サウジアラビア経済と欧米企業の関係
これまでも度々サウジアラビア経済について解説してきました。特に、ビジョン2030やNEOM(ネオム)の巨大プロジェクトについては、その実現可能性に疑問を呈してきました。「サウジアラビアは欧米のコンサルティング会社にカモにされているのではないか」とコメントもいただいています。カモにされているとまでは言いませんが、実際に欧米の企業が多くの利益を上げているのは事実です。
中東の大規模プロジェクトにはほぼ間違いなく欧米のコンサルティング会社の存在があると見られています。この記事ではサウジアラビアなどの中東産油国に群がる欧米企業について説明します。
中東産油国のビジョン
ビジョン2030は、2015年頃にマッキンゼーが作成したレポートに基づいて策定されたと言われています。サウジアラビアだけでなく、他の中東産油国も同様のビジョンを掲げています。
・クウェートのクウェートビジョン2035、
・カタールのナショナルビジョン2030、
・バーレーンのバーレーンビジョン2030などがあります。
これらのビジョンは、欧米のコンサルティング会社の助言を受けて策定されており、特に脱石油を目指した構造改革が中心となっています。
中東産油国のビジョンの目指すところ
少しずつ内容は違います。サウジアラビアのように人口が多い国とそれ以外の国では置かれている状況も違いますし、カタールのように天然ガス中心の国では方法も違いますが、大きな方向性は同じです。脱石油を目指し、それ以外の産業を拡大していこうとしています。
一言で言えば、ドバイのようになろうとしているわけです。
コンサルティング業界の現状と中東地域
アメリカの大手コンサルティング会社であるマッキンゼーは、中東地域で1,000人以上のコンサルタントを雇用しています。コンサルティング業界全体が厳しい状況にある中、中東地域は重要な収益源となっています。
ブルームバーグによると、コンサルティング業界の市場規模は2,500億ドル(日本円で約37兆円)であり、2023年には市場規模がわずか3%しか伸びませんでしたが、中東地域の市場規模は4倍に拡大しました。
サウジアラビアと欧米コンサルティング会社の関係
マッキンゼーやボストンコンサルティンググループなどの大手コンサルティング会社は、サウジアラビアの複数の政府系ファンドと関係を持っています。
今年の初めに、アメリカの議会でサウジアラビアとの関係についての問題が取り上げられました。ゴルフPGAツアーとサウジアラビアが支援するLIVゴルフの統合に関する議論の中で、コンサルティング会社の幹部が「サウジアラビアの件について言及すると社員や幹部が投獄される恐れがある」として発言を控えました。このことからも、欧米のコンサルティング会社とサウジアラビアの関係がいかに深いかが分かります。
中東での金融機関の役割
サウジアラビアなどの中東産油国で利益を上げているのは、コンサルティング会社だけではありません。金融機関も重要な役割を果たしています。
ビジョン2030を進める中で、証券市場の国際化や政府系ファンドの運用の多様化などが行われています。特にサウジアラムコのIPOでは、JPモルガン、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス、HSBCなどが関与しました。
ゴールドマン・サックスは、中東の統括拠点をサウジアラビアのリヤドに設置することを発表しており、これもサウジアラビアとの関係の深さを示しています。
脱炭素計画と欧米企業の影響
サウジアラビアは気候変動対策にも力を入れており、温室効果ガスの排出削減を目指しています。
サウジグリーンイニシアティブなどの計画を発表し、500億ドル(日本円で約7.5兆円)以上の投資を行い、再生可能エネルギープロジェクトや炭素回収貯留センターの開発を進めています。これらのプロジェクトにも、欧米の企業が関与しており、利益を上げています。
終わりに
サウジアラビアなどの中東産油国が構造改革を進める中で、欧米のコンサルティング会社や金融機関、脱炭素関連のビジネスがどのように関わっているかについて解説しました。これらの動きを見ていくと、中東産油国と欧米企業の関係がいかに深いかが分かります。
今後もこの関係性がどのように変化していくのか注目していきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
ご参考(サウジアラビア記事のまとめ)
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