休学に際した備忘録
休学に至る理由はさまざまありますが、休学の手続きはどこの学校も概ね同じです。私はかなり手間取ったので、後続の人間にも同じ苦しみを味わってほしく筆を執りました。
すべきことはそれほど難しくはないので、これから書く通りに実行していけばあなたはいつのまにか休学していて、愕然とすることになるでしょう。
①材料の購入
たとえば料理なら、まずは材料を購入しなければなりません。休学でもそのような工程は存在します。
殆どのスーパーでは調味料コーナーに、豆板醤、豆鼓醤、甜麺醤が売っています。とうばんじゃん、とうちじゃん、てんめんじゃんと読むこれらの調味料は中華味噌のようなもので、豆板醤は辛味、豆鼓醤は旨味、甜麺醤も旨味に優れています。日本の味噌はあまり合わせて使いませんが、中華料理ではこれら三種をまとめて使うことが普通です。
大手会社のチューブのもので構わないので、これらを購入。あと香味ペーストも。
さらに、花椒(ホアジャオ)も購入しましょう。花椒は売ってないスーパーのほうが多い気がしますが、売ってるところは売ってる。探すのが面倒ならAmazonとかにもあるのかなあ。でも市内のスーパーを駆けずり回ってみるのもちょっと楽しいよ。
地場コーナーに唐辛子があれば購入。なければなんかよさそうなやつを買ってくれ。
あとは適当に白ネギ、赤ワイン、豆腐、豚ひき肉を購入。肉をいっぱい買ったほうがうれしい気持ちになれる。
みたいな感じでね。
休学の場合、まずは学務かチューターの教授に休学したい旨のメールを送ると必要書類を教えてくれる。その書類を学生課を走り回って集めたり、もしくはAmazonで頼んだりすることになるだろう。
②下ごしらえ
面倒なのであまりしない。最低限、豆腐をキッチンペーパーで包んでレンチンすると豆腐に味がよく染み込んでおいしい。そのくらいだ。冷凍のひき肉を買っていたなら自然解凍するとちょっとパサパサがマシになる気がするから、するべきだ。
休学でいうとチューターに休学の旨を懇切丁寧に伝える部分だ。私は数往復のメールが必要だった。うんざりしたなぁ。
③火付け
エルデンリングの初期祈祷だ。消費が少なく射程も短いカスみたいな祈祷だが、ほとんどの祈祷は発動に時間がかかりすぎて全く使えないので対人での採用率は高い。
中華鍋、なければ大きめのフライパン、それもなければ大きめでないフライパンかその他の鍋を強火にかけ、油を敷く。ごま油があると中華っぽい匂いがしてテンションが上がる。中華料理全般に言えるコツだが、油はめちゃめちゃ入れる。完成した料理の油をそのまま飲むわけではないし、揚げの美味しさが重要な場面も多々あるので、素直に大量に入れるべきだ。
今回もそうだ。まず唐辛子を投入する。味付けではなく匂い付けなので、大量に投入してもいい。むしろ、しっかり油で揚げ焼きにするほうが大切だ。そのあと、ネギも刻んで入れよう。唐辛子よりは焦げやすいからだ。いい匂いがして満足したら、豆板醤、豆鼓醤、甜麺醤を投入。味が薄いといけないので大量に入れるべきだ。少し焦げるといい匂いがするが、味噌なのですぐに完全に焦げる。タイミングは何度か使えばすぐに覚えるので、初回は失敗しても気を落とすべきではない。ことによっては私とあなたの大学生活がうまくいかなかったことにも同じことが言えるのかもしれない。
あとひき肉も投入する。パックのひき肉の場合、形を崩さないまま5秒ほど放置するといい感じに焦げ目がついてうれしい。
休学でいえば、手に入れた書類に筆をつけるところが相当するだろう。休学に至る理由とか事細かに聞かれるから、ここが山場かもしれない。麻婆豆腐でもこの部分が明暗を分ける、いわば山場だ。あと書類に保護者のサインが必要だから、いいかげん郷里の親に電話をかけるべきかもしれない。
④煮る
具を適当に混ぜ、適当に豆腐を切って投入したら、酒、みりん、醤油をめちゃめちゃ入れる。鍋の大きさが許す限りだ。俺を信じてくれ。
入れたら、ここで香味ペーストを投入する。パッケージを読むと大量に入れる感じで書いてあってビビるが、パッケージの通りに大量に入れるべきだ。
あとは味が均等になるよう適当に混ぜたり、具材が底に焦げ付いたりしないように適当に混ぜたりする。これら2つの操作は同じだ。
気分によってはこの段階で胡椒を降ってみてもいい。その他、あなたは何をしてもいい。常に自由だ。よかったね。あとネギの青い部分がネバネバして刻みづらい場合、適当に切ってここで投入するべきだ。そうじゃないなら忘れてくれ。
さっき書いた通り山場は越えているから、酒を飲みだすのもいい。落語にもあるが、人は匂いで酒が飲める。証明しよう。
休学なら各所に送ったメール、提出した書類の審査をやきもきして待つ段階だ。書き忘れていたが待ち時間はどうにもならないから、早めに休学手続きに取り掛かるべきだ。
⑤仕上げ
強火でフタをせず待っていると、思いの外すぐに水分が蒸発する。いい感じに鍋の内容量が減ったら豆腐の切れ端とかをちょっと味見してみて、味が染みていたら次の工程に移ろう。
匂い付けにごま油を多少振り、よく混ぜる。
邪道に思えるが、ラー油などを入れても美味しい。
片栗粉と水を小さな皿に入れ、指で溶かして少しずつ入れる。片手で入れつつ、もう片方の手に持った菜箸で鍋を混ぜたい。厳しければ無理はしないでいい。
うまいこと固まったらうまい。多少均等でなくても味は変わらないから気を落とすな。
さて、ここで花椒を振る。胡麻や胡椒のように砕かなければ匂いが出ない食材だから、ペッパーミルとかがあればいいのかもしれない。うちにはないので俺は毎回拝むように両手を擦り合わせて砕いているが、それで不便を感じたことはない。
あとは刻みネギを乗せて完成。やった〜〜!
休学?休学はもうやることないよ。書類が承認されたら休学できたってことだし、リジェクトされたら今期は休学失敗。半年かけて理由とかまた考えてくれ。各所にお礼のメールとか送るべきなのかもしれないが、俺に急かされて送るメールに誠意はあるのか?ちな俺はたぶん送ってない。そんな社会性があれば休学してないってね。
さ、休学のことなんか考えても気が滅入るだけだ。
ちょうど麻婆豆腐も完成したことだし、麻婆豆腐でワインを飲もう。赤ワインは安くてもだいたい美味いし、意外にも中華料理にめっちゃ合う。
一説には幸福という熟語の語源は、酒と麻婆豆腐を意味する古代シュメールの言葉らしい。
そういうことなんだ。