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もう一度春を。
「久しぶり。」
彼と2年ぶりに再開したのは呆気ない冬だった。
ずっと会いたかった彼に会えて涙を我慢していた。きっと君は気付いていたんだろうな。
案外気まずくなくて、私から話を切り出した。
「ねえ覚えてる?あのたい焼き屋さん。」
「𓏸𓏸が好きな白あんね。」
「私黒あん派に変わっちゃったんだよ」
「俺と一緒だね」
久しぶりの君の声と笑い声とこのテンポ。
落ち着く。こんなところも好きだったな。
「𓏸𓏸なんか変わったね」
「良くなったでしょ。もうあんなに泣かなくなったよ。」
「あの時隣で支えてあげられなくてごめん。ずっと謝りたかった。」
「ううん。気にしないで。」
私は2年前、うつ病になっていた。私の不安定な精神状態が原因で彼に振られてしまった。彼は何度も慰めてくれたし聞いてくれていたけど、私が頼れずにすべてを1人で抱え込んで心閉ざしてしまった。
彼にこれ以上負担をかけたくなかった。
時はお互い勉強に追われ、限られた時間を縫って会っていた。そんな日々は儚い夢のようだったけれど確かに愛があった。愛し合っていた。でも、私にも彼にも余裕がなかった。
2年という歳月をかけて変わった私たちは余裕も時間もある。
「戻りたいって言ったら怒る?」
彼が聞いてきた。
「怒らないけど断るかな」
「2回も告白断られたの思い出すな」
「ほんと懐かしいね」
昔話に花を咲かせて2人で笑いあった。
「写真消した?」
「うん。さすがにね」
「俺多分非表示にしてるだけでまだ何枚か残ってるかも。」
「ちゃんと消しておきなよ。」
また私は嘘をついた。
この桜はあなたと見た2年前の桜たち。この動画だけ消せなかった。それに本はまだ君の隣に戻りたい。復縁を持ちかけられた時、断るって決めていたのに心が揺らいだ。思わず受け入れてしまいたくなった。
いつの間にか夕日が顔を出す時間になっていた。
最後に2人でよく通ったケーキ屋さんに寄った。
「oo何にする?いちごあるよ」
「じゃあ私いちごにする」
「俺はラズベリーで。」