アフガニスタンへ自衛隊派遣
◉なにやら、世界各国から軍の精鋭部隊がアフガニスタンに派遣されている感じですね。混乱を極める国から自国の在留邦人を迅速かつ安全に助け、紛れ込む可能性があるテロリストを排除する難しいミッションですから、当然といえば当然なんですが。日本からも航空自衛隊のC130輸送機2機とC2輸送機1機が派遣されることに。埼玉県の空自入間基地から先鋒部隊が旅立ちましたが、自衛隊の基地がある街で育った身としては、無事な帰還を願ってやみません。
【アフガンへ自衛隊機派遣 現地の大使館スタッフら退避へ】朝日新聞
アフガニスタンのイスラム主義勢力タリバンによる政権掌握を受け、政府は23日の国家安全保障会議(NSC)で、国際機関で働く日本人のほか、在アフガニスタン日本大使館と国際協力機構(JICA)の現地スタッフらを国外に退避させるため、自衛隊の輸送機を派遣することを決めた。岸信夫防衛相が自衛隊法に基づき派遣命令を出した。
派遣されるのは、航空自衛隊のC130輸送機2機と、C2輸送機1機。C2が23日夕、空自入間基地(埼玉県)を発った。
今後、アフガニスタンの近隣国に拠点を設置。C130がアフガニスタンの首都カブールの空港との間をピストン輸送する計画だ。拠点からは、民間機で周辺国や日本などに運ぶ。対象には現地スタッフの家族も含める方針だが、空港外での移動支援は行わない。
さて、それではこの事態が起きる6年前の2015年の、日本の政治状況を見てゆきますかね。
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■2015年の自衛隊派遣法議論■
当時は過激派組織ISILによって、後藤健二さんと湯川遥菜さんの拘束が明らかになり、最悪の結末を迎えたことから、安倍晋三総理大臣(当時)が自衛隊法の整備に意欲を見せていた、という状況でした。内閣総理大臣という行政のトップとしては、危機管理として当然のアプローチです。こういう自体になったら動くのは自衛隊。ですが、左派マスコミと野党はそうでもなかったようで、議論が混乱したのを覚えています。
【人質殺害犯に法の裁き、自衛隊の邦人救出に意欲=安倍首相】ロイター
[東京 2日 ロイター] - 安倍晋三首相は2日の参議院予算委員会で、過激派組織「イスラム国」とみられるグループに日本人2人が殺害された事件について、法によって裁く意向を明らかにした。また、日本人の生命を守るのは政府の責任だとして、自衛隊による在外邦人の救出を可能にする議論を進めていく考えを改めて示した。
(中略)
さらに安倍首相は、「国民の命、安全を守るのは政府の責任。その最高責任者は私」と発言。1月下旬に事件が発生して以降、自衛隊による在外邦人の救出に向けた法整備に意欲を示してきたが、この日も「邦人が危険な状況に陥ったときに、受け入れ国の了承の(ある)なかで、救出も可能にする議論をこれから行いたい」と語った。
平和なときにこそ、未来に起こりうる可能性を勘案し、時間をかけてじっくり検討する。当たり前ですよね、泥縄的にやったら絶対に粗もできますし、危険ですからただ、日本人の悪い癖で、未来に起こりうる都合の悪い事態には向き合いたくない、という面があります。これは「不吉な未来を言葉にすれば、現実もそうなる」という、言霊思想の影響です。ただの呪術なんですが、日本では理知的なつもりの左派にもこの考えがはびこっています。それも無自覚に。
■しんぶん赤旗と共産党の主張■
野党の意見を探してみたら、共産党のしんぶん赤旗の記事がヒットしましたので、下記に転載しておきます。新聞系のサイトは、昔の記事を消しちゃうので、資料にならんことが多いですが。言質を取られることを恐れているのでしょうは、その点では赤旗はちゃんと残してるのは偉いです。ただ内容は、実に共産党らしい、論点のずらし方ですね。許されません、許されませんとボキャブラリーが貧弱なのも気になります。人間は頭に血が上ると語彙が貧弱になり、同じ言葉を繰り返す傾向がありますね。自分もそうですが。
【「邦人救出」口実に自衛隊派兵 安保法制 協議中止を】しんぶん赤旗
過激組織「イスラム国」による日本人人質・殺害事件にかかわって、安倍内閣は「邦人救出」のための自衛隊派兵法の整備を急ぐ姿勢を示しています。海外で危険にさらされる邦人の保護は政府の責務ですが、それに乗じた海外での軍事作戦の法整備など許されません。
