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続・アトピー対策備忘録31: 体質改善29 硫化水素・伝統的水素療法

 昨今水素水飲用や水素風呂等、水素療法を取り上げる事が多い。ここ十年ほどで巷でも色々と水素自体は有名になり、ジム等でも水素水サーバーが置かれるなど生活にも身近なものとなってきた。

 しかし水素療法自体は本来日本では伝統とも言える程に馴染みのあるものであり、最近になってから普及して来たとの考えには少々誤解がある。
 その理由は伝統的な湯治・温泉療法にあり、温泉といえば硫黄、そして硫黄泉に含まれる硫化水素にある。


換気の悪い浴場では硫化水素ガスで中毒を起こす場合があるものの、「痰の湯」といわれるとおり、このガスは痰を出やすくするので慢性気管支拡張症等に、また、炭酸ガスと同様に末梢毛細血管を拡張させるため、動脈硬化症やしもやけ、頸肩腕症候群等にも良いです。
また、 硫黄泉は、解毒作用があるため、金属中毒や薬物中毒にも利用され、慢性皮膚病、慢性関節疾患、慢性関節性リウマチ等にも良いとされます。

硫化水素泉の湯気を口から吸入すると痰の切れが良くなる効果もあります。
慢性皮膚病、慢性婦人病、切り傷、糖尿病、高血圧症、動脈硬化症、痛風、便秘、筋・関節痛、痔などに効果あります。

「硫黄泉」の特徴

 硫化水素には水素同様の強い抗酸化作用があり、そのため硫黄泉には古来から慢性疾患に対する効能があるとして治療に用いられてきた(活性酸素による悪影響を抑えるのは同様だが、厳密にはその作用機序は異なる)。
 また水素水がその飲用により抗酸化作用を発揮する様に、硫化水素含有の飲料や温泉水にも同様の効果が有るとされる。さらに長く湯に浸かると湯当たりもするため、硫化水素混じりの湯気のみを体に浴びる蒸し風呂や、蒸気を吸う治療法も有るとの事である。


一方、硫化水素イオンにはこのような有害作用だけでなく、健康に良い働きもあることが近年明らかになりつつあります。というのも、私達の体の中には、cystathionine β-synthase、cystathionine γ-lyase、3-mercaptopyruvate sulfurtransferaseといった酵素群によって硫化水素を生体内で産生するシステムが存在し、それが体に良い作用を示すことが分かってきたからです9)。硫化水素の善玉的側面については神経伝達の調節、血管平滑筋の弛緩、抗炎症作用、細胞保護作用など、特に2000年代以降、非常に数多くの報告がなされており注目を浴びています10)。我々の研究グループは、硫化水素イオン だけでなく、パースルフィド、ポリスルフィド(注2)などのようにイオウを含んだ反応性の高い分子群を総称して活性イオウ分子と呼び、その機能や有用性について現在研究を進めているところです11,12)。

硫化水素は毒か薬か?表裏一体の性質


 ただし硫化水素には周知の通り強い毒性という明確なデメリットが存在し、その強い腐敗臭も人によっては忌避されるものだろう。ただ通常の温泉入浴であればそうそう健康被害を受ける事もなく、硫化水素も濃度にさえ気をつければ治療効果の恩恵のみを受けられる(アトピー性皮膚炎患者の肌には長時間の硫黄泉入浴は少々刺激が強いかもしれない)。

ヒトは硫化水素を肺から吸入することよって曝露されますが、その毒性は強く、大気中の本邦における許容濃度(注1)は5 ppm(= 0.0005%)と設定されています5)。400 ppmを超えると生命に危険が生じ、700 ppmを超えると即死すると言われています1)。ヒトは卵が腐ったような特徴的な硫化水素の臭いを敏感に感じとることができますが(0.0005 ppmから臭いを感知可能)、気を付けなければいけないのは嗅覚を麻痺させる作用もあり、100 ppmを超えたあたりから臭いを感じなくなることが挙げられます6)。したがって、濃度が致死量を超えていても嗅覚で知覚できないケースもありえるのです。

硫化水素は毒か薬か?表裏一体の性質


 現代の水素水飲用や水素風呂といった水素療法は、古来からの湯治や温泉療法による慢性疾患治療を家庭にて安全かつ手軽に再現出来る治療法とも言えるだろう。そこにマグネシウム温浴等のミネラル温浴も併せれば、更に温泉療法に近い効果が得られると思われる。
 温泉療法が医療費控除を受けられるのであれば、同じく抗酸化作用による慢性疾患治療の効果が見込める水素療法においてもそれは適用されるべきだろう。


・追記
 観賞魚の薬浴に用いられるメチレンブルーに薬効が有るのは聞いた事があったが、まさか実際に点滴療法まで存在するとは知らなかった。
 酸化ストレスを軽減し脳障害すら治療するとなると、アレルギーやアトピーに対しても少なからず薬効が存在する事になる。

 ただやはり安全性において硫化水素同様に水素には劣る様であり、肌や体液が薄っすら青色に着色されるのも嫌と言えば嫌である。また細菌に対する殺菌作用を持つため、経口摂取を行うと腸内細菌叢に悪影響を及ぼす可能性も有る。
 一応水素療法が行えない場合の代替手段としては悪くないかもしれない(当然ながら用いるのは医薬品・USPグレードのものに限る)。


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