麻見和史・著『邪神の天秤 警視庁公安分析班』|読書感想
noteで初めて読書感想なるものを書きます。
拙い文章ではありますが、大目に見ていただけると助かります。
さて、私が今回読んだ小説は、麻見和史さんの『邪神の天秤 警視庁公安分析班』です。
この作品の主人公は警視庁刑事部捜査一課十一係から公安部に異動してきた、鷹野警部補です。
この鷹野警部補はデジカメを常に持ち歩いていて、気になったものを記録として残す癖があります。
その記録のおかげで、いくつもの難事件を捜査一課にいた頃は解決していました。
ちなみに、鷹野警部補の活躍を読める作品としては『警視庁殺人分析班』シリーズがありまして、ここでは如月塔子という女性刑事が主人公となっています。
その主人公の相棒が、これから感想を書く小説の主人公である鷹野警部補なのです。
私は『警視庁殺人分析班』シリーズが好きで、かれこれ4年前から読み続けています。
最初はWOWOWで『石の繭』というドラマが放送されていたことを知り、そのあとに小説があることを知りました。
被害者がモルタルで固められているという猟奇的な事件をどのように解決していくのかに惹きつけられました。
ドラマでは如月塔子役を木村文乃さん、鷹野秀昭警部補を青木崇高さんが演じています。
ドラマは一切観ていませんが、小説は全巻制覇しました。
どの巻もスリルのある展開で、のめり込んで読んでいました。
『警視庁殺人分析班』シリーズで十分に楽しませていただいたので、
今回の『警視庁公安分析班』シリーズにも胸に期待を膨らませていました。
そしていざ読んでみると、期待を遥かに超える面白さでした。
刑事部と公安部の捜査手法の違いが浮き彫りになっていて、それに苦悩する鷹野が何とも新鮮でした。
捜査一課は、事件が起きた後に捜査が始まります。
しかし、公安部は事件が起きる前に捜査をします。
公安部が扱う事件の性質が捜査一課のものとは違っていて、
事件が起きてしまうことで、日本の秩序や体制そのものが崩壊する可能性があるからです。
【テロ】と言えば、想像ができると思います。
テロを起こさせないようにしているのが、公安部なのです。
話を小説に戻します。
テロのような事件を何としてでも阻止したい公安部は、
テロを起こしそうな組織に一般人をスパイとして送り込んで、
情報収集を行ったりしています。
さらに事件の背景をしっかりと分析しないまま、
その組織が行ったのだろうという思い込みで捜査を行います。
(疑わしい組織を壊滅させるため。)
そして、そのスパイに危機が訪れるや否や、
使い捨てライターのような非情な判断を下すのを見て、
「何と恐ろしい組織なんだ」と思いました。
その人を守るための判断なのですが、
それにしても協力者に対してそんなことをしても許されるのか。
でも、国の平和を守るためには仕方のないことなのか。
公安部の警察官もこんなふうに気持ちが揺らぐことがあるのだろうか、
と気になりました。
あとは事件の関係者を張り込みしているときも揺らぐ場面がありました。
爆弾を製造し販売している人間の張り込みをしている最中に、
婦女暴行事件が起きそうになっている場面を鷹野は目撃するのですが、
公安部のメンバーは無視するように命じます。
そんな小さな事件よりも大きな事件に集中しろ、と言わんばかりに。
こんな場面をどこかで観たことあるなと思ったのですが、
それもそのはず。
刑事ドラマが比較的好きな私は、
織田裕二さん主演の『踊る大捜査線』でこんな場面を観ました。
それも今回の小説と同じように犯人の張り込みをしていたときです。
織田裕二さん演じる青島俊作が捜査指揮を執っていた
柳葉敏郎さん演じる室井慎次に無線連絡しますが、
勝手な行動をするなと命じます。
でも、青島はその命令を無視して婦女暴行犯を逮捕します。
その騒ぎのおかげで犯人に逃げられてしまったものの、
湾岸署の刑事たちが逃走した犯人を逮捕してことなきを得ます。
青島が一緒に張り込んでいた捜査一課の刑事や室井に叱責されました。
でも青島は、目の前で苦しんでいる人を凶悪事件を解決するために無視するのはできない、と主張しました。
鷹野の行動も青島のものと一緒だと思いました。
目の前で苦しんでいる人を助けられないのでは、警察官である意味がないと思ったのかもしれません。
『踊る大捜査線』と違うのは、
逃走した事件関係者を捕らえることができなかったことです。
なにせこの小説の公安部はとにかく単独行動が基本で、
捜査一課にいた頃のようにチームワークを重視していないのです。
だから、連携が上手くできないというのも鷹野の悩みのようです。
鷹野は進退について班長から問われましたが、
捜査一課で得た捜査技術と公安部の捜査技術を混ぜ合わせて、
事件を未然に防いだり、解決したいということを表明し、
公安部に残ることになりました。
捜査一課で得た捜査技術のおかげで、
今回の事件も解決に至るのですが、
事件の指示役までには辿り着けませんでした。
指示役は次の小説『偽神の審判』で逮捕されるのか。
近いうちに続編を読もうと思います!
《おわり》