見出し画像

FOMCと日銀の決定と市場への影響


 2024年12月18日から19日にかけて開催された米連邦準備制度理事会(FRB)の連邦公開市場委員会(FOMC)と、日本銀行の金融政策決定会合が終了しました。
 今年最後の金融政策イベントを経て、マーケットは激しい値動きを見せています。これらの政策決定の概要と今後の見通しについて解説します。

アメリカ:FRBの政策と今後の見通し

 FOMCでは予想通り0.25%の利下げが決定されました。しかし、この利下げは市場で「タカ派的利下げ」とも言われています。今回のFOMCで注目されたポイントを整理します。

1.経済見通しの情報修正

 FRBは3か月ごとに経済見通しを発表します。今回の見通しでは以下の点が修正されました。

  • GDP成長率

    • 2024年:+2.0% → +2.5%

    • 2025年:+2.0% → +2.1%

  • インフレ率

    • 2024年:+2.3% → +2.4%

    • 2025年:+2.2% → +2.5%

    • 2026年:+2.0% → +2.1%

 これらの修正は、底堅い経済指標を受けてFRBが経済の力強さを認識していることを示しています。

2.ドットチャートの変化

 FOMCメンバーによる政策金利見通し(ドットチャート)では、来年以降の利下げペースが鈍化する見通しが示されました。

  • 2025年の金利予測中央値:3.4% → 3.9%

  • 2026年の金利予測中央値:2.9% → 3.4%

 これにより、2024年の利下げ回数は0.25%が2回に減少するとの見方が浮上しています。ただし、これらの見通しは経済指標が現状の想定通り推移した場合に実現する予測であり、必ずしも確定的なものではありません。

3. 声明文の内容

 声明文では以下の点が強調されていました。

  • 経済活動は依然として健調な拡大を続けている。

  • 失業率は若干上昇したものの、依然として低水準。

  • インフレは2%目標に向けて進展しているものの、高止まりしている。

 FRBは1月以降の利下げを一時停止する可能性を示唆しており、引き続きタカ派的なスタンスを保つ姿勢を見せています。

市場の反応と来年の見通し

 FOMCを受けて金利は上昇、ドル高が進みました。市場では来年の利下げが実施されない可能性も意識されています。トランプ政権の政策次第でインフレが高止まりするシナリオも考えられるため、FRBの動きには引き続き注目が集まるでしょう。

 消費者物価数が下がらないかもしれない、アメリカの景気も著しく悪化する傾向が現時点では見られない、そうした中でトランプ政権の政策で景気が上向く可能性すらあります。そうした場合は、利下げを続ける必要があるのかという話になります。

12月11日発表の米消費者物価指数の詳細解説

ニコニコchでの詳細解説

 今回のFRBの政策変更に関連する背景として、トランプ政権の政策がインフレに与える影響が重要なポイントとなっています。この点について、関税引き上げが経済やインフレに与える具体的なメカニズムを解説した動画をニコニコchにて公開中です。今後の展開をより深く理解するための参考としていただけたらと思います。

日本:日銀の金融政策決定会合の結果

 一方、日銀は今回の会合で追加利上げを見送りました。これは市場予想通りの結果であり、サプライズはありませんでした。

1.見送りの背景

 利上げ見送りの主な理由として、以下があげられています。

  • 賃金データの確認が必要:日銀は賃金動向を慎重に見極める姿勢を示しました。

  • トランプ政権の政策の不確実性:政策の影響を見極めるため、追加利上げを先送り。

 これらの要因から、少なくとも1月の会合まで追加利上げは見送られる可能性が高いとの見方が広がっています。

2.植田総裁の発言

 植田総裁は会見で、「賃金データの把握や政策全体の影響を見極めるには相応の時間がかかる」と述べました。これを受けて市場では、少なくとも2024年3月までは追加利上げが行われないとの見方が強まりました。

市場の反応と為替動向

 植田総裁の発言を受けて円安が急速に進みました。背景としては、1月の会合まで新たな賃金データや政策変更の材料がほとんど出ないと見られているためです。しかし、為替水準が1ドル160円台に迫った場合、日銀がスタンスを変更する可能性があるため、注意が必要です。

結論:2025年に向けた展望

 今回のFRBと日銀の政策決定により、2025年に向けた市場の動向がより明確になりました。アメリカでは、タカ派的な利下げを背景に、金利上昇とドル高の基調が続く可能性があるでしょう。
 日本では、少なくとも3月までは追加利上げの見送りが予想され、円安基調が継続する可能性があります。
 市場は引き続き経済指標や政策動向に敏感に反応するため、来年も大きな値動きが予想されます。投資家は金利や為替動向に注視しながら柔軟な対応を求められるでしょう。以上が今年最後の金融政策イベントについての解説でした。今後ともよろしくお願いいたします。


ご参考

関税が円高要因か円安要因かの基本的な見解
 まず、関税が引き上げられることでアメリカでインフレ要因となり、結果的に金融政策が引き締め的になってドル高・円安要因になるという見方は、基本的に正しいと考えられます。

日米金利差とドル円相場の関係、関税の話

サイトマップ(目的別)はこちら

いいなと思ったら応援しよう!