安倍晋三首相は、邦人が人質になっている場合、「自衛隊の持てる能力を生かし、その救出に対応できるようにすることは国の責任だ」(1月29日の衆院予算委員会)と答弁。現在の自衛隊法では海外で邦人の輸送はできるが「武器の使用はできない」と強調し、「たとえ日本人だけが人質になっていて、(現地の警察や軍にくらべて)こちらの装備が上回っていてもそれ(救出)はできないのはおかしい」と述べました。
(中略)
そもそも「邦人救出」とは、人質をとる勢力を制圧する軍事作戦です。人質の生命・安全も保証されません。自衛隊がその制圧のために武器を使うことは、政府の憲法9条解釈のもとでも禁止された「武力の行使」にあたります。「居留民の保護」が侵略の口実とされた戦前の教訓からも、「邦人救出」を口実にした海外派兵は許されません。
自衛隊法の整備は戦前の教訓とか、そういう情緒的な話ではなく。現実にはこういう事が起こりうる可能性があるのですから、現在の自衛隊が戦前の軍隊にならないように、当事者意識を持って知恵を絞るのが、政治家の責務では? こうやって6年経つと、いかに赤旗と共産党の認識が甘く雑だったか、明白ですね。なら、憲法9条の改正も視野に入れないと……って議論にしかなりませんね。
■オカルト大好き産経新聞■
オカルト大好き産経新聞はその点で、現実的で具体的ですね。その是非を論じるのが政治家の努め。産経新聞は軍事に関しては、あんがい的確な記事を書くこと〝も〟あるんですよね。徴兵制の是非についても、世界各国の事例を取材し、徴兵制はもう高度に機械化・専門家した現代の軍隊には不向きと、20年以上前に結論づけていました。安倍晋三前総理もこの線で、国会答弁してたのですが、日本の左派は「安倍は徴兵制復活を目論んでる~!」と、国会をろくに見ていないようでしたが。
【邦人救出、自衛隊出動に法の壁 「武器使用」目指すが 「国の施政下にない」条件満たさず】産経新聞
イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」が邦人2人を殺害したとみられる事件を受け、政府が今国会に提出する安全保障法制では邦人救出のあり方も焦点となる。政府は昨年7月1日の閣議決定を受け、受け入れ国の同意に基づき邦人救出の際に武器使用できるよう法整備を目指す考えだ。しかし、新しい法律ができても、自衛隊を人質救出作戦に投入するためには高いハードルがある。
(中略)
閣議決定では自衛隊による邦人救出の条件として、(1)領域国政府の同意(2)自衛隊を投入する地域に領域国政府の権力が及んでいる(3)「国家に準ずる組織(国準(くにじゅん))」が当該地域にいない-を挙げている。
この条件を今回のケースに当てはめればどうなるか。
イスラム国が国準に当たるかどうかに関しては、「国準と認めてしまえば国際社会から総スカンを受ける」(防衛省幹部)との声もあるが、政府は正式な判断を下していない。
建設的な批判と言うか、疑義の提示ですね。国と認めるか否かは、例えば今回の東京五輪で台湾をチャイニーズタイペイではなく台湾とアナウンスすることが、国際的にはかなり重要な事実であったように、重要ですね。日本は北朝鮮や台湾とは国交を断絶していますし、国家承認もなされていませんから、実はこれは北朝鮮が崩壊したときに、日本人妻の安全確保にも関わってくる問題だったりします。半島有事、台湾有事は他人事ではないです。
■朝日新聞別働隊ハフィントンポスト■
続いては朝日新聞別働隊のハフィントン・ポストの記事を見ますかね。まだこの頃は、ハフィントン・ポストもそこそこまともなことを言ってたんですけどね。
【首相、自衛隊による邦人救出の法整備に意欲】ハフポス
[東京 1日 ロイター] - 過激派組織「イスラム国」とみられるグループによる日本人人質事件が最悪の結末を迎え、今後の論点の1つに自衛隊による在外邦人の救出が浮上してきた。実際に人質の救出作戦を実行するにはハードルが高いとの指摘があるものの、法整備を行うことが邦人に対するテロの抑止力を高めるなどとして議論が進んでいきそうだ。 1月下旬に始まった今年の通常国会では、集団的自衛権の行使を可能にする
