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注意喚起、レバレッジ系のETFの現実とリスク


 2024年8月の株価急落の中で、改めて最悪だと確認した金融商品があります。それはレバレッジ系のETF、特に「ダブルインバース」と呼ばれるものです。
 基本的に投資は自己責任であり、良い商品かどうかは投資家によって異なると考えています。そのため、特定の商品を推奨したり、否定したりすることはあまりしていません。しかし、今回解説する商品については、ほとんどの人にとってなるべく投資しない方が良いのではないかと考えています。

レバレッジ系ETFの概要

 この記事ではレバレッジ系ETFについて説明します。例えば、日経平均の2倍動く、トピックスの2倍動くように設計されている金融商品です。ただし、これが日経平均やトピックスなどと連動するのはあくまで日中の動きだけで、時間が経つと全く違う動きになってしまいます。

レバレッジETFの動きの例

 例えば、1日目にトピックスが100から105に上がると、レバレッジ2倍指数は2倍の上昇率になりますので110に上がります。しかし、その翌日トピックスが10%下落して94.5になると、レバレッジ2倍指数は88に下落します。3日目にトピックスが100に戻ったとしても、その時のレバレッジ2倍指数は98.6に下落しています。
 このように、株価が上がったり下がったりする揉み合い相場になると、徐々にレバレッジETFは下落していく性質があります。

出所)「日本取引所グループ」

 これは証券会社なども説明しており、投資している人は知っていると思います。悪質だと言うつもりはありませんが、非常に扱いが難しい商品だと言えます。今回のような大きな相場変動になると、日経平均やトピックスとの乖離が非常に大きくなります。

代表的なレバレッジETF

 代表的な銘柄として、日経平均の2倍動く「日経平均レバレッジ上場投資信託(銘柄コード1570)」、日経平均の逆に2倍動く「日経平均ダブルインバース上場投信(銘柄コード1357)」を見ていきたいと思います。

 8月2日から急落が始まる前、8月1日の日経平均の終値は38,126円でした。この時、日経平均レバレッジ上場投資信託(1570)は27,700円でしたが、8月16日には25,205円に下落し、9.0%も下落してしまいました。一方、日経平均ダブルインバース上場投信(1357)は、8月1日の終値が144円、8月16日には138円に下落し、4.2%の下落となっています。どちらの商品を持っていても、大きな損失を被る状況です。
 ご参考:8月5日の日経平均終値は31,458円でした。

長期的なパフォーマンス

 このような相場には弱いことが分かっている商品ですが、改めてその負け方がひどいと感じました。今回の2週間余りの動きでは、日経平均レバレッジ上場投資信託(1570)の方が悪いパフォーマンスでしたが、実は長期的に見ると日経平均ダブルインバース上場投信(1357)の方が悪いです。

レバレッジ系ETFの現実

 元々長期保有に適していない商品であり、長期で持っている人はほとんどいないと思われますが、この下落率はあまりにもひどいと言えます。特にダブルインバースに関しては、デイトレード以外の目的では投資しない方が良い商品でしょう。

利益を上げる難しさ

 このような商品を使って利益を上げることは非常に難しいことです。長期でこれだけ下落しており、わずか2週間でもこれだけ下落してしまいます。参照する日経平均がほとんど下落していないにも関わらずです。
 
この商品を使った戦略での勝率は極めて低いものになってしまうでしょう。おそらく商品を設計する際に、投資家目線で作られていないように感じます。

機関投資家の視点

 機関投資家の場合、こうしたベアファンドやレバレッジ投信を活用することはまずありません。短期的に下がることに賭けるヘッジファンドのような投資家は、こうした商品を使わずに自分たちで空売りを行いますし、レバレッジをかけたい場合は投資銀行やファンドを相手にお金を借りてレバレッジをかけます。

空売りファンドに投資をしているお金というのは、そこまで大きな機関投資家からは出ていないと言えます。資金の出し手の都合を考えても、空売り投資家というのが大きくはなり得ないということが分かります。

レーザーテック社に見る空売り投資家

リアルマネーの運用

 いわゆるリアルマネーと呼ばれる年金基金やソブリンウェルスファンドなどの長期運用する機関投資家は、基本的にレバレッジをかけることはありませんし、ヘッジしたい場合は先物を売り建てたりします。そのため、この手のタイプの商品を取引することはほとんどありません。

 年金基金、ソブリンウェルスファンド、保険会社などがいわゆるリアルマネーと呼ばれる投資家です。

ボラティリティに着目したリスクヘッジトレード

個人投資家のリスク

 こうしたタイプのETFを取引しているのは、ほとんどが個人投資家だと思われます。自分で信用取引をするほどではないが、レバレッジをかけたい、空売りをしているのに近い経済効果を得たいという個人投資家のニーズに応える商品として提供されていますが、実態としては多くの個人投資家が多くのお金を失う商品になってしまっています。

デイトレードの難しさ

 本来、デイトレードや短期的な取引で使うべき商品だということは最初から分かっていますが、それほど上手く利用するのは難しいでしょうし、結果として失敗しやすくなっているのではないでしょうか。
 これらのETFは毎日純資産額も公表されていますが、その額は大きく動いていません。つまり、毎日デイトレードで使っている人ばかりではないことが伺えます。この商品で多くの個人投資家がお金を失っている可能性があると私は予想しています。

投資すべき商品

 では、こうしたETFについてこれだけ批判するのであれば、どのような商品に投資すれば良いのでしょうか。
 株や債券などの伝統的な資産については、その人のリスク許容度や投資期間によって選ぶべき金融商品は異なります。デリバティブを使って複雑な値動きを再現している金融商品は、扱い方に制約が多いものもありますので、注意が必要です。


ご参考

 重要なのは成長しているものに投資をする、分かるもの、確かなものに投資をするということです。

NISAに見る投資対象と投資の本質について

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