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11/22 『答え合わせ』を読んだ

NON STYLE石田による漫才論をまとめた本。いやもう、NSCで講師を務めているのだから、これはもはや講義録とか呼ぶべきものなんじゃないか。とても勉強になる……活かす場があるかは知れないが。養成所の講師や賞レースの審査員も務めつつ、今現在もプレイヤーとして舞台に立ち続けている著者の、今現在における漫才に対する向き合い方を、今現在舞台で戦い続けている漫才師たちの名前もじゃんじゃん出しながら語っていくので、講義でありながら、臨場感のようなものがある。来月のM-1に向けて、モチベ

11/16 『ジェノサイド 下』を読んだ

父の謎の遺言、謎の潜入作戦、謎のパソコンソフト、謎の新生物……と幾重にもミステリアスの糸が張り巡らされていた上巻から、下巻はそれらの糸が大きくうねりながら人類種の命運という一本の手綱へと縒り合されていく怒涛のサスペンスへ。ストーリーが単調にならないように研人たち日本サイドとイエーガーらアフリカサイドに加えルーベンスから見たアメリカ政府サイドの視点も加わる(正確には上巻の第二部開始時点からもう加わってるけど)。まったくエンターテイメントとしての作品強度の高さに敬服する。「まるで

11/12 『コズミック 世紀末探偵神話 新装版』を読んだ

初めてノベルス版を目にしたのは高校生の時、図書館で。しかしその時はさわりだけをちょろっと覗いただけで引き返し、ちゃんと読んだのは大学生の時。面白かったと記憶しているが、当時は世紀の怪作と謳われたその存在を受け止めるだけで精一杯だった。精一杯面白がったのだ。あれからだいたい15年、今読んでみてどういった感想を得るのか、自分で自分にドキドキしながら読んでみた。 ただ……15年って思ってた以上に長い年月で、いざ読みだしたら、内容を全然覚えてなかったことに気づいた。登場する探偵たちや

11/2 『ジェノサイド 上』を読んだ

名前だけはどこかで耳にしていて、面白いと聞いていたのでいずれ読もうと思っていた作品。高野和明さんは初めて読む作家だが、これはもはや擦り倒されてるネタかもしれないけど、本を開く直前まで高野秀行さんと混同していた。いや開いた直後までかな。カバー折り返しの著者略歴を見て気づいたから。『クレイジージャーニー』を観ていて、「へーあの『ジェノサイド』を書いた作家さん、今は世界の納豆を追いかけてるんだー」とか思っていた。失礼でありました。 タイトルからして物騒だし、どんな話なのかと戦々兢々

10/10 『大江戸科学捜査 八丁堀のおゆう』を読んだ

初めて読む作家。手に取ったきっかけは、店頭に並んでいたシリーズ当時最新刊の『ステイホームは江戸で』という副題を見て、思わず笑っちゃったから。ズルすぎるだろ! 万が一ウィルス持ち込んじゃったらヤバすぎるし。それで気になり、あらすじを見たら面白そうだったので1巻目を購入の運びとなった。 タイムスリップではなく江戸と現代を自在に行き来できるという設定だが、その行き来するときの描写がとても良かった。階段を上がり続け、家の外観からしたら有り得ない空間を通ることで時間の壁を跨ぐ。時間の歪

積読リスト(2024年10月現在)

今四半期はとても調子が良かったようだ。ただ読んだ本の半分くらいは新しく買った本だし、その上でまた新たに積んだりしてるのでリストはより伸長している。あと、この積読リストから手を着け始めたシリーズものも別にリスト化して、そちらも逐次消化していくようにしたので、今後も進行速度は滞っていくことだろう。 最近のトピックは特にない。3ヶ月前も同じこと言っていた。草刈りばかりでしたよこの時期は。草しか刈ってねえ。しかも休日に限って雨降ったりして、草もろくに刈れねえ。やりたくもないことをやれ

9/27 『店長がバカすぎて』を読んだ

自分の勤めている店では購入がはばかられた。オビにコメントを寄せている書店員の方々はどういう気持ちで書いているのか……風通しのいい環境なのかな。自分のところがそうでないというわけでもないけど。 同業種とは言え環境やら何やらも違うので、どこが同じ、ここは違う、これは流石に無いよ~みたいなことを細かくあげつらうのも粋ではない。店の立地や規模によっていろいろ差もあるだろうし。こんなことあるある、というのと、こんなこともあるのか、というのをそれぞれ程よく感じ取って読んでいた。バカな店長

