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病気について | うつ病と甲状腺機能低下症を併発した話 #1

こんにちは。都内で編集者・コンテンツディレクター・ライターとして活動している石澤です。初めましての方は、こちらの自己紹介・実績紹介をご覧いただけたらうれしいです。

私は今年6月上旬にうつ病と診断され、つづいて7月下旬には橋本病(慢性甲状腺炎)を起因とした甲状腺機能低下症も併発していることがわかりました。そのため、現在は休職して治療に専念しています。

まだまだ完全回復には至っていませんが、ようやく文章を書けるくらいには体力・気力が戻ってきたので、病気になって体験したことや考えたことを書いていこうと思います。


はじめに:なぜnoteを書くのか

ひとつは、病気のことを知ってもらいたいと考えたからです。
私がかかったうつ病・橋本病・甲状腺機能低下症は、どれも「珍しい病」ではないように思えます。特にうつ病はテレビで特集されたり、YouTubeやSNSなどでもまとめられていたりと、その名前を見聞きする機会がたくさんあります。

では、橋本病や甲状腺機能低下症はどうかというと、家族や友人に病名を伝えると「初めて知った」「名前は聞いたことあるけどよく知らない」「バセドウ病とは違うの?」という反応ばかりで、認知度の低さを実感しました。私自身も病気にかかるまで知りませんでしたし、もっと言えば人生で「甲状腺」という臓器を意識したことがありませんでした。

甲状腺機能低下症は、まるでうつ病のような症状をもたらすことがあります(気分の落ち込み、意欲の低下など)。また、甲状腺機能低下症とうつ病の併発も珍しくないようで、それゆえに誤診や病気自体の見落としも起こりうるそうです(自分はうつ病「だけ」にかかっている、本当は甲状腺機能低下症が原因なのにうつ病のせいだと思い込んでしまう等)。

自分の身に異変が起きたとき、最優先されるべきは医師や専門家の判断です。体験談は、あくまで体験談でしかありません。
それでも、病気を知ってもらうきっかけになるかもしれない。いつかどこかで、はっと思い出してもらえるかもしれない。そんな希望を込めて、書き残してみたいと思ったのです。

もうひとつは、自分自身の心の整理のためです。早期に併発に気づけたのはラッキーだったけれど、正直なところ、今もずっと混乱してます。その日の出来事や感情を綴る日記もつけていますが、より客観的に、病気について調べたこと・体験したことをまとめることで、少しでも冷静さを取り戻したいと考えました。


上記のような考えもあり、今回はうつ病・橋本病・甲状腺機能低下症について知ってもらうことを目的に、それぞれの疾患の概要を紹介します。

なお、この記事の内容は私(いち患者)がインターネット等を使用して調べたことや、通院先(内科および精神科)の主治医に伺った内容に基づきます。医療機関のWebサイトに掲載された文章を引用しながら各疾患を説明し、そこに私自身の所感をあわせて記載しています。また、本筋からは外れるけれど補足説明したい点は、注釈を入れています。

うつ病について

うつ病と聞くと、「心の病」という印象を持つ方も多いのではないでしょうか。うつ病は「気分障害」の一種ですし、その治療の多くは精神科や心療内科で行われています。しかし、(多説あると思いますが)医学的には「脳のエネルギー枯渇」によるものだと考えられているようです。

うつ病は、一言で説明するのはたいへん難しい病気ですが、脳のエネルギーが欠乏した状態です。それによって憂うつな気分やさまざまな意欲(食欲、睡眠欲、性欲など)の低下といった心理的症状が続くだけでなく、さまざまな身体的な自覚症状を伴うことも珍しくありません。
つまり、エネルギーの欠乏により、脳というシステム全体のトラブルが生じてしまっている状態と考えることができます。

発症の原因は正確にはよくわかっていませんが、感情や意欲を司る脳の働きに何らかの不調が生じているものと考えられています。うつ病の背景には、精神的ストレスや身体的ストレスなどが指摘されることが多いですが、辛い体験や悲しい出来事のみならず、結婚や進学、就職、引越しなどといった嬉しい出来事の後にも発症することがあります。なお、身体の病気や内科治療薬が原因となってうつ状態が生じることもあるので注意が必要です。

働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」

私もうつ病になってから「脳が働いていない」と感じる瞬間がたくさんありました。気分の落ち込みや希死念慮以外にも、お風呂に入れない、買い物ができない、言葉がうまく出てこない等々、判断力・思考力が落ちてしまったようで、近所のよく知る道で迷子になりかけたこともありました。甲状腺機能低下症の影響もあるのかもしれませんが、「心の病」という言葉だけでは片づけらない出来事ばかりでした。

