菊になったカブ
独身時代、会社の昼休みにカウンターで良心的なランチを頂きながら、板前さんが夜のお会席の支度をしているのを見せて貰うのが好きだった。見事な包丁捌きで、蕪が菊の形になったりする。芸術だ。
結局、真似できるようなことはあまり無かったけれど、学んだことはある。一流のプロでも、丁寧なお料理はひとつひとつ手間暇かけて、作っているということ。そして、その美しさ。
野菜を切りながら思い出す。芸術的な飾り切りを。ジャズと共にゆっくり流れる空間を。今は小さな子供達がいて、バタバタで、時短料理ばかりだけれど。栄養だけ考えて、野菜いっぱいのスープをブレンダーでガーーーっと雑に作ったりする毎日だけど。
好きなお店の数々は、そこに居る間のみならず、記憶の中でも癒しを、安らぎを、ときめきをくれる。