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最近読んだ本の話 vol.103
「最近読んだ本の話」の第103弾です。紫陽花が満開になりました。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。
1、村山 由佳『Row&Row』
漕げよ、漕げ(ロウ・アンド・ロウ)、 あなたの舟をーー
夫婦の歪みと「再生」を高解像度で描く、デビュー30年にして到達した恋愛文学の極致。
東京の広告代理店に勤める43歳の涼子は、3歳年下で美容師の夫・孝之と結婚して13年。毎日の生活にうっすら不満を抱えつつ、表面的には凪いだ日々を送っていた。ところが、20代の美登利を美容院のアシスタントとして招き入れたことで少しずつゆらぎが生まれて......。気づかぬうちに"深い川"に隔てられた二人は再び漕ぎ寄ることができるのか? 夫婦、そして、男と女の心理を細密に描き出した傑作長編。週刊誌「サンデー毎日」の人気連載がついに単行本化!
主人公の涼子は東京の広告代理店で働いていて、毎日忙しく、帰りも遅くなります。夫・孝之は自宅の1階で美容室をしています。孝之が趣味の自転車のライドに出かけた時に出会った20代のネイリストの美登利を美容院のアシスタントにしたことで、様々なことが起こって…。
涼子の夫に対する気遣いと、夫婦のかみ合わないやり取りが、こういう感じあるよね!と思って親近感が湧き、涼子の味方になった気持ちで読んでいました。夫が浮気してそれを知った時、自分だったらどうするだろう?何か言ってやりたい、と思うだろうけど、取り乱すのは悔しいという涼子の気持もよくわかる気がします。とても分厚い本ですが、この2人はこれからどうなるんだろう?と気になって、ぐいぐい読めました。
2、ベルンハルト・シュリンク『別れの色彩』
年齢を重ねた今だからわかる、あの日の別れへの後悔、そしてその本当の意味を――。男と女、親と子、友だち、隣人。『朗読者』で世界中の読者を魅了したドイツの人気作家が、「人生の秋」を迎えた自らの心象風景にも重ねて、さまざまな人々のあの日への思いを綴る。色調豊かな紅葉の山々を渡り歩くかのような味わいに包まれる短篇集。
9つの物語が収録されています。1話目は、かつて自分が得たい地位のために友人が外国に逃亡することをバラしてしまった男が、何十年も経ってから友人の娘に秘密を知られそうになり何とか阻止しようとして葛藤する話です。どの話も後ろめたい過去があるような、主人公の葛藤する気持ちが克明に描かれていて、話に引き込まれます。こんなことがあったら何をしてても落ち着かないだろうなあ。
3、五十嵐 律人『魔女の原罪』
法律が絶対視される学校生活、魔女の影に怯える大人、血を抜き取られた少女の変死体。
一連の事件の真相と共に、街に隠された秘密が浮かび上がる。
僕(宏哉)と杏梨は、週に3回クリニックで人工透析治療を受けなければならない。そうしないと生命を維持できないからだ。ベッドを並べて透析を受ける時間は暇で、ぼくらは学校の噂話をして時間を潰す。
僕らの通う鏡沢高校には校則がない。ただし、入学式のときに生徒手帳とともに分厚い六法を受け取る。校内のいたるところには監視カメラが設置されてもいる。
髪色も服装も自由だし、タピオカミルクティーを持ち込んだって誰にも何も言われない。すべてが個人の自由だけれども、〝法律〟だけは犯してはいけないのだ。
一見奇妙に見えるかもしれないが、僕らにとってはいたって普通のことだ。しかし、ある変死事件をきっかけに、鏡沢高校、そして僕らが住む街の秘密が暴かれていく――。
主人公の鏡沢高校2年生の宏哉は、同じクラスの杏梨とともに、週3回人工透析治療を受けています。1回に4時間かかり、その間に宏哉と杏梨はいろいろなことを話します。彼らが住む鏡沢という街は何か秘密があるようで、不穏な空気が物語の序盤から漂っていました。ある日、女子硬式テニス部の更衣室で財布が盗まれて、その場で犯人として1年生の男子がつかまります。宏哉はそのことでいくつかの疑問を感じ、独自に調べ始めるのですが…。
めっちゃ怖い何かがありそうで、こわごわ読み進みました。最後の方で、そこまでするのか!という驚きの真相が明かされます。私が気が付いた五十嵐さんの作品の特徴の1つは、主人公が困難な方の選択をする、ということです。宏哉も厳しい方の選択をしました。すごい覚悟と強さです。
毎日蒸し暑くなってきましたが、この週末はいいお天気のようで雨が降らないだけでもうれしいです。最後までお読みくださってありがとうございました。