羽田空港第2ターミナル
これまで海外には何度も行った。アジアの航空会社ばかり乗ってきた。安いからだ。だが、9月末に私はなんとANAに搭乗した。格安航空と比べたら10倍以上の値段がつく。
自腹なら選ぶことはない。だが私は海外駐在員。会社負担でANAまたはJALでの一時帰国が認められている。年1度のみだが、それでも十分嬉しい。管理職は年3回らしい。比べると悔しい。ありがたみを忘れてしまいそうだ。だから管理職の一時帰国自慢話はできるだけ聞かないようにしている。
国慶節休み初日に、初めてのANA便で上海から羽田へ移動した。だが深夜便のためとにかく眠かった。機内食も機内映画も楽しめなかった。だから、お休み終わりの羽田から上海への渡航を楽しみにしていた。
ANA便は、羽田空港の第2ターミナルから出発する。私はこれまでアジア各社が集う第3ターミナルばかりだった。だが今回は第2。ほとんどがANA便という、お金持ちが集う贅沢な空間だ。
ついた途端、感動した。ハイテクなのだ。機械で自動チェックイン、荷物預けもセルフ。機械もおもてなしが上手で、お礼や丁寧語が並んでいる。私はオンラインチェックインもしてるからスムーズだ。と思ったが、違った。チェックイン機が謝罪の言葉を述べたのだ。
エラー。有人カウンターに慌てて並んだ。だが行列。あーどうしよう、時間がもったいないときょろきょろした。そうしたら、掲示板が目に入った。行先「那覇」。あれ、ここは国内線のロビーだったようだ。
国際線の文字の上部に書かれた矢印に従うこと500m。またセルフチェックインカウンターに行きついた。今度こそ。と思ったらまたエラーだった。近くにいたANAのポロシャツにシニョンヘアの同い年くらいな方に聞いてみた。「お客様、恐れ入りますが、こちらは国内線専用です」。空港は広い。国際線はもっと先だった。
ついに国際線ロビー行きのエスカレーターを見つけた。迷ったからこそ、たどり着いた時の感動が大きかった。とポジティブに捉えた自分に驚いた。休暇中家族や友人とたくさん喋ったから心が広くなっているんだな。
国際線ロビーは、美しかった。大きな窓から海と飛行機がぱーっと広がっている。ロビーは人が少ないから、外の景色と差し込む光がダイレクトに私に届く。いつか旦那と一緒に飛行機乗るときは、このターミナルがいいな。日差しが明るい午前中を狙いたい。ママにもこの景色を見せたいから、お見送りにきてもらおう。
しばらくロビーで外を眺めていたかった。だがロビーなら、航空券が無くても来れる。せっかく会社負担でANAのチケットを持っているのだから、早く中に入ろう。そう思うと同時に、ANAのスタッフさんが案内をしてくださった。チェックインを一瞬で済ませ、検査場へ。非接触だからスムーズで、「え、もう終わりですか?」と聞いてしまった。中国国内線だとこうはいかない。前進をべたべた触られ、傘や充電コードもカバンから出す必要がある。
中に入った。こじんまりした免税店は、私にとってすごく良いラインナップだった。まず、SHIROがある。香りを試した後、ヘアオイルを即購入した。後日談だが、このヘアオイルは台湾にて友人の結婚式参列の際にプレゼントした。そして、Ukaもあった。マニュキュアが欲しいけれど、色をじっくり選びたいから今度購入することにする。試してみたかったMIKIMOTOのコスメも接客いただいて満足度が高い。
SENSAIというコスメブランドを初めて見た。インスタで検索したところ、欧米のインフルエンサーが多数紹介していた。インバウンド向けの商品なのだろう。消費者目線でない考察をしてしまった。この視点を活かしながら生きていきたいものだ。
さらに奥へ進むと、お寿司を握ってくださるお店があった。他にも、黒毛和牛の焼肉風丼ぶり4,500円や、蔵王地養卵の卵かけごはん950円など。安いとは言えない。だが絶対においしい。コスパは良いのだろう。いつか一度だけ食べたい。支払いはキャッスレスのみとのこと。よく「日本はキャッスレスが遅れている」と耳にするけれど、決してそんなことないと思う。サービス側はとっくにキャッスレスで、変わっていないのは財布を胸ポケットにいつも入れているおじさんたちだ。
さらに進んだ。ドラッグストアで日焼け止めを買った。日本の味も最後に楽しもうと思った。私が選んだのは、麦茶だ。160円、空港で買えるものにしては安い。大切に一口飲もうとキャップを開けた。その瞬間、空港内放送から私のフルネームが聞こえた。小走りで指定のゲートに向かうと、スタッフさんはまず開口一番、「お呼び出し失礼しました」と。なんて丁寧なんだ。ANA、素晴らしい。「ビザの確認をよろしいでしょうか」と、簡単な内容かつ一瞬で済み一安心。
ただこの放送のせいで、同便で上海へ戻るおじさん同僚に私の存在がバレてしまった。呼び止められた。私はすっぴん×私服だったが、仕方なく近づいて世間話をした。おじさん同僚は免税店微妙と言っていた。私はそんなことないと思いますけどねー化粧品買いましたー私お菓子も買ってきますーと適当に交わして逃げた。私は仕事とプライベート分けたい派だ。だからせっかくの休暇最終日、同僚なしおひとりさまで搭乗したいのだ。きっとおじさんたちが求めているのは、「そうですね」と賛成を示して傍でにこにこお話を聞く女性だろう。でも私は嫌だから、逃げた。
搭乗直前におにぎりの150円自販機を見つけた。今度こそと心に誓い、搭乗した。空港はわくわくする。飛行機にたくさん乗る人生にしよう。
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