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万年筆、はじめました。


すきだと思ったら止まらない。留まることができず、没頭してしまう。「そうだ、自分にはこういうところがあるんだった」と年の瀬にむかう今、手元とにらめっこしながら過ごす。
 

2024年の9月、万年筆をはじめました。


ピカピカの万年筆を購入し「どうしよう、なんて高価な筆記具を買ってしまったのだろう」と手にとる度キャップを開ける度ドキドキハラハラしていた。心から身分不相応である、と思っていた。

最初の万年筆・SHEAFFER


けど、それも今は昔。

三か月が経った今、手元にはいつのまにか20本をこえる万年筆がある。

詳細な数は今も確定していない。


自分でもよくわからないうちにこのような状態になった、というのが体感だった。周りの方は口を揃えて「急にどうして?」と問うけど、わたし自身が一番「どうして?」と思っているから問われる度に口ごもってただ笑うだけになる。

そんな、「よくわからないうちに万年筆をはじめて、よくわからないけどすきになってしまった」というお話をほんの少し、なんだか2024年のうちにまとめておかないと後悔する気がしてすべりこみでまとめてみることにした。



万年筆という未知


これまで周りに使用している人もおらず、しっかり眺めたことのない縁遠い存在だった万年筆。筆記具なのに高いらしい、という漠然としたイメージがあるくらいで、知らないこと・分からないことは総じて怖い。
字を書くこと自体や手帳を書くことは昔からすきだったけど、いつもなんとなく選んだ細めのボールペンを使用していた。

昔の手帳たち
気になった単語を書き残しておいたり、
読んだ本で目に止まった箇所を書き留めたり。


そんな状態から、幾人かの師より教えを受け、転がり落ちるように万年筆を好きになっていった。今も転がっている最中なので、正直に言うとどこからどう書けばいいかわからない。「万年筆は増える」という事実だけが唯一断言できることで、毎日たのしく、けど頭を抱えながら生活している。

今年の10月29日時点の計画表。計画通りにはいかない。


万年筆でなければならない?


写真においても、大多数の人が持つスマートフォンで撮ることができるのに、あえてカメラを使う人がいる。わたしにとっての万年筆もそれと同じだった。ただ字を書くだけなら、鉛筆もシャープペンシルもボールペンもなんだって安価に手に入る現代。それでも万年筆がいい、万年筆ならばたくさん書きたい、と思わせてくれる力がある。

だいたい大したことは書いていない


どんなカメラでも写真は撮れるけど「このカメラだから持ち出そうかな」とか、「このレンズだからこう撮ろう」みたいな積み重ねの上に「このカメラとレンズで写真を撮ってきたから撮れた写真」みたいなものがあって。撮ることがたのしいと思えるカメラがあると写真をたくさん撮るようになり、同じく書くことがたのしくなる万年筆があるとたくさん書きたくなる。
あとは単に「シャッターを切っていて気持ちがいい」と同じように「書いているだけで気持ちがいい」という部分も大きい。どちらも細やかな振動を伴うところが共通点ではある。

たくさん購入する必要はある? 


とは言え、一つあればいいのではないか?というのはわたしも当初思っていたところではある。
これはもう言い訳にもならないのだけど「すべて違う万年筆だから仕方がない」としか言えない。実際日常の中で使ってみないとわからないことがたくさんあって、そのあたりもまたカメラと似ている。

みんな違う


また、この3ヶ月の中で、ある万年筆を手に取っていくつかの気付きを得て、ならば次はこういう万年筆がいいのではと繋がっていく、みたいなことが何度かあった。

とりあえずにはなるけれど、そんな「気付き」をくれた万年筆を初心者なりにいくつか書き残しておきたいと思う。
もし、特に万年筆に興味がないにも関わらずここまで目を通してくださった奇特な方がいたとしたら、写真だけでも眺めていただけると幸いです。