(中略)
自衛隊による邦人救出は、安倍政権が昨年7月の閣議決定で法整備を進めることを決めており、今回の事件を機に降って湧いた話ではない。
(中略)
後藤健二さんと湯川遥菜さんの拘束が明らかになった直後、政府は自衛隊の邦人救助が国会などで議論になることを見越し、統一見解をあらためてまとめ、論戦に備えていた。国家安全保障局が作成した想定問答集には「領域国の同意に基づく邦人救出などの警察的な活動ができるよう法整備を進める」との文言が盛り込まれていた。
そして、2015年以前から政府は動いてたわけですが。野党や左派はとにかく拒否拒否揚げ足取り拒否で、けっきょく積み残しがあったのは、以前のnoteでも書きましたが。今こそ、その積み残し部分をきちんと議論すべきでしょうね。菅義偉政権も国会招集に応じ、そこはちゃんと議論すべきかと。野党がこの問題を議論したいかは、知りませんが。
■日本弁護士連合会の声明■
そして、日本弁護士連合会の声明も転載しておきますかね。
【安全保障法制等の法案に反対し、平和と人権及び立憲主義を守るための宣言】日本弁護士連合会
戦後70年を迎えた今、平和と人権及び立憲主義はかつてない危機に瀕している。
政府は、2014年7月1日に集団的自衛権の行使容認等を内容とする閣議決定を行い、これを受けて現在、安全保障法制や自衛隊の海外活動等に関連する法制を大きく改変する法案を国会に提出している。これは、日本国憲法前文及び第9条が規定する恒久平和主義に反し、戦争をしない平和国家としての日本の国の在り方を根本から変えるものであり、立法により事実上の改憲を行おうとするものであるから、立憲主義にも反している。
先の大戦は国内外で多くの戦争被害者を生んだ。日本はアジア・太平洋地域への侵略により、同地域の多くの人々に重大かつ深刻な被害を与えた。また、日本軍の多くの兵士や関係者も死傷し、国内では沖縄における地上戦、広島・長崎への原爆投下、大空襲等により、膨大な数の人々が被害を受けた。
赤旗別働隊勝って感じの、声明ですね。特にコメントはないです。
■旧民主党の考え方■
このころまだ民主党だったのですが、2016年に民進党になり、2017年には立憲民主党が結党され、2018年には国民民主党に党名を替えましたしね。ということで、当時の民主党がどんな考えを表明していたか、サイトが残っていたので転載しておきますかね。内容は、典型的なオオカミ少年の物言いですね。「オオカミが来るぞ~! オオカミが来るぞ~!」と言ってるだけで、具体性がない。これでは立憲民主党と国民民主党の今日の凋落も、必然かと。
安全保障法制に関する民主党の考え方
「切れ目のない」という名の下に、「歯止めのない」拡大を目指す安倍政権
これに対して、政府が進める安全保障法制は、総じて見て、「切れ目のない」という名の下に、「歯止めのない」自衛隊の海外での活動の拡大につながるのではないかとの懸念がある。戦後、平和憲法のもと我が国が採ってきた海外で武力行使を行わないという平和主義の原則を、安倍政権は、「積極的平和主義」に変えようとしている。戦後70年目に安全保障政策の大転換を行おうとしているにもかかわらず、このことについて、国民の十分な理解や合意もないまま、前のめりで進めようとしていることに、大いに危惧を感じざるを得ない。
このように国の安全保障の根幹に関わる法案をわずか一会期の国会において成立させようとすることは、国民軽視、国会軽視であり、言語道断と言わざるを得ない。
以上の基本姿勢にもとづき、現時点における安全保障法制に関する民主党の考え方を以下に示す。なお、新しい日米防衛ガイドラインの内容や、来月に予定されている政府の安全保障関連法案の内容を十分に精査したうえで、さらに議論を深める必要性があることは言うまでもない。
ただ、国民民主党は、ラウドマイノリティにしか見えない活動家の意見を重視している立憲民主党的な政策とは、だいぶ距離を置き始めているので。できれば、こういう自体に対する野党側からの穴を埋める議論を期待したいです。健全な与党は、健全な野党が保証するのですから。揚げ足取りではない、シビリアンコントロールの矩をこえない法整備が必要かと。……社民党は、いいですね。どうせ今と変わらぬお花畑でしょうし。どっとはらい( ´ ▽ ` )ノ