繋がり、辿り、父を想う
数年前に他界した父は300冊を越える本を所有していた。
家も引っ越すことになったため、さすがに全部は持っていけず大半は処分してしまった。その中から、直感でいずれ自分が読むかもしれないと思った本を20冊くらい手元にのこした。
当時学生だった自分でも知っているような有名なビジネス書、資産運用に関する本、ビックデータ関連、社会人に疲れた時に読むメンタルケアの本。
仕事人間だった父は、親族が集まる場で「会社にいきたくないと思った日はない」と飄々と言い周囲を驚かせ、休みの日にも競合他社の視察をし、よく本を読んでいた。
急病で仕事が続けられない身体になっても、病室にパソコンを持ち込みギリギリまで仕事をしていた。
そんな父が最後に携わっていたプロジェクトがビックデータだった。
なんでこんなことを思い出したかと言うと、今日とある集まりに参加し、2019年以降の経済動向について講義を受けた。アメリカのGAFA、中国のアリババを代表するように、今後キャッシュレス決済やECの更なる発展を通じて、ビックデータの市場価値は一層上昇する。
そんな話を聞きながら、「あぁ、また父の跡を辿っている」と思った。
社会人になってから、経営に興味を持ってあれこれ調べた時期がある。その時にネットで見つけてこれを買おうと思った本が自分の本棚に既にあったことがある。父が昔読んでいた本だ。
また次の時、仕事で異動があり資産運用を勉強しなければいけなくなった。本棚には投資に関する本があった。
手元には残したものの今後読むことはないかもなと思っていた「人間関係に困った時に読む本」みたいなタイトルの本は、職場でそりの合わない上司に悩んでいた時、本棚の中で急に存在感を増して目に飛び込んできた。
無口であんまりしゃべらない父だったが、「おう、順調に社会人やってるじゃん。ようやくここまで来たか」と笑いながら言ってくれているようだった。
そして今日のビックデータ。
父は家族から見るとただの普通のおじさんだったが、ビジネスマンとしては自分の数倍優秀で到底手の届かない位置にいる先輩だったことに気が付いた。
しかも、当時社内でビックデータを任されるということはなかなかに出来る社員だったのではないかと今更ながら尊敬の念を抱いている。
「で、この先どうするんだ?」
逃げられない問いかけだ。さて、どうしようか。