「おはよう、ロンドン!」② ~パンクのメッカで暮らした4週間(と馬の話)~
「おはよう」シリーズも3回目になりました。
(シリーズ化する気はなかったんですが。でもたぶんこれで終わり)
前回はこちら↓
前々回はこちらです↓
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生まれて初めての海外旅行はハタチのときで、大学の夏休みを利用して渡英した。
本当はオーストラリアに行くつもりだったのだけど、ツアーが最少催行人数に足りないとかでキャンセルになり、同じような日程と金額のロンドンのツアーに、やむを得ず変更したのだ。
4週間の語学研修ツアーで、ホームステイではなく、寮に滞在した。
確かロンドン大学の寮を夏休みの間一般に開放していたので、学生だけではなく、世界中から老若男女問わず集まっていたような記憶がある。
平日の午前と午後は英語の授業で、土日はあちこち観光に出かけていた…のは、2週目から。
実は、最初の一週間は怖くて地下鉄やバスに一人で乗れなくて、寮の近辺にしか行かなかったから。
寮のあった場所は、キングス・ロード沿い。
そう、マルコム・マクラーレンとヴィヴィアン・ウェストウッドのブティックがあり、そこにセックス・ピストルズのメンバーとなる青年たちが来ていたということで、「パンクのメッカ」とされる、あのキングス・ロードだ。
結構にぎやかな通りで、スーパーもたくさんあったし、そこにいるだけで用が足りるような場所だったから、わざわざ地下鉄に乗ってどこかにいく必要もなかったのだ。
ロンドンに着いてからしばらくは時差ボケに苦しめられ、朝早く目が覚めていた。
イギリスは日本より緯度が高く、サマータイムで1時間早められていたこともあり、朝5時にはもう日が昇りきっている。
私の部屋は寮の7階で、窓からキングス・ロードを見下ろすことができた。
その日の朝も5時には目を覚ましていて、ぼんやりしていたころだと思う。
窓の外から「パッカパッカパッカパッカ」と軽快な音が聞こえてくる。
思わず窓から下を見下ろした。
馬!
↑ ポケットカメラだったので、110フィルムでした。無理やりスキャンしました。
騎馬隊だったようだ。
私は思わずカメラを取り出して撮影した。
日本の馬なんて、競馬場と牧場にしかいないのに…!
感動のあまり7階の窓から、私は叫んだ(心の中でね)。
「おはよう、ロンドン! おはよう、キングス・ロード!!」
その後、地下鉄で遠出することもできるようになり、4週間を思いっきりエンジョイし、ロンドンが大好きになってしまった私は、帰国前日のパーティーで「帰りたくない」と、語学学校の先生の前で号泣してしまった。
そして、
「あたし、いつか必ずロンドンに住むから!」
そう心に誓った。
それから9年後に、私は小銭を貯めてロンドン暮らしを決行した。
YDK。やればできる子の私。
そのときも騎馬隊を見かける機会がたくさんあったのだが、一番印象に残っているのは、大物アーティストのライブのとき。
ウェンブリーアリーナとかスタジアムとかだと、観客数がハンパないので、人の波を整理するのに馬が使われるのだ。
馬が!
どうするかというと、道に馬を二頭並べ(乗っているのは警官)、人を通すときは道と並行に、人の流れを止めるときは道と垂直に、馬の向きを変えるのだ。
つまり、二頭の馬が門扉の役割をするということ。
しかし、何よりも気になったのは、
馬糞。
馬の近辺には馬糞の山。くっさいくっさい。
ローリング・ストーンズを見に行った帰りに馬糞の臭いを嗅いで、北海道の牧場を思い起こす私であった。
~fin~