【料理】平日を彩る鍋三昧
冬の我が家の献立はもっぱら鍋。多い時には週四で鍋。
家庭菜園でたくさん野菜が取れるので入れる野菜には困らない。共働きで帰宅してから料理を始めるから、すぐに作れる鍋は平日の常連だ。モットーは、レシピをチラ見しつつ、家にあるもので作ること。
すき焼き
ありがたいことにちょくちょく頂き物の牛肉が冷凍庫にあるので、すきやきをよくする。せっかくの牛肉を炒め物や煮物に使うのがなんだか惜しい気がして、
すき焼きは夫の好きな鍋ナンバーワン。わたしは生卵を食べないけど、おいしそうに食べているのを見るのが好きだ。
すき焼きを作るとき、一番のハードルになるのが、牛脂。牛肉があるとき、牛脂だけを手に入れるのが難しい。スーパーや肉屋さんで牛肉を買わないのに、牛脂だけを買うのはちょっと気まずい。その気まずさを味わうのも、すき焼きを作ろうと思い立ったのに牛脂がないからほかの献立を考えるのも、めんどくさい。
だから、牛脂なしで作ってしまう。なんなら、太ネギもない。ねぎは九条ネギの苗を植えたのが、幅1センチくらいのひょろひょろに育っているので、それを使う。
そんな感じで、あるものでおいしく食べる。そのぶん、おいしさをアップさせるための私なりの工夫がある。
すき焼きを作る用の両手鍋は、長年使っていて少しテフロンが剥げている。大学時代にスーパーで買った二人鍋にぴったりな赤い鍋。剥げているので、別にフライパンを用意する。そのフライパンに、食用油ほんの少し、牛肉、ネギを入れる。特にネギにおいしそうな焼き目が付くように、炒める。今から肉を食べるぞ!と気分の上がる香りがしてくるまでの間に、白菜を切って鍋に入れておく。焼き目の付いたネギと牛肉も、両手鍋に入れる。このとき、牛肉を炒めた油をちゃんと両手鍋に入れるのがわたしなりのポイントだ。みりん、しょうゆ、水を100mlずつ、砂糖を30グラムいれて、火をつける。白菜の芯が甘いすき焼き色に染まってきたら、糸こんにゃく(冷蔵庫にある時だけ)を入れる。糸こんにゃくがすき焼き色になったところで、春菊とすき焼き麩をいれたら、夫が、カウンターキッチンから、卓上IHに鍋を運んでくれる。うちの卓上IHはもう八年目くらいの古株。力加減が下手になったのか、保温にしてもぐつぐついう子だ。昔は、もう少しおとなしかった。
鍋を机に運んで、取り皿、おたま、おはし、それぞれの飲み物を用意して座るころには、麩がしみしみになっている。すき焼きの醍醐味だ。
煮込むうちにだんだん濃くなってくるすき焼きに白菜を足しながらゆっくりすき焼きを食べる時間は、ちょっとだけ特別な濃い空間だ。
坦々鍋。夫の好きな鍋2位(わたし調べ。献立を決めるときの声のトーンでわかる)。
担々麺のスープの少し薄いやつで、ひき肉と野菜を煮込む鍋。チンゲン菜を育てている。とってもおいしいチンゲン菜だけれど、自分で育て始めるまであまり買うことがなかった。昔飼っていたインコのおやつにしていて自分ではあまり食べたことがなかった。馴染みがないので、使えるレシピをぱっと思いつかない。適当に作って、味が想像できないのはちょっとした負担感になる。あたまを使う感じ。
勝手なイメージで、チンゲン菜は中華のイメージがある。もちろんそれ以外でもおいしいけれど、なんだか中華丼とか、担々麺に入っている絵面が似合う。このイメージから、私が作るチンゲン菜を使ったレシピは、中華丼もどきか、坦々鍋に落ち着く。冒険はしない。
坦々鍋もすき焼きと同じように、両手鍋とは別にフライパンを出す。ごま油、合いびき肉、しめじ、にんにく、しょうがをいれて肉の色が変わるまで炒める。肉とにんにくの大好きな夫はいつも「お~!」と嬉しそうな声を上げる。辛い物好きなので、チューブの豆板醤、コチュジャンは常備されている。わたしよりも辛い物が苦手な夫が食べられるぎりぎりの豆板醤を入れるのが、坦々鍋の一番のポイントだ。豆板醤とお肉が混ざったら、両手鍋に入ったチンゲン菜と大根に、肉と油を降らせる気持ちでドサッといれる。煮込みながら、シャンタン小さじ1、味噌大匙1をいれる。シャンタンと味噌には、それぞれ専属の軽量スプーンがあるので、その量を入れてしまってから、砂糖、料理酒、ラー油で味を調整する。豆板醤、にんにく、しょうが、肉の量で、いつも少しずつ味が違うのも、おうちごはんだから美味しければ味になる。大根にお箸が刺さるようになったら、すりごまをたっぷりふりかけて、卓上IHに運んでもらう。スープがしみ込んだ大根は、それだけでお酒が進む。
でも、坦々鍋のメインは、大根でも肉でもなく、雑炊だ。野菜に纏いきれなかったお肉をぜんぶ、スープを吸って太ったお米とふわふわの卵がつかまえてくれる。雑炊をおいしく食べるために、野菜はひかえめに。ほろほろになってくずれた大根がときどき混ざっているのがいい。
コロナ禍でマスク生活になったので、にんにくマシマシもアリ。冬鍋一番のあったまるメニューだ。
これからの見通しはあんまりなくて、このふたりぐらしをいつか懐かしく思う日が来るのかもしれない。二人暮らしが続いても続かなくても、歳を重ねれば、ちがってくることもあるかもしれない。きっと今しか書けない、いまのふたりぐらしの鍋ランキングナンバー2。
おいしいもので、心を満たす。特別なことがなくても、献立は毎日ちがう。平日の幸せはごはんで作る。