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メディアが報じない移民問題


 世界中で移民が増加することにより、様々な問題が発生しています。それに対する反対運動も起こっていますが、この問題についてメディアが十分に伝えていない傾向があると感じています。ソーシャルメディアで誤った情報を流した人が逮捕される事例も増えており、この問題は非常に扱いが難しくなってきています。

海外移住はそれなりにコストがかかり、移住者の負担も大きいですが、それでも移住しようと思う理由は所得格差が大きいことが1つの理由だとされています。移住すれば、もっと稼げる、豊かな暮らしができる。所得格差が広がる社会構造の中では、移住したいというニーズはなかなかなくならないでしょう。

世界的な移民の増加問題に関する一考察

イギリスの事件

 まず、7月末にイギリスのサウスポートで発生した事件についてです。17歳の少年がダンス教室を襲撃し、次々と子供を刺して3人の命を奪うという事件が発生しました。容疑者が17歳であったため、情報がなかなか公開されず、ソーシャルメディアで特定しようとする動きが起こりました。そして、犯人が不法入国者であるとか、イスラム教徒であるとか、誤った情報が流れました。その結果、サウスポートではイスラム教のモスクが襲撃されるなどの暴力行為が多数発生し、イギリスの当局はソーシャルメディアで嘘の情報を広めたとされる人物を逮捕しました。

ソーシャルメディアの影響と移民反対の声

 この問題は、嘘の情報をソーシャルメディアで流した人たちがいたことで暴動や破壊行為につながりました。暴動を起こした人、嘘の情報を流した人、そしてそれを煽った人たちを擁護するつもりはありません。
 ただ、それだけが問題だったのかというと、そうではないでしょう。イギリスではBBCなどでも一部言われていたことですが、暴動が起こった多くの町で、暴動を起こして逮捕された若者たちを町の人たちが応援していたという情報もあり、移民反対を主張する人たちの不満が溜まっていることが伺えます。

移民反対デモと人種差別反対デモ

 イギリスでは移民反対のデモを上回る規模で人種差別反対デモも起こっており、移民反対派が大多数になったわけではありませんが、調査会社のYouGovなどの調べでは、ここ数年で移民の数が多すぎると感じている国民の割合が増えてきていることがデータでも確認されています。
 しかし、大手メディア、特に日本のメディアでは、今回の問題について移民が増えすぎていることに対する反対意見が増えていることには触れず、ソーシャルメディアで嘘の情報を流したことが全ての原因であるかのように報道されていたと思います。

オーストラリアの政策

 8月27日にオーストラリアでは、移民抑制政策の一環として2025年以降に受け入れる留学生の数に上限を設けることを政府が発表しました。これは、移民が多すぎるという問題がオーストラリアでも問題になっており、移民対策の一環として留学生の数に制限を設けるというものです。

オーストラリアの移民の現状

 オーストラリアは元々移民大国であり、2021年の国勢調査では、両親ともにオーストラリアで生まれた人は人口の半分程度となっています。オーストラリアは移民が経済を支えていると言われてきた国であり、コロナ前まではある程度うまくいっていました。リーマンショックの時ですら、オーストラリアは景気後退にならなかったなど、人口増加の恩恵を受けてきたと言われています。

出所)「SBS News」(2024/3/21)

コロナパンデミックと移民の急増

 しかし、2020年のコロナパンデミックが始まってから渡航が困難になり、移民が急激に減少しました。
 コロナパンデミックが落ち着いた2022年以降、今度はその反動で移民が急激に増加するという現象が起こりました。2022年7月から2023年6月までの1年間で受け入れた外国人の数は51万人と過去最高を更新しました。人口2,600万人のオーストラリアで51万人というのは、かなり多い人数です。人口1億2,000万人の日本に例えると、250万人ぐらい入ってきているイメージです。

移民急増による影響

 コロナショックの後にエネルギー価格の高騰を始め、インフレが起こっていたところに急激な移民流入が起こったことで、移民大国オーストラリアでも移民が多すぎるという問題が浮上しました。移民が急増したことで住宅不足が起こり、住宅や家賃の価格が上昇し、それがインフレの要因になっています。また、移民の増加によって失業者も増えるなど、社会が不安定化する兆しもあり、移民抑制に乗り出しました。政府は2027年までに受け入れる外国人の数を年間27万人以下に抑える方針を示しています。

オーストラリアの移民政策の背景

 オーストラリアは主な産業が天然資源の輸出であり、それ以外の産業として教育の輸出、つまり留学生の受け入れも国にとって非常に重要な産業の一つです。しかし、それを制限せざるを得ないほど、移民の増え方が急激すぎる状況です。
 移民大国オーストラリアでさえ、急増する移民は受け入れられないという立場を示しています。移民の受け入れに対して積極的かどうかは考え方が分かれるところですが、どんなに移民に対して寛容な考え方があっても、国によってインフラなどのキャパシティには限界があります。国によって、そして文化によっても、それぞれ受け入れ可能な限界があると思いますが、今多くの国でその限界を超えていると見られる現象が起こっていると言えます。

ドイツの事件

 ドイツでは8月23日に26歳の男がイベント会場に侵入し、刃物で多数の人を切りつけ3人を殺害するという事件が起こりました。犯人の男は難民申請のためにドイツに入国した後、国外に送還される予定だった人物であることが明らかになっています。
 この後、イスラム国が犯行声明を出したという報道もありましたが、ドイツでも移民反対を掲げるAfDという政党が支持を伸ばしています。おそらく今回の事件で、ますますAfDが勢いづく可能性があります。
 ドイツでは2025年9月に総選挙が行われる予定であり、AfDがどこまで議席を増やすかが注目されています。9月1日にザクセン州、9月22日にブランデンブルク州で選挙が行われる予定であり、大手メディアで極右と言われているAfDが躍進すると見られており、非常に注目されています。


ご参考

海外生活の困難さ
 自分自身だけでなく、家族も人種差別を受けたり、嫌な思いをすることも少なくありません。学校で差別があったり、トラブルが起こることも珍しいことではありません。そういうことも乗り越えていかなければならない、厳しいことが多いのが実情です。

家族で海外で生活するということ

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