最近読んだ本の話 vol.68
「最近読んだ本の話」の第68弾です。今日は朝から暑くてすでに室温が30℃です。もう夏なんだなあ。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。
1、堂場 瞬一『0 ZERO』
「すごい原稿がある」――ベストセラー作家が死の間際に残した一言より始まった原稿捜索。しかしそれは、出版業界を揺るがしかねないパンドラの箱だった……「創作」の倫理をも問う問題作! -Amazonより引用-
主人公の古谷は、親交のあった大作家・岩佐の葬儀で長男から未発表の原稿の捜索を頼まれる。仕事場で捜索をしていたところ、長男から著作権の継承者が遺言書で自分たち家族の知らない女性になっていると聞き…。その女性は作家とどういう関係だったのか?未発表の原稿は見つかるのか?先が気になって読みました。途中から盗作の疑惑が出てきて、不穏な空気が漂い、息が詰まるような展開に…。はらはらしながら最後まで読みました。
2、砂川 文次『ブラックボックス』
第166回芥川賞受賞作!
ずっと遠くに行きたかった。
今も行きたいと思っている。
自分の中の怒りの暴発を、なぜ止められないのだろう。
自衛隊を辞め、いまは自転車便メッセンジャーの仕事に就いているサクマは、都内を今日もひた走る。
昼間走る街並みやそこかしこにあるであろう倉庫やオフィス、夜の生活の営み、どれもこれもが明け透けに見えているようで見えない。張りぼての向こう側に広がっているかもしれない実相に触れることはできない。
気鋭の作家、新境地の傑作中篇。 -Amazonより引用-
砂川さんの作品を読んだことがなかったので、どんな内容なのか気になって読みました。自転車便の仕事をしている主人公のサクマは、いつまでこの仕事ができるのか、この先どうしたらいいのか、と日々考えながらも、自転車に乗って鍛えてスピードを上げて、自転車のメンテナンスも自分でやって、という毎日を過ごしていました。サクマは怒りの感情を暴発させてしまって、口論やつかみ合いになって仕事を何度か辞めていたので、何も起こらないといいんだけどなあ、と思いながら読んでいましたが、途中から刑務所での生活が描かれていて、何かしてしまったんだとわかりました。サクマがこういうところが気に入らない、という人の言動や態度や行動は、確かにそれは嫌だと思うようなことで、そういう時自分はどうやり過ごしてたかな?と考えたりしました。木工の作業で工具を扱うのが上手いとわかって、そういう仕事が向いていそうなサクマが、この先暴発せずにいられたらいいなあ、と思いました。著者の他の作品も読んでみたいです。
3、伊与原 新『オオルリ流星群』
見えない星が、人生の幸せを教えてくれる。
「あのときのメンツ、今みんなこっちにいるみたいだぜ」「まさか、スイ子か? なんでまた?」スイ子こと、山際彗子が秦野市に帰ってきた。手作りで太陽系の果てを観測する天文台を建てるというのだ。28年ぶりの再会を果たした高校時代の同級生・種村久志は、かつての仲間たちと共に、彗子の計画に力を貸すことに。高校最後の夏、協力して巨大なタペストリーを制作した日々に思いを馳せるが、天文台作りをきっかけに、あの夏に起きたことの真実が明らかになっていく。それは決して、美しいだけの時間ではなかった。そして久志たちは、屈託多き「いま」を自らの手で変えることができるのか。行き詰まった人生の中で隠された幸せに気付かせてくれる、静かな感動の物語。 -Amazonより引用-
高校の同級生と今再会したらどんな感じなんだろう?高校・大学ぐらいの頃に一生の仕事を決められる人もいるんだよなあ、と物語から脱線して考えたりしながら読み進みました。
秦野市にある高校の同級生たちの28年後の物語です。高校最後の夏に空き缶を集めて巨大なタペストリーを制作した仲間たちは、45歳になりそれぞれの人生で思い通りにいかなかったり、これからどうしていけばいいのか悩まされていたり、新たな夢を見つけて一歩踏み出したり、様々な状況に直面しています。そんな中、秦野市に彗子が戻ってきたと聞いて、地元にいる久志と修と千佳は、彗子に会おうと知人に頼んで再会したところ、彗子は手作りの小さな天文台を建てるために帰ってきたと知って…。3人は、場所探しから中古の天体ドーム探し、階段を作ったり床を張り替えたりの工事など、彗子に協力します。昔の同級生にも声をかけて協力してくれる人が増えていき、高校最後の夏を超える夏になっていって…。
彗子に協力する仲間たちの気持ちがわかるというか、もし私の身近に何かを始める友人がいたら、何でも協力したいと思うような気がするなあ、と読みながら思いました。自分では踏み出せない一歩を、友人に協力することで踏み出せる、人生の何かを変えられると思うからかもしれません。
「最近読んだ本の話」を書くことができました。読みたい本が山盛りあってなかなか進みませんが、今週は書けてよかったです。最後までお読みくださってありがとうございました。