ウージェーヌ・イヨネスコ『授業/犀』(白水社)
「犀」:これは面白い!獣道好きのプーチン先生にも、ぜひ読ませたい。それとも、もうとっくに読んでおられるだろうか?
これはまさしく、今演じられるべき戯曲ではないだろうか?
二組の登場人物達の別々の会話が、しだいに同期・干渉していくところが面白い。
また、日常にさりげなく異形の物語を接ぎ木してしまう手つきは安部公房を思わせ、劇のテンションを一気に頂点まで高めている。/
べランジェとジャンがカフェで話をしていると、急に商店街の方が騒がしくなる。
なんだろう?
「豚だ!装甲車だ!犀だ!」/
【べランジェ やはり、われわれにはわれわれの道徳(モラル)がある。それは動物たちの道徳とは両立しないと思うよ。
ジャン 道徳!道徳なんて、もうたくさんだ。それはごりっぱなものさ!われわれはその道徳をのり越えなくちゃいかん。
べランジェ そのかわりになにを?
ジャン (略)自然だよ!
べランジェ 自然?
ジャン (略)自然にはその法則がある。人間の作った道徳は自然に反する。
べランジェ というと、きみは人間の道徳の掟をジャングルの掟に置き換えようというのか。
ジャン ぼくはそこに生きる、そこに生きるんだ。
べランジェ (略)
ジャン (略)われわれのあり方の土台を建て直さなくちゃいかん。原始の姿に帰るべきだ。】/
なんだか急に、「#名刺代わりの戯曲10選」を選んでみたくなってきた。
もちろん、イヨネスコの「犀」は犀高です。