個人的ターニングポイントとなった万年筆 5本

①SHEAFFER COFFEE EDITION 細字

最初の万年筆はどうしても外せず。何もわからない状態で足を運んだ文具店で出会い、「限定品」「当店在庫一本限り」というポップに踊らされた結果「ええいままよ!」と清水の舞台から飛び降りるくらいの気持ちで購入したのだけど、この一歩がとても大きいものだった。購入していなかったら、万年筆のたのしさにここまで突き動かされることはなかったと思う。こんなにも色々なプロダクトがあり、手の中・生活の中にあるだけでときめいてしまうものである、ということを教えてくれた。

コーヒーを想起させる、絶妙なグラデーション
するする書ける、海外製らしい気持ち太めの細字


②PILOT カスタム823 太字

(ブラウン)

中古で購入したはじめての万年筆。すこし強い万年筆、いわゆるフラグシップモデルで、定価は手が届かないけど中古ならなんとか………と背伸びしてお迎えしたもの。大きなニブ(ペン先)や特殊な吸入方式など揃う要素すべてにわくわくする。そして太字は意外と使いたいタイミングが多く、助かる。
この購入を機に、中古の製品でも状態によっては割と大丈夫なんだな、と味をしめたように思う。

インクの濃淡を存分に楽しめる、太字
比較すると「おっきいな!!」となる
使用時は尻軸をすこし開ける、という作法がある


③PLATINUM #3776センチュリー 細字

(ブルゴーニュ)

今年はじめて知ったメーカーのひとつであり、今となっては一番身近に感じている「プラチナ万年筆」さんで、はじめて購入した万年筆。多分この万年筆を購入していなければ、今ほどの状況には至らなかった。「万年筆ってあまりにもメーカーごと、さらには製品ごと、字幅ごとに書き味が全くの別物」であることについて、鈍器で頭を殴るくらいの衝撃をもって気付かせてくれた。ただ線を引くだけでたのしい、と思えたのははじめてだった気がする。

今、一番テンションが上がる「p」のマーク


④PLATINUM シープ 美巧 細字

(Epoi zacca万年筆 ベージュ) 

メルカリを眺めていると、見知ったブランド名「Epoi」と見たことのあるベージュの革をまとう万年筆が。よくよく調べると、ここ7年ほど使用しているお財布と同じ革の万年筆らしい。書き味に関しては師匠のお墨付きもあるし、と迷わず購入してしまった一本。この書き味がまたとても好みで、おそらく現在使用頻度の最も高い万年筆となっている。

なお、その後ポーチ(右上)も増えた
コンパクトなニブが好みであると気付く
キャップリングには「Epoi」とだけある

※このコラボ万年筆は中字のみの発売だったため、おそらく前オーナーが中身を細字のものと取り替えたと思われる。

⑤PLATINUM #3776センチュリー 中字

(ニースロゼ)

購入して間もない万年筆。③と同じプラチナ万年筆のブランド「センチュリー」ではあるのだけど、字幅と軸の素材などが違うもの。数日前に手に入れた一番の新入りではあるものの、細字と中字の異なる書き味や、軸の素材がとても持ちやすく書きやすいことなどから、今後の個人的なスタンダードになることを確信している。

ほんのりざらり?さらり?とした軸の質感が持ちやすい
実際の色に一番近い写真、ピンクゴールド


おわりに


いつか「こんな年もあったね」と笑えるようになれたらいいな、という願いを込めて書いている。こんな風になってしまう要因には、やはりどこか心に隙間があってそれを埋めようと必死だった、というごくごく個人的なものがあったりもする。ただ、その隙間はわたしの問題であり、隙間をどうやって埋めるか決めるのもわたし次第。万年筆と出会わせてくれた方への感謝と、万年筆をすきだと思うに至る道を歩んできた過去の自分に対してもすこしだけ感謝している。

ほかにも「2ヶ月でインクを20種類くらい購入した結果、ミクサブルインクで調色するに至った話」や「万年筆に合うノートを探し求めたら10冊運用になった話」もあるけど、それはまたいつかの機会に。

いくつになっても、いつどんなときでも、生きることがたのしいと思える何かに出会える。そんな自信をくれた3ヶ月だった。

2025年は何をはじめようか。



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