「電話をとる」男の苦悩
その部屋にはいつも5-6人がいて、それぞれにそれぞれの仕事がある。
「電話をとる」ことはみんなの仕事である。
電話は誰かがとるまで鳴り続ける。
その中の1人の頭の中で、天使と悪魔が騒ぎ出す。
悪魔「もう電話はとるな。また自分の仕事が終わらなくなるぞ」
天使「そうも言ってられないわ。見て。---さん、すごく大変そう。」
悪魔「そういうふりだよ。気にするな。」
天使「そうは見えないわ。それにあなたが電話を取った分だけ、他の人が早く帰れるのよ。すばらしいじゃない!」
悪魔「バカなことを言うな。お前にはやるべき事がある。人のためになる事だ。その為に早く帰らなきゃ行けない。」
天使「目の前の人を助けないで、他にやるべきことって何よ。」
悪魔「お前は多くの人の役に立つんだ。目の前の人の小さな苦しみなど、かまっていられるか。」
天使「目の前の人の苦しみと向き合えない人が、誰かのためになれるとは思えないわ。」
悪魔「あいつの今日を思い出せ。くだらない話を長々としていた。それに比べて、お前は必要の無いことは全く話さなかった。あいつは自業自得だ。」
天使「くだらないのはあなたの言い分よ。---さんにとって、必要な話を必要なだけしていたの。自分の価値観でしか考えられないクソ野郎よ。あなたは」
悪魔「何を熱くなってるんだ?」
天使「「目の前の人のために、何ができるか」、常にこれを考えるように努めるの。そうすれば思いがけない方法で道が開けるわ。」
悪魔「クソ野郎はお前だよ。理想主義のクソ野郎だ。おれらは日々、寿命を削って生きているんだ。時間は命なんだ。それをあいつのくだらない話のために差し出すのか?」
悪魔「時間が無ければ、何も生み出せない。どんなことでも価値のあるものを作り出すには、時間がかかる。
おれがクソなのは認めるが、お前はもっとクソだ。お前は「人のため」を言い訳にして、対立から逃げている。流されている。「自己犠牲の美しさ」に目がくらんでいる。
この世界の大概もクソだ。その中でちょっとでもクソじゃないものを作ろうとしてんだ。ただ、流されているだけじゃ何も変えられない。」