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スウェーデンのロミナ・ポールモクタリ氏の解説


 イタリアのメローニ政権が誕生して2年が経過しました。2024年10月現在、メローニ政権の支持率は47%と非常に高水準となっており、2年前の選挙時の43%を上回っています。これについて、メローニ首相はX(旧Twitter)で普段はあまり支持率は見ていないとしつつも、支持してくれている国民に感謝の意を伝え、引き続き政策を押し進めていく意思を示しました。

 メローニ首相以外に、ヨーロッパの女性政治家にフォーカスしてほしいと多くのリクエストをいただいてきました。この記事では注目すべきヨーロッパの女性政治家をご紹介したいと思います。

スウェーデンのロミナ・ポールモクタリ氏

 ヨーロッパには女性政治家が多いため、誰を選んでお伝えするか非常に悩みましたが、最終的にこの人しかいないという方が一人いました。スウェーデンの政治家、ロミナ・ポールモクタリ氏(以下ロミナ氏)です。

ロミナ氏の略歴と立場

  ロミナ氏は現在28歳で、27歳の時にスウェーデンで史上最年少で気候環境大臣に就任しています。ロミナ氏は自由党に所属している議員ですが、この自由党はこれまでスウェーデンが進めてきた環境政策を大転換することを主張しています。
 利権まみれの環境予算を2025年までに60%カットし、いずれは気候環境省自体を解体してビジネス省の一部にすることなどを目指しています。ロミナ氏はこうした政策の中で気候環境省をぶっ壊すために大臣に就任したというわけです。

新エネルギー政策

 スウェーデンは2045年までに温室効果ガスネットゼロを目指していますが、ロミナ氏はこれを実現するために今後20年で新しい原発10基を建設する計画としています。2030年までにガソリン車の販売を禁止するなど、前政権時代に立てた目標は左派政党を満足させるためだけのものだとして、この計画を撤回しています。

スウェーデンの史上最年少閣僚の右派政治家、気候環境相ロミナ・ポールモクタリ氏、同国の「2045年ネットゼロ」目標を堅持。

一般社団法人環境金融研究機構HP

ウラン採掘解禁の動き

 この他に、スウェーデンは環境への配慮などからウランの採掘を禁止していますが、これを解禁しようと動いています。EUの中で確認されているウランの埋蔵量の25%がスウェーデンにあるとされていますが、それを今は掘ることができません。
 スウェーデンのみならずEUにおいてもエネルギー政策においてウランの採掘を再開することは非常に重要であり、合わせて原発を増やしていくことでネットゼロを目指していく、そうした政策を進めていこうとしています。

連立政権での調整

 ただし、自由党として単独で過半数を持っているわけではないので、連立を組む他の政党との政治的判断によって選挙前に主張していたことと異なる政策を実施せざるを得ない面もあります。ロミナ氏は、そうしたことについても率直に説明し、結果が出なければ辞任するという立場で挑んでいます。

新たな政治家の台頭

 私は原発のこととかガソリン車ゼロ撤回だとか、そういう主張がしたいわけではなく、これまでの政策を転換する新たな政治家がスウェーデンで出てきていること、こうした社会の変化をお伝えしたいと考えています。
 ロミナ氏が所属する自由党はメディアでは中道右派と言われることが多いです。そのため、人によってはロミナ氏は右派ではないとか見方は色々だと思いますが、今欧州で右派が支持を伸ばしてきていると言われ、グローバル化、リベラルな政治からの揺り戻しが起こっている中で、ロミナ氏はこれから注目を集める機会が増えていくことになると私は見ています。

ドイツの事例と今後の展望
 先月ドイツで起こった不法移民による殺害事件で、与党の移民政策への反対などから、その後に行われたドイツの地方選で極右のAfDが台頭することにつながったと見られています。

フランスでの殺害事件に見る不法移民問題

他の注目政治家

 以上が、ロミナ・ポールモクタリ氏の紹介でした。
 他に、ご紹介しようと思って候補に上がった人をお伝えしますと、2022年から欧州議会議長を務めているロベルタ・メツォラ氏です。ロベルタ氏はマルタの政治家で、20年ぶり3人目の女性の欧州議会議長です。欧州議会というものがそこまで強い権限を持っていないため、注目される機会は多くはありません。

中道右派の欧州人民党(EPP)グループのロベルタ・メツォラ欧州議会現議長が、左派・急進左派の欧州統一左派・北欧緑左派連盟(Left)グループのイレーネ・モンテロ議員(スペイン選出)との一騎打ちを大差で制し、再選された。メツォラ議長の新たな任期は2027年1月までの2年半となる。

日本貿易振興機構(ジェトロ)HP

 EUでは選挙で選ばれた欧州議会は立法権がなく、各国の政府から選ばれたメンバーで構成する欧州委員が法案を作る役割を担っています。この欧州委員のトップがフォンデアライエン委員長です。ロベルタ・メツォラ氏が注目される機会は多くないと思い、詳しく掘り下げないことにしました。

 そして、元エストニア首相のカヤ・カッラス氏です。今はEUの外務大臣を務めており、EUの外務大臣になるためにエストニアの首相を辞めたという人です。他に、ドイツの極右政党とメディアで言われているAfDのアリス・ワイデル氏です。この方はゴールドマンサックス出身のエリートです。

ロミナ・ポールモクタリ氏の魅力

 様々な方を見ていく中で、ロミナ・ポールモクタリ氏が非常に面白いと思い、中心にお話ししました。
 何をもって面白いのかという話ですが、政治家ですのでご紹介するにあたり、その国でどんなことが起こっているのか、どんな新しい変化が起こっているのか、そういうところをまさに象徴する人物を紹介するのが面白いと思った次第です。そういう意味では、ロミナ・ポールモクタリ氏はなかなか面白い存在と言えるのではないでしょうか。今後も注目していきたいと思っています。


ご参考

少子化対策と経済状況
 イタリアのメローニ首相は、少子化対策にしっかりと取り組むとしています。

イタリアの少子高齢化問題とメローニ首相

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