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■5 スキンヘッドの男(2)

スキンヘッドの男の名は高梁。前々から私は、自身の所属するセクションについて高梁に相談していたが、飄々としているせいか、賛同してくれているようにみえて、反対もされているように感じていた。今回のエントリーについても、あまりいい顔をしてくれない。

「あそこはお客様がね、手強いんだ。一筋縄ではいかない方が多いよ。ノルマもあるし。大丈夫?できるの?大変だよ。今のところにいる方がいいんじゃないの?」
その話題になるたびに毎度、そう言ってくる。

そんなのわかってるよ、と心の中で私はボヤく。顔に出ないようにニコッと笑ってみせる。

「今も、共通するお客様層の対応をしてあるので、それほど心配ないと思っているんです。もちろん、数字を出さないといけないので大変になることはわかっていますが、今も込み入っている方の対応はして結果は出していますし、自分のキャリアにもいい経験にもなるかと…」
そう答えると、高梁はだいたい、私を説得することを諦める。わかった、わかった、という素振りで、話を終わらせた。


私は自席に戻ると、年に1回のこの時がとうとうやっと来たな、と思った。

我が社の部署異動は、年に1回のエントリー方式だ。他社の採用試験と同じくらいの重みを持つ。一か八か、勝負をかける。それは、エントリーした者にとって大勝負でもあるが、申し出を受けた方としても、ややこしいめんどくさいことが始まったぞ、と迷惑きまわりないことでもあった。できるだけ、人事異動をさせたくないのだ。各部が専門的であるが故に、1つの席を動かすとドミノ倒しのように崩れていく。1つ動かし、他から取ってきて、体制を整える労力は、かなりのものらしい。私は別に上司のために生きているわけではないから、そんな労力が増えようとも、私は私の考えで後悔ないよう行動しよう、と決めていた。そして、今、その時が来たのだ。


(少しフィクション付け加えています)
(でも、ただの日記です)

⇒次へ続く


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