3:最もユーザー数の多いぽっちゃりの言い訳
わたしが痩せられないのは、人よりたくさん食べているからです。
高カロリーなものを山ほど食べ、けれど野菜はまったく食べず、運動だってまるでしない。
太りやすい体質というわけでもなく、太ってしまう病気に罹っているわけでもなく、ただただ純粋に食べすぎることによって体重を80キロまで増やしてしまったのです。
そんなわたしが出会ってしまったのは、この日本で最もユーザー数の多いと思われる、もはや定型文と化したぽっちゃりの言い訳。
「私、食べていないのに太るんです。水を飲むだけで太るし、息をするだけでも太ってしまうんです」
ぽっちゃりは往々にして言い訳がましく、わたしも「痩せないための言い訳」なら体にたくわえた脂肪細胞の数と比例するほど多く持ち合わせています。
わたしの今まで使ってきた言い訳すべてを本にするなら、全7巻計11冊のハリーポッターシリーズに負けず劣らずの文字数になるでしょう。
そんなわたしが、新しく使えそうな言い訳に飛びつかないわけもありません。
けれど、無策でほいほい使うわたしではないのです。
わたしはこの古きよき王道の言い訳を、本当に使い勝手のいいものなのか全身全霊全力をかけて精査することにしました。
まず「食べていないのに太る」について。
これはちょっとムリがあります。
食べていないのに太るのは、妊婦さんや、太ってしまう病気の人、または体重の増えてしまう副作用のある薬を飲んでいる人くらいのものです。
けれど、気持ちはわからないでもないのです。
わたしたちぽっちゃりは満足するほど食べていないのに太るし、思ったよりは食べていないのに太っているのですから。
次に「水を飲むだけで太る」について。
これは、太るというよりは別のパターンでしょう。
皆さんは、炭水化物という名の物質を知っていますか?
そうです、あの有名な1グラムにつき3グラムの水分をたくわえるという、お米やパンに多く含まれているあれです。
ぽっちゃりは炭水化物が大好きで、いつもいつでも菓子パンやピザ、ハンバーガーにポテトチップスなどを片っ端から吸い込んでいきます。
そして喉が乾いたなあ、と水を飲む。
すると当然、吸い込んだものの3倍の重さの水分が炭水化物と結びつき、体のなかで溜まることになるのです。
人はこれを「むくみ」と呼び、特に顔につくそれを蛇蝎のごとく嫌っているのです。
さらに、水を飲むだけで太るの難点はもうひとつあります。
それはぽっちゃりがジュースを水として換算していることも多いという点です。
ジュースを水として飲んでいる時点で、この「水を飲むだけで太る」というセリフは詭弁と化し、まったく使えないものになってしまいます。
水はゼロカロリーだからこそ、水を飲むだけで太るという同情を誘うことができるのです。
なのに糖質たっぷりの、カロリーのあるジュースを飲んでしまえば「太って当たり前では?」と痛いところを突かれるだけでおしまい。
水を飲むだけで太る、という言い訳は現実的ではありません。
少しダイエット知識のある相手に使えばすぐに論破されてしまいます。
最後に「息をするだけでも太る」について。
完全にアウトです。地球上には息をするだけで太る生命体はおそらくいないのですから。
しかもこの息をするだけでも太る、という言い訳。
逆にぽっちゃりのだらしない食生活を浮き彫りにするという危険性すらあるのです。
ぽっちゃりは、息をするだけでも太ることはありません。
でも、息をするように間食をして太るのです。
自分でも気づかないうちに、チマチマちょこちょこ食べ物をつまんで、さらには食べたことすらすっかり忘れてしまう。
そのことを指摘されたら、もうしどろもどろになるしかできなくなるでしょう。
以上の点から、わたしはこの言い訳を「使えない」と判断しました。
けれどもうひとつ、見つけておいた言い訳があるのです。
それは「太りやすい体質だから仕方ない」というもの。
これなら、他人から見てわたしの体質なんてわからないですし、使い勝手もいいですよね。
というわけで、冒頭の言葉は忘れてください。
わたしは太りやすい体質だから、太っているのです。