読書感想文「イン・ザ・プール ドクター伊良部」 :: シリーズはこの本だけで足りるのかも知れない
紙の本で読んだのは、おそらく2005〜6年ごろ。
それ以来、目にしていなかったが、ふと思い出しKindleで購入した。
5編の短編集
以下、備忘と感想
「イン・ザ・プール」
(初出『オール讀物』2000年8月号)
ドクター伊良部登場。患者は変な編集者。
プール中毒ってあるの?
「勃ちっ放し」
(初出『オール讀物』2001年8月号)
「『勃ちっ放し』のアイデアが全て」の短編。
よく思いついたなと思い調べてみると「持続勃起症」という本当にある疾病。
6時間で組織が壊死し始める、恐ろしい病気。
物語の中では登場人物に、その症状が1週間以上続くが寛解する😅
「コンパニオン」
(初出『オール讀物』2001年11月号)
この話のDr.伊良部は優秀。患者を一目で「被害妄想」と見抜いている。
患者にハラスメントしようとして、2回も蹴飛ばされるけど。
「フレンズ」
(初出『別冊文藝春秋』237号(2002年1月号))
「携帯依存症」の治療方法は、手間がかかるけど意外と簡単。
高校生がケータイでハブられるのは20年前から変わらず。
今だと「ネット依存症」。
「いてもたっても」
(初出『オール讀物』2002年3月号)
「確認行為の習慣化」⇒「強迫神経症」のルポライター
Dr.伊良部は治療をせずに、患者が自己解決。
感想
15〜6年前に読んだ短編集の内容を覚えているかというと、ほとんど覚えていない。内容が娯楽一辺倒の小説ゆえ、記憶に薄いのだと思う。
「イン・ザ・プール」だけは読んでいて無理な設定を思い出した。
どの短編もアイデア勝負的な物語。
伊良部医師を訪れた患者の一人称で話が進む。
物語が展開していく中で意外性は少なく、結末も想定の範囲内。
昭和の時代で言うところの「大衆小説」。今もそう呼ぶのだろうか。
先週記事にした伊坂幸太郎短編集の様に場面々々での面白さがあり「始まり」のような終わり方の物語もあれば、読み飽きないと思う。
どの短編にも同じような「起承転結」が読み取れるため、設定の異なる物語でも同じように感じられるのかも知れない。
小説に「起承転結」は不要では?という小説の書き方読本のレビューを思い出した。
次の短編集『空中ブランコ ドクター伊良部(直木賞受賞)」は、Wishlistに入れておいたが取りやめた。
物語のアイデアはいろいろお持ちだが、話の展開が似ているため「この1冊で十分」という感じがする。
記憶から消えたものの「一度、紙の本で読んでいるから」というのもある。
「17年ぶりの新作」が出版された。
丸善本店フィクションにランクインしており、Amazonのレビュー(「Vine先取りプログラムメンバー(無料配布)」から)も多い。
少し立ち読みしてみると、コロナ禍の世相が舞台だが伊良部医師は変わらず、という設定。ファンにはその普遍性が受けるのかも知れない。
MOH