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適応障害〜休職中のあれこれ15〜

前回の続き

もし、この私のノートを継続して読んでいただいている方がいるとしたらの話だが、

「おい、いつになったら山頂着くんだ!」とお叱りを受けそうなところではあるが、

果たして今回で無事登頂できるのか?

「人類アルプスに行けば大丈夫計画」

適応障害で休職半年以上が過ぎたころの私の考えた計画だが、

北アルプスの女王「燕岳」の名物山小屋である「燕山荘」のテント場に泊まる計画だ。

予定よりも猛スピードで登ってしまった私は10時半から11時ごろには着いてしまった。


はっきり言っておく。


スピード登山は良くない。


体力を無駄に消耗し、行動不能のリスクが伴う。

私は山頂まで行けずに、無心で張り終えたテントの中でカレーヌードルをペグで食べるという荒技をサラッと繰り出し、その後爆睡していた。


箸を忘れた者の末路。一度地面に刺したペグを抜き、ウェットティッシュでふきふきして、箸として利用する。ある意味、効率的。味に問題なし。
見晴らしの良いテント場だが、疲れてこの時は食べるので必死。


睡眠導入剤(デエビゴ)も飲まずにしばらく爆睡していたら、気がつけば3時間ほど経っていた。

午後2時ごろ、ようやく身体が動くようになったが、「テントからの眺めもいいしこのまま今日はダラダラと過ごそうかなあ」

なんて悪魔のワタシが右耳でささやいたが、

どうやらワタシの利き耳は左だったらしく、

「あなたには山頂に行く使命があります。さあ、お行きなさい」

との大天使ミカエル様の言う通りに5分かけて登山靴をゆっくり履き、
そこから重い腰を上げるのに3分を費やし、
やっとのことで午後2時半ごろに山頂に、向かって立ち上がった。

テント場からほんの少し登ると見えてくる雄大な燕岳山頂方面。

女王の名にふさわしいとだれもが感じるその姿を惜しみなく見せてくれた。

テント場すぐそばから見える燕岳。本当に美しい形をしていて、女王の名にふさわしい。女王様に殴られても喜んで反対側の頬も差し出します。
山頂に向かう途中にある奇岩、「イルカ岩」。まさにイルカにしか見えない。
あっという間に山頂が目の前に。近づくにつれて疲れも癒えてくる謎のヒーリング効果をこの山は持っている。

山頂へは約30分の道のりだが、先ほどまでの疲れはどこに行ったのか、

ワクワク感と、360度広がる絶景によって、一歩一歩、あるくたびに体力が回復しているように感じた。

うつ症状があるときは、基本的にポジティブな考え方というのは出てこない。

だが、このときは違ったようだ。

どんどん近づいてくる美しい山頂、

右手に見えるのは安曇野・松本の街とその向こうにある美ヶ原高原、

左手に見えるのは槍ヶ岳を代表とする雄大な北アルプスの山脈、

ほんとうに360度どこを見ても美しい景色なので

「はぁーーー!」

とか

「うひょーーー!!」

とかを1人で歩いててもついつい口から出てしまうくらい、圧倒されたのである。


本当に美しい山々。「こっちにも来い」と私を呼んでいるようだ。
画面じゃ小さいが、街を見下ろしている。これもまた良い。
ついに山頂!お待たせしました。


360度の雄大な景色のおかげで、なんと疲れもなく山頂へと登頂した。


登山初心者としては、「北アルプスの山に登り切った」という事実だけで、大興奮だ。


だが、この時のワタシの中に浮かび上がった感情は2つの違うものだった。


1つは、「やっぱり自分はちっぽけな存在だ」ということ。

燕岳から見える槍ヶ岳や野口五郎岳、白馬山のほうまでも見渡して、そこから安曇野や松本の街にも目を向ける。

ワタシという167cmの存在は、なんてちっぽけなんだろうか。

自分が地球に存在しようがしまいが、この北アルプスの美しさはきっと変わらないだろうし、世の中も別になんともない。

ワタシは休職中の身だが、それでも職場では(きっといろいろ同僚の皆様は大変だったかもしれないが)ワタシがいなくても生徒は大人になっていくし、ちゃんと卒業していくんだ。ワタシ1人いなくても、なんとかなるんだ。