うつ病患者の規模についても調べてみました。
うつ病単体ではなく、かつ古いデータになりますが、厚生労働省の調査によるとうつ病・双極性障害(参照元では「躁うつ病」表記)を含む「気分障害」の患者数は年々増加傾向にあり、平成29年時点で124.6万人まで数を伸ばしています。令和6年現在、さらに増えているであろうことは容易に想像できます。

うつ病だと診断を受けたわけではないけれど、断続的な抑うつ状態に苦しんでいる人の声もよく耳にします。冬になると気分が落ち込んでしまう、生理前は何も手につかない、ふとした瞬間に希死念慮が生じる、ストレスで眠れなくなる、ペットロスなど、皆それぞれの苦しみを抱えていると思うのです。

かくいう私も、摂食障害や冬季の気分の落ち込みなど精神的な不安定さを抱えながら生きてきました。うつ病の確定診断は今回が初めてで、当初はショックでしたが、今となっては「自然な流れだったのかもしれない」と受け入れています。

橋本病・甲状腺機能低下症について 

橋本病(慢性甲状腺炎)とは?

橋本病は、甲状腺という喉仏の下あたりにある臓器に、慢性的な炎症が生じる病です。日本内分泌学会のWebサイトでは、以下のように説明されていました。

甲状腺ホルモンは、心臓や肝臓、腎臓、脳など全身の臓器に作用して代謝を盛んにするなど、大切な作用を持つホルモンです。橋本病(慢性甲状腺炎)は、この甲状腺ホルモンが少なくなる病気(甲状腺機能低下症)の代表的な疾患です。

橋本病(慢性甲状腺炎)は自己免疫疾患の一つです。自己免疫疾患とは、細菌やウィルスなどから体を守るための免疫が、自分の臓器・細胞を標的にしてしまうことで起きる病気の総称です。橋本病では、免疫の異常によって甲状腺に慢性的に炎症が生じていることから、慢性甲状腺炎とも呼ばれます。
バセドウ病(※1)と同様に、なぜ免疫の異常が生じるかはわかっていません。橋本病を持っている人が、強いストレスや妊娠・出産、ヨード過剰摂取(海藻類、薬剤、造影剤など)等をきっかけとして甲状腺機能低下症を発症し、橋本病が明らかになるのではないかと考えられています。

一般社団法人 日本内分泌学会

私はメンタルクリニックと内科、2つの病院に通院しているのですが、甲状腺を診てもらっている内科の主治医A氏いわく、橋本病と甲状腺機能低下症はしばしば同一視されてしまうこともあるそうです。しかし、橋本病は「甲状腺に慢性的な炎症が生じた状態」を指し、その結果、「甲状腺機能に異常が生じて引き起こされる」のが甲状腺機能低下症だと区別されています。

また、「甲状腺機能低下症を発症し、橋本病が明らかになるのではないかと考えられています」という一文から読み取れるように、橋本病にかかったとしても無症状(甲状腺機能が保たれた状態)であることもままあるようです。

その因果関係を理解するうえでも注目してもらいたいのが罹患率です。特に、私と同じ女性にとっていかに身近な病であるかがわかります。

橋本病(慢性甲状腺炎)は非常に頻度の高い病気で、成人女性の10人に1人、成人男性の40人に1人にみられます。ただし、橋本病だからといって、全員の甲状腺ホルモンが少なくなるわけではなく、橋本病のうち甲状腺機能低下症になるのは4~5人に1人未満です。大部分の人では甲状腺ホルモンは正常に保たれています。女性に多く、男女比は1:20~30くらいです。特に30~40代の女性に発症することが多く、幼児や学童はまれです。

一般社団法人 日本内分泌学会

この数字をどう捉えるかは人それぞれだと思いますが、私は「想像よりもずっと多い……!」と感じました。もし成人女性がこの場に100人いたらそのうち10人が橋本病にかかっていて、さらに10人中2〜3人は甲状腺機能低下症になっている計算です。

雑な例えですが、仮に「100名中3名に当たるくじ引き」があったとしたら、私は「もしかしたら当たるかも!」と思ってくじを引くと思うんです。それくらい自分の中では「ありそう」な病気なのに、なぜか橋本病のことも、甲状腺機能低下症のこともまったく知らなかったのが、今となっては不思議でたまりません。


※1 バセドウ病は、甲状腺ホルモンを過剰に産生する病気(甲状腺機能亢進症)の代表的な病気です。橋本病と同じく自己免疫疾患のひとつで、動悸、体重減少、指の震え、暑がり、汗かきといった症状のほか、疲れやすい、軟便・下痢、筋力低下、精神的なイライラや落ち着きのなさなどが生じることもあります。(参照元 : 一般社団法人 日本内分泌学会

→過去にはサッカー選手の本田圭佑さんや歌手の絢香さんも公表されたことから、甲状腺の病気と聞くとバセドウ病を思い浮かべる人も多い印象です。(筆者所感)


甲状腺機能低下症とは?

