続・アトピー対策備忘録7: 体質改善5 (表皮除菌・腸内細菌叢・抗菌剤)
・IPMPによる手指殺菌の効果
浮腫みや痒みが除去療法とヒスタミン・コントロールにより改善したのに対し、依然手指の炎症のみ根強く残り続けていたが、IPMP(イソプロピルメチルフェノール)による殺菌・除菌によりようやく症状が改善してきた。
殺菌により明確に炎症が収まり始め、湿疹・汗疱の症状までも目に見えて改善した(恐らくはマラセチア菌の減少によるものだろう)。
患部の殺菌・除菌は前々から試してはいたが、エタノール・ポピドンヨード等では嫌気性細菌・真菌の殺菌・除菌には殺菌力はあれど、それぞれ皮膚刺激性や浸透性の低さにより使用に難が有った。IPMPは口腔内粘膜の洗浄にも使用される安全性、アトピー症状を増悪しない低刺激性、バイオフィルムにも浸透する性質と手指の洗浄にも適しており、何より昔からの竹酢液による洗浄でのアトピー改善例から来る信頼性も有った。
昨今皮膚科で流行りのプロアクティブ療法(ただステロイド薬等を予め塗布しておくのみ)等よりは遥かに効果的であり、そもそもそちらは自身でそれと知らずに実践して効果の低さを実感していた為、これ以後行う事も無いだろう。
…晴れてステロイド治療とも距離を置けるとなると、何とも清々しい気分ではある。
・腸内細菌叢の形成とアレルギー
中々に興味深い研究であった為、此方も併せて。
近年の研究では新生児への抗生剤使用により腸内細菌叢のバランスが著しく損なわれ、ラクトバシラス属細菌以外の腸内細菌をほぼ死滅させるという悪影響を及ぼしているとの事(上部リンクのアトピーに対する言及と一部矛盾するか)。
また帝王切開児も抗生剤を投与した新生児程では無いにせよ、腸内細菌叢の多様性が低くなるという。これらの影響から発症する疾患は消化管疾患からアトピー・花粉症等の各種アレルギー疾患、自己免疫疾患や糖尿病等多岐に渡る。
…アレルギーの根本原因としては胎児期から新生児・乳児期の腸内細菌叢の多様性低下、その発露症状は環境・体質・抗生剤接種の程度や時期に依存、となるとこれまでの考察や自身の症状とも矛盾しないと思われる。
思えばビオチン治療に何故酪酸菌の整腸剤が必要だったのか、その治療で何故鼻炎や腹痛までもが改善したのかの説明にもなっている(酪酸菌も抗生剤の投与によりほぼ死滅する)。
そもそも抗生剤は成人でも服用時に副作用を生じる様な強力な薬剤であり、それを生後間もない新生児に投与するとなれば同等かそれ以上の副作用を生じるのも無理もない話である。成人での副作用は主に胃腸障害、加えて感染症や皮膚・肝機能・腎機能・心臓・呼吸・血液の障害等で、将に似通った障害が生じてしまっている。
エリスロマイシンなどの抗生物質を処方する際には乳酸菌製剤(ビオフェルミン等)を併用する様であり、成人に対しては行っていた処置を何故新生児に対し行わなかったのかは全く想像も付かない。
結局の所アレルギーというより「抗菌剤による遅延性の副作用疾患」という薬害、であるとの認識が正しいのだろう(より重篤かつ有名な疾患としては「川崎病」が挙げられるか)。
上記リンクには「乳児期初期におけるClostridium difficile(クロストリジウム ディフィシル[現在の分類ではClostridioides difficile〈クロストリジオイデス ディフィシル〉])の腸内への定着がアトピー性皮膚炎の発症に関連する」とあるが、クロストリジオイデス・ディフィシル腸炎は通常では抗菌薬の使用後に発生する。
…ともあれ近年国内でも遅れ馳せながら疑似経膣分娩やプロバイオティクス・プレバイオティクスの投与、加えて糞便移植などの臨床研究も進んでいる様であり、エピゲノムや川崎病の研究と共に此方の研究もその進展に期待し推移を追っていきたい(糞便移植や疑似経膣分娩に比べ、プロバイオティクスやプレバイオティクスの接種は腸内細菌叢の多様性回復の効果も比較的低くエビデンスも不十分であるとの報告もあるが、胎児期の母体への乳酸菌接種や、乳児期の母乳による栄養接種と併せての乳児への乳酸菌接種は有効な模様)。
上部リンクは新生児に対して抗生剤投与を行う理由の一例として。これからはこういった予防治療のリスクも患者や妊婦に説明し対処していく必要があり、それを施さざるを得ないのであればデメリットを緩和する措置を併せて取る義務を医療者は負うべきだろう。
ただ帝王切開児に対する疑似経膣分娩ならともかく、抗菌剤使用に対しては糞便移植もプロバイオティクスも効果が充分とは言い切れず、抗菌剤は出来る限り使用を控えた方が良いと言わざるを得ない。
…アレルギーの衛生仮説というものも、当たらずも遠からずといった所だったのかも知れない。
下記リンクも参考として。
因みに下図はコロナ患者の腸内細菌叢の経時変化を表したグラフだが、特に意味は無い。