「自立して未来に挑戦する態度」をどのように養成するか


 子高齢化が一層進み、高度情報化社会における知の流動性は一層早くなっている。経済においては豊かさを維持発展させていくためにイノベーションが求められている。また、グローバル化のなかで積極的に世界に貢献していく役割を担う必要が日本に求められている。このような時代の要請もあり、自立して将来を担っていく若者を育てることはすべての教育者の使命である。私は以下の4つの段階を踏みながら課題を実現する学校作りを進める。

1学びの意義と社会を結びつける教育

 ぜ学ぶのか。この問いに対する答えを進学や就職の実現だけに求めるだけでは不十分である。学校での様々な教育活動の中で体験することはこれからの人生の困難さや課題の解決に対処する経験になりうる。たとえば文化祭において、文化委員がクラス行事を難渋しながらも楽しみながらやり遂げる。この文化委員は賞を取る出来が得られなくとも、代え難い人間関係やリーダーシップを学んだことになる。授業や学校行事は知識や体験を得るだけのものではない。教育活動という手段を使って、生きる力、つまり自立する力を養成しているのである。

 校長として教職員に対して、授業だけにとどまらず、あらゆる教育活動における多面的な意図を再確認し、背景にある教育の意味、つまり学びの意義を教頭や主幹教諭を通じて広め、浸透させる。校長は教職員や全校生徒に話す機会も多くあり、その中で多元的な学びの意義や学校教育活動を総括し気づかせていく。そして、自立する力の養成から体験活動の重要性を教職員に説き、ボランティア活動や地域活動に参加する活動を強力に推進する。

2学びはこの世界の構造を把握するもの

たとえば、お互いに理解し合うためには言語活動のルールを学ばねばならない。英語を学ぶ必要がある。この世界(自然)を理解するためには物理も数学も必要である。今ある自分や他者を知るためには時間軸をさかのぼる必要がある。いわゆる歴史や社会を学ぶ必要がある。主体的に生きていくためには、この世界の構造を理解する必要がある。学ぶことは生きていく道具を手に入れていくこと。豊かな人生を実現するツールを得ることである。

校長として学校全体を見渡し、深い人間理解と生徒実態に応じた教育課程が編成できるよう教務を中心に指導する。また、教頭には各授業の成果が上がっているか十分指導を徹底させ、管理業務を遂行させる。また、目的や将来の夢が実現されるようなキャリア教育や進路指導が出来るよう進路指導部を指導する。

3「できる自分」という確信を持たせる教育

未来に挑戦する態度は今後求められる若者に必須の条件である。社会的に成功するのみにかかわらず、尊厳ある人生を歩む上でもやる気のある青少年の育成に邁進したい。特に失敗をおそれず果敢に物事に取り組み、小さな成果を積み上げていくことが大切である。そのためには学校全体、特に教員集団の仕事に対する姿勢が重要となる。教師自身が「新たな課題に対して、何とかがんばることが出来る。みなと協力してやりきることが出来る」という確信が必要である。校長として私は教職員に対して3つの基本姿勢を明言する。

①失敗をおそれず果敢に挑戦せよ。進取の精神を大切にし、体験を通じた教育活動を通して生徒を指導してほしい。失敗の責任は管理職にある。

②個々の生徒に対して成果を示し、自信をつける教育をしてほしい。

③生徒に教育活動の意味や意義を丁寧に説明し、自分の成長を確認させる教育をしてほしい。

そして、教員自らが家庭や地域住民としての義務や責任を果たすコモンセンスを持った社会人であることの重要性を説く。教職員が生き生きと挑戦する人生をキャリアをふまえて実践することなくして課題の教育を実践することは出来ない。

4校長のリーダーシップがすべて

社会を永続させ、より一層豊かな社会の実現と個々の人生を尊厳在るもの、生き甲斐在るものにするために学校の長として誠心誠意この課題に取り組む。生徒一人一人はあざなわれる縄のごとく地域や兵庫県、日本国をつないで行く人材である。その成果は在校中よりも10年後、20年後、もっと先に花を咲かせるものである。腰をすえて、場当たり的ではなく、良き伝統、校風を醸成する見識をもって取り組む。

教職員に対しては校長として、機会あるごとに時代を担う人材の育成という教育の本道にふれ、教職員を鼓舞し、授業や特別活動などあらゆる教育活動を通して生徒と共に学び汗をかく職員集団を作る。そのためにひとりひとりの教職員と腹を割って話しあい、企画ややる気を引き出す。授業をこまめに参観し教頭や関係部署と課題に対する策を練る。部活動や校外活動にも顔を出し、個々の教員の特性ややりがいを把握し、人心を多面的に掌握する。一人一人の教員はあざなわれる縄のごとく兵庫の教育をつないでいく大切な人材である。教頭や主幹教諭を育て、個々の教職員に良き影響を与える。その覚悟と責任の重さを自覚し課題に対して果敢に取り組む。



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