では、甲状腺機能低下症とはどのような病気なのでしょうか。同じく日本内分泌学会のWebサイトには、こう記載されています。

甲状腺はのどぼとけの下にある蝶(チョウ)が羽を広げた形をした臓器で、甲状腺ホルモンというホルモンを作っています。このホルモンは、血液の流れに乗って心臓や肝臓、腎臓、脳など体のいろいろな臓器に運ばれて、身体の新陳代謝を盛んにするなど大切な働きをしています。

甲状腺ホルモンが少なすぎると、代謝が落ちた症状がでてきます。(中略)「甲状腺機能低下症」とは、血中の甲状腺ホルモン作用が必要よりも低下した状態です。

甲状腺機能低下症による症状には、一般的に、無気力、疲労感、むくみ、寒がり、体重増加、動作緩慢、記憶力低下、便秘などがあります。軽度の甲状腺機能低下症では症状や所見に乏しいことも多いです。甲状腺機能低下症が強くなると、傾眠、意識障害をきたし、粘液水腫性昏睡と呼ばれます。

また、甲状腺ホルモンは、代謝の調節以外にも、妊娠の成立や維持、子供の成長や発達に重要なホルモンなので、甲状腺機能低下症では、月経異常や不妊、流早産や妊娠高血圧症候群などと関連し、胎児や乳児あるいは小児期の成長や発達の遅れとも関連してきます。

一般社団法人 日本内分泌学会

無気力、疲労感、むくみ、寒がり、便秘といった症状だけ並べると「思い当たる節がある」と感じる方もいるかもしれません。仕事の疲れが溜まって頭が働かなくなったり、生理前には脚がむくんだり、便秘になったり……私もさまざまなタイミングで経験してきました。いずれも「よくある些細な不調」で、病院に行こうとまでは思わない人もいるのではないでしょうか。そんなふうに、「些細」だからこそ見逃されてしまうところが、甲状腺機能低下症の怖い部分だと感じています。

私が甲状腺機能低下症を早期発見できた理由、経緯もお伝えしようと思います。

じつは、私は4月中旬時点で「潜在性甲状腺機能低下症(※2)の疑い有り」だとわかっていました。
きっかけは、3月末から4月頭にかけて身体(特に四肢)のだるさ、異常な眠気に悩まされていたこと。それを「仕事の疲れだと思うんだけど、なんか変なんだよね〜」と友人に相談したところ、「病院に行くべき」と強く助言されたので、近所の内科へ血液検査を受けに行ったのです。

検査結果は、TSH(脳の下垂体から分泌される「甲状腺刺激ホルモン」のこと)のみが基準値を上回った、「潜在性甲状腺機能低下症」状態。ただ、一時的にそうなる場合もあること(ヨウ素の摂りすぎなど)やすでに症状がおおむね改善されていたこともあり「疑い有り」にとどまり、ひとまず疲労感に効く漢方薬だけ処方してもらいました。

その後、念のため6月末頃に再検査する予定だったのですが、6月上旬にうつ病の診断が下されため、ずるずる先延ばしに。結局、再検査を受けたのは7月中旬を過ぎた頃で、約1週間後の7月下旬に橋本病および甲状腺機能低下症が発覚した……という流れでした。なお、6月から身体のだるさ等はあったものの、当時はうつ病の症状だと思い込んでいました。

相談していた友人に報告したときの反応

日本内分泌学会の説明にもある通り、妊娠・出産に関わる場面での甲状腺ホルモンのチェックは一般的なようです。しかし、私は妊娠・出産を希望しておらず、毎年受けている健康診断でも血液検査に甲状腺の項目は含まれていなかったので、そもそも甲状腺疾患への意識が薄かったのだと思います。

もし再検査を先延ばしにしつづけていたら、自分の病気はうつ病「だけ」だと思い込んだまま、「抗うつ剤を飲んでもなかなか良くならない」と嘆いていたのかもしれません。

ちなみに、甲状腺機能低下症は生涯にわたり付き合っていかなければならない可能性が高いそうです。これが地味にショックでした。一時的なものの可能性もあるにはあるようですが……(参照元:くどう甲状腺クリニック FAQ「甲状腺機能低下症はどれくらいで治りますか?」)。

