森村誠一さん死去
◉いちおう大学の先輩なんですよね、面識はまったくないですけれど。幸田露伴やあさのあつこ先生、菊地秀行先生なども有名ですが。自分は、1978年の映画版『野性の証明』が好きで、小説の方は中学の時に初めて読んだ記憶が。そこから、『人間の証明』は進み、『青春の証明』の三部作へ。また同時期、後に批判される『悪魔の飽食』も、市営図書館で借りて読みました。執筆自体は、2017年頃を最後に、止まっておられたようですが。昭和一桁という年齢を考えれば、仕方がないですね。90歳は大往生かと。
ヘッダーはnoteのフォトギャラリーより、麦わら帽子の写真です。
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個人的には、小説版『人間の証明』の切なさと、最後に描かれた人間の良心の部分が、好きです。また、理想的な家族を演じる姿が、後に次々と明らかになる仮面夫婦や、崩壊した芸能人の家庭を先取りしていました。『野性の証明』は映画版は、高倉健さん演じる主人公の味沢が、かっこよくて。でも、小説版の方は救いようのない、後味の悪いラストなんですよね。まぁ、そこがまた切ないんですけどね。映画版は、そういう意味では改悪なんですが。でも、あの戦車軍団にピストル一丁で立ち向かう高倉健さんの姿は、やっぱりかっこよかったです。町田義人さんの主題歌『戦士の休息』は、永遠の名曲ですしね。
『人間の証明』は西條八十の『ぼくの帽子』をモチーフにしており、最初に読んだときは衝撃でしたし、あとがきでの森村先生とこの詩との出会い、作品に使いたいという構想との長さが、なかなかに興味深く。作話というものの、参考になりました。戦後という時代の、ある種の反米気分とか、いろんなものが絡んでいて、時代背景もかなりでした。トリック重視というよりは、動機重視の作品で、これ自体は森村作品の傾向でもありますが。と言っても、自分は証明三部作と悪魔の飽食以外は、時代劇を幾つかしか読んでいないので。あ、でも生原稿は出版社勤務時代に、見たことありますけどね。
追悼の意味も込めて、Kindleで証明三部作を購入しました。久しぶりに読み開けそうと思います。ジョー山中さんの『人間の証明のテーマ』も名曲でした。角川映画は当初から、音楽にも力を入れていたんですよねぇ。今は、TBSラジオ『問わず語りの神田伯山』のテーマ曲としてかかりますが、切ないメロディが胸に刺さります。西條八十の詩を英訳しているのですが、子供の頃は歌詞の内容が解らず。でも、なんか夏の日差しと、子供時代を思い出しますね。麦わら帽子は、鹿児島でもあんまり被りませんでしたが。小学生時代の思い出と、シンクロする楽曲です。
森村誠一先生のご冥福をお祈りします。合掌