反抗期
毒親育ちには反抗期の無かった人が多いという。
自分もそうだ。
親には反抗できなかった。
そしてその矛先が当時の親友に向かってしまった。
中学に入って、少し遠くの進学塾に通うようになった。同じ中学の生徒はいない。
入塾テストの成績がたまたま良かったようで、自分が入れられたクラスには、自分より頭が良くて面白い奴ばかりがいた。
正直、中学校よりも塾の方が楽しかった。
彼もその中の一人で、趣味が同じこともあり特に気が合った。
週末はお互いの家を行き来し、平日の夜も毎日のように長電話をした。
当時はスマホも携帯もポケベルすらもない黒電話の時代だ。
家の電話を独り占めするなと、それこそ怖い親に怒られたものだが、なぜだかスルーできていた。
暴言は吐くけど暴力は振るわない親だったので、上手くやり過ごしたのだろう。
ていうか、この件は親の言い分が正しくて、自分が被害者面をする権利は全く無いのだけど。
中3になった時、なぜか彼の存在や言動に腹が立つようになった。
悪口を言われたり、仲間外れにされたわけではない。
自分でもその怒りと嫌悪感の原因がわからず、混乱し持て余していた。
今はそれが反抗期だとわかる。
思春期に自分を受け入れてくれた親友に対して、
毒親育ちが持っている幼児的依存心を向けてしまっていたのだろう。
自分にとっては親より心を許せる親密な関係だったから。
親に向けるべき反抗心を、大切な親友に向けてしまった。
家族仲の良い彼には想像もつかないことだろう。
ある日突然よそよそしくなった自分に、ずいぶん戸惑ったと思う。
ご機嫌を伺うような接し方もさせてしまった。
傷付けてしまっていたかもしれない。
中学を卒業するまで、ずっと反抗心を向けていたかどうかは、なぜだか記憶に無い。
ただ高校に入ってから、その塾でお世話になった先生の家で同窓会を開いてもらった時は、何のわだかまりも無く、仲良く楽しく話した記憶がある。
今、彼がどうしているかは知らないけれど、幸せに暮らしていることを切に願う。