なつの日常 1027文字#シロクマ文芸部
風鈴とビールを持って、縁側へ。
祖父母から受け継いだ古い家は、少しずつ自分で直しながら自分好みに整えている最中だ。
ここは、森が近くて自然が豊か。
人目を気にする事はなく、唯一の心配は猪や鹿が、たまに顔を覗かせる所。
けれど、人の気配がそこにあれば、森に住む生き物たちは寄ってこない。
まだ、人と自然の境界線は生きている。
そんな所に住んでいる私の家の縁側へとやって来たら、脚立を使って高い所へ風鈴をつけていく。
つければすぐにチリーン。チリーン。
涼しい夜風でチリーン。チリーン。
風鈴の音を気にする必要など此処にはない。鳴りたいだけ鳴らしてられる。
風鈴とビールを持ってきたら、木製の小さい1人用のテーブルを開いて、そこへ茹でたての素麺と薬味。
ビールのおつまみ用の茹でたての枝豆を持ってくれば、もう完璧!
おっと、忘れてはいけないのが蚊取り線香。せっかくの時間を蚊の痒みに邪魔されたくない。
畳の丸い座布団を引き、私はプシュッ、と缶ビールを開ける。ビールはキンキンに冷えていて、冷蔵庫から出して少し時間が経っても冷たいまま。
ゴクッ、ゴクッ、ゴクッ
「プハ〜〜〜〜っっ!!ん〜〜うま〜〜い!!生き返る〜〜〜っ!!!!」
すぐに枝豆を手に取りプスッ、プスッと枝豆を口の中へと弾ませる。
「………、合いますな〜〜」
ビールに枝豆とくれば、次はお待ちかねの素麺。
薬味であるミョウガと葱をつけ汁へと全部投入。………と、その時……
「あっ……、わさび忘れたっ!!ついでに扇風機もっ!」
私は素早く立ち上がり、わさびと扇風機を縁側へと運ぶ。カチッと扇風機の電源を入れ、薬味を入れたつけ汁の器の端へ、チョンっとわさびと乗っける。
つやつやに光っている素麺を箸ですくい上げ、薬味たっぷりのつけ汁へとダイブ。そこへ少しのわさびを乗せて勢いよくすする。
ズルズルズル〜〜っ!!!
「う〜〜〜〜んっ!!!こっちも冷たくてピリッとしてさっぱりして旨っ〜〜!!!」
次から次へと口の中へと素麺を運んでい行きながら、風鈴の心地の良い音と扇風機の風が夏の夜に素敵なハーモニーを奏でている。
無心でビール、枝豆、ビール、素麺、枝豆、ビール、と舌でたんっと夏の味覚を味わい尽くす。
カンッ!!
「は〜〜〜っ!美味しかった〜〜〜」
私は、猛暑で酷暑な夏は苦手だ。
けれど、私の住んでいる所では、夜になると涼しい風がやって来る。
私はこの場所が好き。
ここで過ごす、夏が好き。
〜終〜
こちらの企画に参加させて頂きました。
ありがとうございました(^^)
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