9/27 『短物語』を読んだ

これまで様々な折に様々な媒体で書かれた短々編を一まとめにした物語集。短い物語だからミジカナモノガタリ、なんて、相変わらず洒落てるなとは思ったものの、収録作のボリュームとスパンからして、最初期からシリーズを追ってないと何が何やら、どこがどこやら、誰が誰やらとまではいかないまでも、わからない人は多いんじゃないだろうか……どこが身近だ。 しかし最初期からシリーズを追っていた自分はしっかり楽しめたのでよかった。初出一覧を見るに、実はけっこう既読のものとかあったけど、それも随分昔のこと

9/21 『天冥の標 Ⅱ 救世群』を読んだ

第一巻を読んで、散りばめられた謎と果てしない奥ゆきを感じさせる伏線にこれからどんな壮大なスペクタクルが待っているのだろうと胸をときめかせてから――なんと3年が経過していた。一体何してたんだ。いや何してたかと言えば、積読を消化していた……他ならぬ本シリーズ第一巻もそんな積読のひと積みであった。しかしそうしてシリーズ作品に踏み出したはいいものの、続きを読みたいと思ってもリストの先にはまた別の積読、別のシリーズ作品が控えているためになかなか続巻に踏み込めないという我がリスト式積読消

9/12 『高い城の男』を読んだ

何年か前にSF古典名作フェアをセルフ開催して、『ニューロマンサー』と一緒に購入。『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』にしなかったのはなんか……照れた。『星を継ぐもの』も一緒に買ってたし、なんかこう、ベタが過ぎるって気になってしまった。一個は変えないと。それで選んだのが本作であるが、これがうまく外せているのかどうかもわからん。 『ニューロマンサー』同様に、厳しい戦いになるだろう、心して臨まねば、と気合を入れて読み始めたが、意外と意外と、結構読める。これまで読んできた海外SFの

8/25 『この平坦な道を僕はまっすぐ歩けない』を読んだ

事件が起きないエッセイシリーズ3冊目、オビに「ついに事件が……!?」みたいな思わせぶりな文句が書いてあるからなるほど結婚のことを書いてるんだなと思ったら……書いてねえ! 畜生釣られた! まあ調べてみるとあの電撃結婚発表から2、3ヶ月後がもう連載の最終回だったし、もしかしたら既に最終回分まで原稿を提出していたのかもしれない。書く余地がなかったか。いやでも微妙だけど……書き下ろしがあったんだから書こうと思えば書けたのでは……とするとあえて書かなかったのか。あくまで事件が起きないシ

8/20 『機龍警察 自爆条項〔完全版〕 上 下』を読んだ

警察小説というジャンルにはまだ足を踏み入れたばかりで目下勉強中って感じで、せいぜいポリティカル・フィクションとは警察モノのこと(だけ)を言うのではないということがわかったぐらいだが、そんな不肖の身から感じ取れる本シリーズの警察モノとしての特色は、「なんかすっごいギスギスしてる」というものであった。今作でもそれは遺憾なく発揮されていて、相変わらず特捜部は警察内のあちこちから嫌われている。そんな特捜部内で更に距離を置かれている突入班の三人の部付警部。もうなんやねんこのヨソヨソムー

8/9 『悪い夏』を読んだ

購入したのは何年か前の冬、セルフお誕生日プレゼントとして近隣の書店を巡って目についたもの気になったもの予算の許す限り買いまくったうちの一つだったが、特に狙ったわけでもなくたまたま夏真っ盛りの時期に読むこととあいなった。奇しくも今年は馬鹿になっちゃいそうなくらいの酷暑、悪いというならこっちだって負けちゃいない。俺の夏とお前の夏、どっちがより悪い夏か……勝負だ! ……いや負けた負けた、悪っる……冒頭の十数ページだけでもうだいぶ精神衛生に悪い。何が悪いって、たとえば数日前、スーパー

8/7 『十一人の賊軍』を読んだ

たまたま並行して読んでいた『最強の毒』と、まあまあ時代が近い。あちらからおよそ40年後くらいで、すっかり幕末動乱の真っ只中にあるのだなあと考えると、また読み味も変わってきそう。 今秋公開される映画の小説版ということで、原作がある作品なんだけど、平民が棒きれで刀持つ侍を叩きのめしたりとか、登場人物たちが他の冲方作品のあのキャラこのキャラにどことなく通ずるところがあるような気がするのは、原作を冲方テイストで煮しめたということなのか、通ずるからこそ小説版が冲方丁に委ねられたのか。こ