なんてな気持ちにさせられた。


そして同時に浮かんだのは、

「妻にもこの景色を見せたい」という感情である。


適応障害になり、うつ症状が出てたワタシのそばにいた妻は、きっと、いや、本当に大変だったと思う。

風呂も入らないし、飯も全然食べないし、質問しても全然答えないし、ただただ寝るだけのワタシを横で見てるのは本当に辛かったんじゃないかな。

動き出したワタシでも、ひとりで自転車旅とか行っちゃうし、いつまた気分が落ち込むかわからないし、もちろん金銭的な問題ものしかかってる。


彼女はそんな中でも、ワタシを否定せず、すべて受け止めてくれた。


そんな妻にも、燕岳での壮大で雄大な体験をしてほしい、と心から思った。


山頂からテントに戻る時には自然と涙が出ていた。
感動なのか、いつものうつ症状なのか、よくわからなかったが、前者であると私は勝手に思っている。

だんだんと陽が落ちて燕岳はどんどん見せる姿を変えていく。

山男くんという像。夕日に照らされてイケメン。
陽が落ちると夜景が綺麗。テントにいても素晴らしい景色が見えるからつい見てしまって寝る時間が遅くなる。

夕日、宵闇、朝日、

時間ごとに北アルプスの女王は姿を変えてくれるが、どれも美しい。


夜も寝させてくれない燕岳での一泊、この日は最低マイナス15℃くらいいってたんじゃないかと思うくらい、寒さも体験させてもらって、デエビゴ(睡眠導入剤)の力に頼りに頼って3時間だけ眠れた。

そして朝。(ここからはしばらくお写真で)

夜中にiPhoneで撮った槍ヶ岳。くっきり。iPhoneすごい。
夜明け前、テントから見た景色。明るくなってきたと思ってテントの入り口開けたらこの景色は圧巻。人類みな見るべき。
日の出on雲海。こんな景色見たことありますか。ありませんよね。見に行きましょう。人生変わった。
朝日が少しだけ照らしている燕岳。昼間の顔と全然違ってイケメンすぎる。こんな景色見たことありますか。ありませんよね。見に行きましょう。
日が上がると赤く燃えてイケメンがさらに情熱的な様相に。煉獄さんを彷彿とさせる。
だんだんと表情が変わっていくのがわかるので、テント内に戻れない。マイナス10℃以下のはずだが、寒さを忘れてみていた。
山小屋の周りをぐるっとお散歩してみた。山小屋越しの燕岳。とてもウツクシイ。
山男くんが凍っている。寒さを物語っている。
しかし寒さは気にならなかった。なぜなら、素晴らしい景色を見ることができている自分がいることを、実感できる喜びが勝っていたからだ。
完全に日が上がった。太陽が出て来た途端に暖かくなる。太陽の偉大さを感じる。
地球や太陽の壮大さをまだ感じることができる自分に驚いていた。
ああ、生きていてよかった
虹彩。こんなに綺麗に見られることあるのか。生まれて初めての現象に驚く。
北アルプスの女王はフルコースで私を接待してくれた。
テント。凍ってるやないかい。ナンガの寝袋(春夏用)とユニクロのダウンのロングコート(サッカーの監督みたいなやつ)だけで夜を凌いだのはキセキ。
北海道民の毛穴が功を奏した。



どうですかみなさん、誰もがこの景色を体験するべきだと思いませんか?


そんなハイな気分でテントを撤収し、下山した。


えええ、えーと、3000文字くらいになったので続きは次回。


次回、下山で気がついたことと松山千春「君を忘れない」について。

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