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『前頭葉バカ社会 自分がバカだと気づかない人たち』 和田秀樹 (著)
文藝春秋を紙の月刊誌で読んでいる頃、彼の記事がよく掲載され読んでいた記憶がある。
彼の単行本を読むのは初めて。
出版元の著者情報とWikipediaの概略が微妙に異なっていて面白い。
1960年、大阪市生まれ。1985年、東京大学医学部卒業。精神科医。専門は老年精神医学、精神分析学、集団精神療法学。米国カール・メニンガー精神医学校国際フェローなどを経て、現在、ルネクリニック東京院院長。高齢者専門の精神科医として、30年以上にわたり高齢者医療の現場に携わる。『バカとは何か』『70歳が老化の分かれ道』『80歳の壁』など著書多数。
和田 秀樹(わだ ひでき、1960年〈昭和35年〉6月7日 - )は、大阪府出身の評論家(教育・医療、政治・経済)、精神科医(川崎幸病院精神科顧問)、臨床心理士、映画監督、小説家、管理栄養士。
複数の大学、大学院の非常勤講師や東進ハイスクール顧問も歴任。和田秀樹こころと体のクリニック、和田塾緑鐵舎、緑鐵受験指導ゼミナール、和田秀樹の親塾などの代表。
この本を読む限り、wikiの方が実態に近い。
今までの著書が800冊、この本の中に書かれていた。
日本人の9割は前頭葉バカである
「知らない」より怖いのは「考えない」こと
40代から危険信号!
前頭葉を使わないと、脳も体も老け込みます。
◎「前例がないからダメだ」と言う
◎行きつけのお店しか行かなくなる
◎だいたい筋のわかる同じ著者の本ばかり読む
◎やる前から答えは決まっているとあきらめる
◎正義か悪か、敵か味方か。二元論で考えがち
前頭葉とは?「変わるための脳」
【クリエイティビティ】【意欲】【考える力】
★コロナ禍などパラダイムが変わったときに対応できる
★従来とは異なるものを新たな発想で作ろうとする
★上の人が言うことを「そうなんだ」とうのみにしない
★笑いとユーモアが大事。あたりまえの枠組をずらす
★意見はコロコロ変わっていい。時代が変わっているのだから
[もくじ]
自己診断「前頭葉バカ」テスト
第1章 なぜ日本人は変われないのか
第2章 そもそも「前頭葉バカ」とはどんな人か
第3章 前頭葉バカを治すための有効な処方箋
第4章 前頭葉バカの壁を超える10の提言
第5章 【特別対談】和田秀樹×橘玲「バカ」の先にある未来
雑感
Kindleで136ページ(Kindle Unlimited)すぐに読み終わるエッセイ?評論?
こういう類の本をなんと呼ぶのだろう?
