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【詩】装置

眼は傷口だと言った人がいた
涙は色を失った血液なのだと
本にあったのかもしれないし
詩人だったのかもしれないな
流れるのを止めてはいけない
それは生きる為の装置だから
悲しい気持ちを濾過していき
明日笑うための反応だからと
その人はとても美しく泣いた
私は何をしていいかわからず
ハンカチを出したかったけど
何もできなくてまぬけだった
例えば山田詠美の小説みたく
その人を抱きしめてあげたり
涙に濡れた瞳にそっと優しく
キスをしてあげたかったけど
私じゃいけない気がしていた
歯を少しだけ噛みしめていた
誰もが痛みを抱えているんだ
思い出したように私の装置は
まったく勝手に作動を始める
私はぎゅうっとそれをとめる
ぽたぽたとあとからあとから
こんなに止まらないのだもの
どこかでほっとする私がいる
情緒不安定でも良いと思うの
濾過されてしまったら貴女が
永遠に消えてしまう気がして
そっちの方がとても怖いんだ


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