人間と他の生物を分かつものは何か」
「僕らは皆 いつか死んだ誰かでできている――」
遺伝子操作が産業として発達し、水没した街の残骸では人間以外の動物の遺伝子を持つ者が混在して暮らす世界。遺伝操作を生業とする生体操作師・音喜多の元に様々な事情を抱えた者たちが訪れる――。
寿命が迫る異種遺伝子キャリアが最後に残したいものはーー「花と揺れる嘘」。代々伝書鳩を操る異形の一族たちの矜持――「金色を渡る鳩」。急遽「出荷」が決まった食用人魚の行く末はーー「人魚が融ける指」。3編を収録。
「俺たちは誰も祝福などされていない 生きることは ただの呪いだ」
遺伝子操作が産業として発達し、水没した街の残骸では人間以外の動物の遺伝子を持つ者が混在して暮らす世界。遺伝操作を生業とする生体操作師・音喜多の元に様々な事情を抱えた者たちが訪れる――。
死んだ祖父が少年に遺したペットは皆に疎まれるキメラ動物だった――「魔女の語る森」
音喜多の相棒・雪晴、その少年時代そして二人が出会うまで――「烏(からす)を屠(ほふ)る旅」2編を収録。
「ただ異なっているだけで人を踏みにじっていいのなら あたしだって世界に復讐する権利があるはずよ」
遺伝子操作が産業として発達し、水没した街の残骸では人間以外の動物の遺伝子を持つ者が混在して暮らす世界。遺伝操作を生業とする生体操作師・音喜多の元に様々な事情を抱えた者たちが訪れる。
基準外キメラの連行が続く街で、よく当たると評判の盲目の占い師が現れた──「千を視る蛇」
合成酵母菌による密造麻薬が流行る水没街、薬屋の女店主の秘密とは──「樽の中の芥子畑」2編+番外編「午後の海上にて」を収録。作者個人制作による続刊。
商業的な出版社から本を出されているnoterさんは時々見かけるが、noteに来なくなった方多々。永田礼路さんは最終更新が昨年秋なので、まだnoteに来られているご様子。
読書感想文
穏やかなディストピア物語を装いつつ、内容は「人間とは?」「自分とは?」と、一話完結ごとにテーマがあり、それなりに重く心に残る話も多い。
Amazonのレビューも『名作』『感動』の言葉が多い。
以前記事にした『世界の作家や研究者たちが予想する西暦3000年までの未来予測』を参考にすれば、この世界は2800年頃ではないかと思う。
その頃には遺伝子操作は簡単で、規制をどこまでかけるのかが問題になると思うが、今回のパンデミックを見て分かるとおり、通常10年かけて開発されてから一般投与されるワクチンが特例であっさりと認可され、遺伝子組み換えワクチンを各国が競って入手しようとした現実を鑑みると、将来何かの拍子にこのSFのような世界が訪れても不思議ではない。
この作品、永田礼路氏の世界観を表していると思うが、自分自身と価値観が似ているところも感じられ、主人公の気持ちに引き込まれる。
Unlimitedメンバーの方にはお読みすることをお勧めするし、そうでない方も気になれば試し読みをしていただければと思う。
今売れ筋のコミックとは、テーマもテンポも異なるため、商業ラインには載りにくいかも知れないが、まだ物語は終わっていないので続刊を期待したい。
MOH