そんな事に拘ると「前頭葉バカ」になってしまうのかも。
上に引用した紹介のとおり、先例主義に凝り固まった日本社会・日本人への批判と警告が内容の大半を占める。日頃、感じていることなので読んでいて違和感は感じなかった。
差し障りのない範囲で本文から引用したい。
はじめに
前頭葉とは、思考力、判断力、集中力、創造性、意欲、感情のコントロールなどを司る以上に、変化に対応するための重要な役割を果たします。 前頭葉の働きがいい人は、変化にうまく対応することができますが、この働きが悪い人や衰えてきた人は、なるべく前頭葉に楽をさせるように、変化を避けるようになります。
行きつけの店にしか行かなくなったり、同じ著者の本しか読まないなど、先が読めるようなことを望み、変化を好まず、前例踏襲を続けることになります。 日本という国が衰退の一途をたどり、いつまでも浮上できないのは、今の日本人が前頭葉を正しく使えていない =「前頭葉バカ」が増殖したからではないか。前頭葉の老化、劣化という観点から、日本の抱える大きな問題が見えてくるのではないか、と考えています。 怖ろしいことに、前頭葉の老化は 40代から目立ち始めます。超少子高齢社会に突入した日本は、現在進行形で前頭葉バカの問題に直面しています。
なぜ日本人は変われないのか
第 2次安倍内閣で実施された「アベノミクス」では、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を三本の矢にたとえ、デフレの克服、年3%のGDP成長率の実現、一億総活躍社会の実現などを掲げました。 しかし、結果として 2013年から 2021年までのおよそ8年間で、失業率の改善は見られたものの、非正規労働者の割合は 36.7%にまで上昇しています。
大胆な金融緩和は円安をもたらし、その結果、輸出企業が好調な世界経済の流れに乗ることができたため、企業の収益は拡大して株価は上昇しましたが、国民一人ひとりが景気の上昇を実感するにはいたりませんでした。
円安は、輸入価格の高騰にもつながります。ロシアが戦争を開始して、原油価格が急上昇しましたが、円安がそれに重なった際に、急激な原油高が庶民生活、特に灯油が足りないと困る地域や車がないと生活できない地域を直撃しました。さらに電気料金の急激な値上げをもたらし、じつは円安は一般の人たちを貧しくすることが明らかとなりました。
ところが、アベノミクスの時代は原油安が起こったために、円安のデメリットに多くの人が気づくことはありませんでした。
ただし、円が安くなることで日本の土地や会社を外国人が買いやすくなり、知らないうちに中国系の企業が日本の一等地や大企業を買収するというようなことが陰では起こっていたのです。 また、ひとり当たりの GDPなどはドルで比較するので、この間に韓国や台湾に順位が肉薄されることになりました。
そして、 GDPの成長率は目標にはほど遠く平均 0.41%にとどまり、実質賃金上昇率についてはさらに悲惨な状況です。
アベノミクスを 8年間も実行して状況を変えられないなら、なぜ数年で見切りをつけ、次の新しい政策を立ち上げ、試してみようとしないのでしょうか。そもそもなぜ政権交代の機運が国民から上がらないのかが不思議です。自民党が衆議院選挙で連敗したことは過去に一度もありません。こうした政党が存在するのは、世界の民主主義国家では日本くらいでしょう。
「健康のために太ってはいけない。ダイエットするべき」とよくいわれますが、今では少し太めの人、コレステロール値が高めの人のほうが長生きすることがデータで明らかになっています。それなのに、日本の医学界や大学病院の教授たちは、最新のエビデンスを無視して、いまだに「コレステロール値を下げろ」「メタボ対策のために体重を落とせ」と、 30年前の常識を主張し、大規模調査の結果を無視した情報を患者に垂れ流し続けています。
勤務していた浴風会病院は、日本の高齢者医療の総合拠点のひとつでしたが、そこの統計では、糖尿病の人とそうでない人の生存曲線に違いはありませんでした。
糖尿病でない人は糖尿病の人に比べて 3倍もアルツハイマー型認知症の発症が多い。わたしにいわせると「糖尿病の治療によって、低血糖の時間帯が生じることが、アルツハイマー型認知症を増やしている」
世の中はつねに変わり続け、学問は日々進歩を続けています。 10年前に正しいとされていた学説が今も正しいとはかぎりません。
「今までそうだったから」とか「みんなが言っているから(みんなって誰?)」とか、自ら考えることをせず「他の人にお任せ」状態が続くと、自分も社会もこれからの時代には生きていけないことを述べている。
凝り固まった考えで、他の意見に耳を貸そうとしない人も前頭葉が劣化しているらしいし、そんな人を見掛けたこともある。
どの章も腑に落ちる話ばかりで面白く読めたが、Amazonのレビューで(トップの方)「知らなかった」「斬新です」というコメントを読むと、そのレビュアーが今までどう生きてきたのかが気になる。
また、この本をマトモに読まずに(読めずに?)全否定するコメントに多くの「役にたった」が付いているのをみると、やはり日本人の前頭葉は劣化しているのかもしれない。
MOH