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英国崩壊の可能性、複数の社会問題をどうするか


 この記事ではイギリスの人口問題について取り上げます。普段、誤解を招く表現は避けるようにしていますが、本当に「崩壊」と言ってもおかしくない状況だと考えています。記事を最後まで読んでいただければ、持続可能ではないことが明らかになると思います。

 賛否両論あると思いますが、noteのタイトルにも「崩壊」という言葉を入れました。イギリスが、重要な局面を迎えていることは間違いありません。今後ともよろしくお願いいたします(TeamモハP)。

イギリスの人口増加予測

 2025年1月、イギリスの国家統計局(ONS)が発表した人口予測によると、2032年までにイギリスの人口は7,250万人に達すると見込まれています。これは2023年時点の人口6,830万人から420万人増えることを意味し、10年間で7.3%の増加となります。

 これより前の10年間の人口増加率は6.1%だったため、さらに加速していることが分かります。しかし、今回の予測は移民の増加が落ち着くことを前提としており、やや楽観的な見方が含まれている可能性があります。

人口増加の内訳と移民の影響

 2022年から2032年の間に予想される人口変動の内訳は以下のとおりです。

  • 出生数:670万人

  • 死亡数:681万人

  • 移民の流入:991万人

  • 移民の流出:498万人

 結果として、移民による純増は493万人となり、イギリスの人口増加のほとんどが移民によるものです。

 近年の移民流入は非常に多く、2022年7月から2023年6月までの1年間で90万6,000人、2023年7月から2024年6月までで72万8,000人が流入しました。イギリスの国家統計局(ONS)の予測では2028年までに344万人の移民が増え、その後は毎年34万人の増加ペースで安定するとされています。しかし、近年の実績を見ると、この予測は甘いと言わざるを得ません。

住宅問題とホームレスの増加

 移民の増加は住宅不足を深刻化させています。2024年12月時点で、イングランドとウェールズのホームレスは35万4,000人とされ、そのうち16万1,500人は子どもです。この増加の主な要因は住宅供給不足と家賃の高騰です。

 スターマー政権は5年間で150万戸の住宅を建設すると公約していますが、イギリスでは50年以上このペースで住宅を供給したことがなく、実現は容易ではありません。さらに、この計画の中心は地方政府主導であり、実行の難しさが指摘されています。

 2030年までに人口が300万人増えると予測されているため、仮に150万戸の住宅を建設できたとしても、住宅不足は解消されません。むしろ、今のペースでは状況が悪化する可能性が高いのです。

地域別の人口増加と影響

 イギリスの地域別人口増加率(2022年~2032年)は以下のとおりです。

  • イングランド:7.8%

  • ウェールズ:5.9%

  • スコットランド:4.4%

  • 北アイルランド:2.1%

 イングランド、特にロンドンなどの都市部では住宅不足とホームレス問題がより深刻になることが予想されます。

高齢化と経済成長の鈍化

 現在は出生数が死亡数を辛うじて上回っていますが、2029年には逆転すると予測されています。第二次世界大戦後のベビーブーム世代の高齢化が進み、死亡率が上昇するためです。

 移民なしでは人口は減少に転じるため、長期的には労働力不足と経済成長の鈍化が避けられません。一方で、現在のように移民を大量に受け入れれば、社会インフラが圧迫され、持続可能性がさらに低下します。

富裕層の流出と経済への影響

 移民の流入が続く一方で、富裕層の流出が顕著になっています。イギリスの移住アドバイザー会社の推計によると、2017年から2023年にかけて1万6,000人の富裕層が国外へ流出し、2024年だけで9,500人がイギリスを離れました。

  「富裕層」とは、金融資産100万ポンド(約1億9,000万円)以上を持つ人々を指します。スイスのプライベートバンクの大手であるUBSのレポートでは、2028年までに準富裕層も含め50万人がイギリスを離れると予測されています。
 これは税収面で大きな問題を引き起こします。特に高所得者層の税収は社会保障やインフラ維持のために重要ですが、その層が減ることで財政状況がますます厳しくなるでしょう。

財政問題と国家の脆弱性

 イギリスの政府債務の対GDP比率は2024年時点で約102%です。これは極端に高い数値ではないものの、慢性的な経常収支赤字を抱えており、国債発行を国内資金で賄うのが難しい状況です。この点で、日本とは異なり、資金不足に陥りやすいという脆弱性を持っています。
 スターマー政権の政策発表を受け、2024年秋以降、イギリスの10年国債利回りは上昇しており、財政面の厳しさが市場にも反映され始めています。

不法移民の増加と社会不安

 2024年にドーバー海峡を渡ってイギリスに入国した不法移民は3万6,000人と発表されました。2023年の2万9,000人から増加しており、2022年の4万6,000人と比べると高水準です。

 スターマー政権は、不法移民をルワンダに移送する計画を撤回しましたが、これが「不法移民に優しい」というメッセージを与え、流入をさらに増加させたと指摘されています。

イギリスの未来と移民政策の課題

 ここまで見てきたように、イギリスは人口増加、移民問題、住宅不足、財政悪化、富裕層の流出など、複数の課題を抱えています。今後、移民の流入を抑制しなければ、治安の悪化、社会の混乱、公共サービスの崩壊といった深刻な事態が避けられないでしょう。

 また、イギリスは、移民を制限しても高齢化と人口減少による経済の低迷に直面しますが、今のような受け入れを続ければ、さらに早く行き詰まるのは明白です。今後、移民政策をどのように調整するかが、国の未来を左右する鍵となるでしょう。


ご参考

 これまでもイギリスの地方財政が苦しいことについて解説してきました。そうした状況の中で、現在イギリスでは様々な場所でお金を徴収する動きが出ています。その中で、最近話題になったのが「ピア」です。

イギリスの財政難と「ピア」入場料導入の話

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