一旦、甲状腺機能低下症になると、生涯、甲状腺ホルモンの補充が必要になることが多いです。甲状腺が急に大きくなった場合は、甲状腺機能低下の悪化のほか、まれですがリンパ腫の可能性がありますので担当医に相談をしてください。

一般社団法人 日本内分泌学会

※2 「潜在性甲状腺機能低下症」とは、症状や所見には表れない程度の軽い甲状腺ホルモンの不足状態のことを指します。甲状腺ホルモン(FT3、FT4)は、脳の下垂体から分泌される「甲状腺刺激ホルモン(TSH)」により刺激を受けて甲状腺から分泌されています。血中の甲状腺ホルモンは基準範囲内なのに、TSHのみが正常値よりも高い場合を潜在性甲状腺機能低下症(甲状腺ホルモンがやや低い傾向にあり、正常に保つために多くのTSH刺激を必要としている状態)と呼びます。(参照元 : 一般社団法人 日本内分泌学会

→潜在性甲状腺機能低下症だと自覚症状はほとんどないそうです。私はだるさや眠気を明確に感じていたので、それがちょっと謎なんですが、多少なりとも仕事疲れや花粉アレルギーによる影響などもあったのでは?と考えています。(筆者所感)


うつ病と甲状腺機能低下症の関係性

うつ病と甲状腺機能低下症を併発してから自分なりに調べた結果、2つの病気には相関関係らしきものがあるのだとわかりました。

まずは症状の共通点。前述の通り、うつ病の「憂うつ感」「意欲の低下(無気力・無関心)」といった症状は、甲状腺機能低下症の症状としても現れることがあります。

また、情報を裏付ける文献などは見つけられなかったのですが「甲状腺機能低下症を発症した人のうち約56%がうつ病を併発するという研究結果がある」と書いてあるページも存在しました(参照元:iこころクリニック日本橋 「甲状腺とうつ」)。

日本甲状腺学会のWebサイトでは以下のように言及されており、誤診や病気の見落としが少なくないことがわかります。その防止策として、心療内科や精神科で血液検査を行う場合もあるようです(私が通っているメンタルクリニックでも実施しています)。

本邦における甲状腺疾患の罹患数は500~700万人で、そのうち治療が必要な患者は約240万人と推計されます。しかしながら、実際に治療を受けているのは厚生労働省平成26年患者調査(平成26年10月単月)で約45万人と報告されており、未治療の患者が多く存在しているのが現状です。

その理由として、甲状腺疾患はよくある病気にもかかわらず多様な症状を呈するために、他の疾患と誤認したり、認識されなかったりすることの多い疾患であることが挙げられます。

一般社団法人 日本甲状腺学会

ちなみに、精神科医YouTuberの益田裕介先生は両疾患の違いをこのように解説されていました。私はストレートでうつ病だと診断されましたが、たしかにメンタルクリニックの初回診察で「人生の何もかもに疲れてしまって……」と訴えた記憶があります。

ただ、私は自分の身に生じた症状すべてが甲状腺機能低下症から来ているとは考えていません。

私が通うメンタルクリニックの主治医B氏は「原因を考えてもしょうがないから治すことに集中しよう!」というタイプ。私もその意見に納得して原因追及しすぎないようにしていますが、今年に入ってからの精神状態を見ても、うつ病という診断が間違っているとは思えないのです(甲状腺機能低下症によってブーストされた可能性はおおいにあると思います!)。


今回はここまでとなります。お付き合いくださりありがとうございました。引用部分が多いとはいえ、思ったより長文になってしまいました。

次回は「発症するまでの経緯」をテーマに、2024年1月から7月までのことを振り返っていきたいと思います。客観性を保ちたいのでエッセイとまではいきませんが、内容もぐっと個人的なものになります(うつ病の話が多めなはず)。もしご興味があればご一読いただけたら嬉しいです。最後に、参照・引用したWebサイト等をまとめておきます。

▼#2はこちら


参照・引用元一覧

Webサイト:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「心の耳」

Webサイト:こころの健康情報局 すまいるナビゲーター うつ病

YouTubeチャンネル:精神科医がこころの病気を解説するch

Webサイト:一般社団法人 日本内分泌学会

Webサイト:一般社団法人 日本甲状腺学会

Webサイト:iこころクリニック日本橋

Webサイト:くどう甲状腺クリニック

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Moe Ishizawa
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