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虎の子日記 2時間一本勝負忍耐勝ち
実は私はバーテンダーのはしくれである。
BARといえばお酒の数だけ恋愛模様があるものである。
私のテーマは「モテる」なので、今日はある日の男性が女性を口説くワンシーンを書かせていただくことにする。
どうやらついさっき出会ったらしき男女が入って来た。ナンパか相席屋か、お互いを良く知らないらしいが、ゆっくり話しましょう、となったのだろう。
私はなぜだか自衛官の人を見抜ける。その男性は浅黒くお顔は爽やかで、Tシャツの下からのぞかせる腕はしっかりと筋肉がついている。25~28歳といったところか。一見普通の好青年だが、私にはわかる!絶対自衛官だ!1000円かけてもいい!なんて思いながらグラスを磨いていた。
女性はかわいらしく、清楚でおっとりしたイメージ。たぶん断りきれずにここまで連れてこられたのだろう。だか、悪い気はしていない様子。
ちょっと肌寒い日だったので彼は「温かいものを」と彼女の分をオーダーしてきた。彼はさわやかジントニック。
そして一杯目を飲み終わる前に二人分の二杯目をオーダーしてきた。
多分、グラスが空いて「じゃあこれで」と言われるのを恐れたのだろう、そのあとも次々とオーダーしてくるのだ。たくさん飲んでいただけるのはありがたいが、美味しい一杯を提供するのが仕事の身としては、温かいものは温かく、キンと冷えたものはぬるくなる前に飲んでほしいものである。
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二人の会話を聞いてみると「お仕事は何?家は近く?休みの日は何してるの?」とまあ、出会ったばかりの時によくある会話から、話が途切れると「いやあ〇〇ちゃん、ほんっと可愛いよね。ね?お姉さん」とこちらによいしょの相槌を求めてくる。そして温かいものもいい加減飽きられると思ったのか、「彼女に似合うキレイなカクテルをお願いします」とオーダーが入った。頑張って盛り上げようとしているのが痛いほどわかる。
そりゃあ、色がきれいなものとか、名前がきれいなカクテルとか、君の瞳に乾杯的なヤツとかいろいろあるが、彼女の好みだってある。
まださっきのホットだったカクテルもぬるくなって残っているのに、もうお腹ちゃぽちゃぽだろう、と察した私はショートカクテル(2,3口で飲みほせる量の三角のグラスのあれです)でアルコール度数の低いものをサーブした。
そして勝負は中盤。どうしても彼女と次の約束を取り付けたい、なんならこのまま結婚したい勢いの彼。明日の予定はどお?遊びに行ってみたいところない?と一生懸命なところがかわいくも思えて、次第に「がんばれ!」と応援モードになりながら、私はまたグラスを磨く。 (つづく)