海外でのFIRE事情とFIREの社会的な影響
海外でのFIRE事情、特に海外での「こどおじFIRE」の状況を教えてほしいとリクエストをいただきました。
この記事では海外でのFIRE事情、特にこどおじFIREについて、日本と比較しつつ説明したいと思います。
FIRE、そして「こどおじFIRE」とは
まず、FIREというのは「Financial Independence Retire Early」の略です。要は早期退職、早期リタイアのことです。
次に、こどおじというのは子供部屋おじさんの略です。実家にずっと住み続けている中年の単身者のことです。
「こどおじFIRE」というのは、子供部屋にいながらお金を貯め、早期リタイアをする人たちのことです。
ヨーロッパの場合
「こどおじFIRE」について、海外の状況をお伝えしますと、ヨーロッパでは恐らくたくさんいると思います。
こどおじFIRE人数を確かめた統計的なデータはありません。そのため、他のものから推計することになりますが、欧州の多くの国では親と同居する若者が増えているといったデータは確認されています。もともと核家族が多い欧州ですが、最近は経済的な理由で親と同居する人も増えています。
各国のデータ
イギリスでは20代の単身者の6割、スペインでは18歳から34歳の単身者の6割が親と同居しているといったデータがあります。
欧米では高齢まで働こうという人は少ないです。国にもよりますが60代までに引退するところが多いです。そもそも労働をお金のためだけにしているという感覚の人が多いため、できるだけ早くリタイアしたいと思っていて、若くしてリタイアを目指している人は少なくありません。
実家暮らしがたくさんいる、FIREをしている人もたくさんいる。こどおじFIREというのもたくさんいるだろうと思っています。
日本での議論
欧米ではこのこどおじFIREというのがあまり議論になることはありません。なぜ日本だけこどおじFIREが話題になるのでしょうか。
これはこどおじFIREだけではなく、ニートやフリーターなど、定義は異なりますが似た問題があります。これらに対して日本では今でもあまり良い意味で捉えていない人たちが多いと思います。
日本の社会的感覚
・成人になってからも実家に住んで親に助けてもらっているというのは恥ずかしいことではないかとか、
・子供部屋にこもってリタイア生活を送ることが本当に幸せなのかとか、
・社会に出ないなんて社会人として良くないとか。
「そのようなことを言われる筋合いはない、個人の自由だ」という議論があるから話題になるのだと思います。
ヨーロッパの感覚
ヨーロッパではこの議論が生じないです。みんながみんなできることなら早くリタイアしたいと思っているため、FIREを目指すことは特別なことではありません。実家暮らしをしていることについても、恥ずかしいこととか、そうした感覚はないでしょう。本人たちが良ければいいという話です。
海外ではこどおじFIREが話題になり得ないと思います。
FIREを日本人に勧めない理由
FIREというものを、私は日本の方にはあんまりお勧めしていません。日本人には向かない人が意外と多いと感じています。
このあたりは人それぞれのため、それで自分は幸せだという人もいると思います。それを否定する気は全くありませんが、そもそもFIREというのは欧米で生まれた概念です。日本人の生活にはまだまだ馴染まないだろうという気がしています。
欧米と日本の労働観の違い
欧米の場合、労働というのはしんどいだけのもの、お金だけのためにしているという感覚の場合が多いです。
日本では高齢者でも働いている人が一定数いると思います。これはもちろん、年金では足りないなど、いろいろあると思いますが、完全にお金のためだけではないという人もいるでしょう。
FIREの社会への影響
FIREとこどおじFIREの件、もう一つ重要な論点は、そういうものを目指す人が増えた場合に経済全体にどういう影響があるかという話です。部屋にこもり、資産を株や仮想通貨で増やして一生食べていける資産を作ってFIREしよう、そうした人たちが増えるとどうなるでしょうか。
まず、増えるといっても限界があるでしょう。世の中みんながみんな働くことをしないで株式投資で食べていこう、という発想では、働く人が少なくなって経済は回らない。そうすると株式投資もうまくいかなくなる。そのため、FIREを実現できる人数には限りがあるでしょう。
イノベーションが起こりづらくなる可能性
私がこどおじFIREを目指す人が増えることで懸念するのは、イノベーションが起こりづらくなる可能性です。過去に、
・ソ連の経済が共産主義の中で停滞したこと、
・資本主義的な仕組みを取り入れたことで中国は経済成長を実現することができたことはご存知のことと思います。
共産主義においては経済的な平等を目指しているわけですが、実際にはものすごく大きな格差が生じました。その格差を解消する術がないと誰もやる気にならない。だからイノベーションが生まれなくなってしまう。やる気にならないと、イノベーションを起こそうということに意欲が持てなくなってしまうわけです。
競争社会とポジティブなマインド
そして、アメリカでこれまでイノベーションがたくさん起こってきたのは、適度な競争社会の中で挽回するチャンスがあったからです。
イノベーションを起こしていくのは、こうした競争社会の中でチャンスを掴むために戦っていこうとするポジティブなマインドを持てるかどうかが非常に重要です。
社会の活力とネガティブなマインド
一方、こどおじFIREが増える社会は、社会の中でどちらかというとネガティブなマインド、つまり早く離脱したい、早く競争から解放されたい、そういう面が強いように感じます。そのため、イノベーションを起こしていこうというマインドとは真逆の方向に行っているような気がしてなりません。
これは選択する人々の問題ではなく、どのような社会を作っていくのか、その国で生きている人々みんなに関係している問題だと思いますが、社会の活力がなくなってきていることの現れのような気が私はしています。
ご参考