最近読んだ本の話 vol.123
「最近読んだ本の話」の第123弾です。寒さが本格的になってきました。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。
1、高瀬隼子『いい子のあくび』
3篇の物語が収録されています。1篇目の「いい子のあくび」は、歩きスマホをしてぶつかってくる人をよけてあげ続けることに不満を感じている主人公が、スマホを見ながら自転車に乗る中学生をわざとよけずにぶつかる場面から始まります。私もしょっちゅう人をよけて歩いているので、人ごみはめっちゃ疲れます。自分の安全のためによけないといけないのですが。体格の大きい男性は自分がよけなくても相手がよけてくれると知った時には憤りを感じました。主人公は最後窮地に立たされます。よけなかったら加害することになるのか。やっぱり今後もしっかりよけないと。
「末永い幸せ」は、結婚式に出席するのが嫌いな主人公が、友達の結婚式に欠席することにしたのに、当日結婚式が行われるホテルに泊まって上の方の部屋の窓から見守るというお話です。主人公には考えがあって欠席したいんだけど、周りの人からなんで⁉という反応はされるだろうなあ。同じようにしないと許さないという圧力は確かにある。
2、青山 美智子『リカバリー・カバヒコ』
公園に置かれたペンキのはげかかったアニマルライドがカバヒコです。自分の治したい部分と同じ部分を触ると回復するという都市伝説があり「リカバリー・カバヒコ」と呼ばれています。登場人物たちはそれぞれの理由でカバヒコに会いに来て、話しかけながらカバヒコに触ります。登場人物たちの考え方がいい感じの方へ変化するところがいいです。もしうちの近所にカバヒコがいたらどこを撫でるかなあ?
3、岡崎 琢磨『鏡の国』
2063年8月の鎌倉から物語は始まります。主人公の叔母は大御所ミステリー作家で、亡くなった後に発見された遺稿を出版することになり、準備が進められていました。担当編集者から呼び出されて鎌倉の邸宅を訪れた主人公は、叔母の遺稿である『鏡の国』という私小説には削除された部分があるようだと告げられ、もう一度読み直してほしいと頼まれます。そして遺稿の小説『鏡の国』と、この小説の物語とが交互に描かれて展開していきます。
削除された部分はどんなことが描かれていたのか?興味が湧いてぐいぐい読みました。思いもよらないことが次々に発覚して、読むのをやめられなくなります。遺稿の小説が最後まで終わって、こういう終わり方なんだ、と思いながら鎌倉の現在の場面に戻ってきたら、驚くべきラストが!削除された原稿を読むことができて、このラストの方がいい!と私は思いました。それにしても凝った構成の小説です。『鏡の国』というタイトルには4つの意味があるそうです。それを「クアドラプルミーニング」というそうです。面白かった!
年が明けてあっという間にもう月末です。体調も回復してやっと落ち着いて少しずつ本を読めるようになりました。最後までお読みくださってありがとうございました。
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