最近読んだ本の話 vol.117
「最近読んだ本の話」の第117弾です。もう11月になりました。そろそろ紅葉がはじまりますね。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。
1、岩井 圭也『楽園の犬』
1940年、太平洋戦争勃発直前の南洋サイパンが物語の舞台です。主人公の麻田は横浜で英語教師をしていましたが、喘息の症状がひどくなり退職して、南洋庁サイパン支庁庶務係の職を得て、サイパンに赴任します。サイパンには多くのスパイがいて、麻田はそのスパイたちから日本の情報が盗まれるのを防ぐ役割のスパイ活動を命じられていました。麻田は海軍少佐の堂本の手足となり、情報を集めます。その過程で日本からの移住者や島民たちとの鬼気迫るやり取りもあり、親しくなったりもするのですが、とうとう開戦し、麻田の上司である堂本が行方不明になってしまいます。
自分が麻田の立場だったらどうしただろう?サイパンが占領された後の麻田の行動もすごいです。
2、江國 香織『シェニール織とか黄肉のメロンとか』
こんな女友達がいたら楽しいだろうなあ。民子と理枝と早希の3人は学生の頃からの友達で、まったく違った性格なのになぜか気が合ってかれこれ40年の付き合いになります。イギリスでの仕事を辞めた理枝が帰国して、家が見つかるまで民子の家に居候することから物語は始まります。
大学時代の3人は、外国の小説に出てくる何かはわからないけど心惹かれる名前の物について、イメージしながら話すことが楽しかったそうです。それが『シェニール織』とか『黄肉のメロン』のことなのですが、私も外国の物語に出てくる物を想像して憧れた記憶があって、そういう気持ちわかるなあ!と思って、読んでいて楽しくなりました。
3、川上 弘美『恋ははかない、あるいは、プールの底のステーキ』
幼い頃カリフォルニアに住んでいた小説家の主人公、その幼馴染のアンとカズが東京で再会して、3人のそれぞれの人生を振り返ったり、コロナが拡がって過ごし方も変わった3人のそれぞれの今が描かれていたり、という物語です。主人公とカズの関係は友達と恋人の間のような、パートナーではない、でも何かあっても無くても連絡しあって一緒にごはんを食べて話したりする仲です。こういう関係の人がいるのはいいなあ。
ハロウィンも終わって11月になりました。思ったよりも読書の時間が取れません。出かけたりして他の誘惑が多いからか。最後までお読みくださってありがとうございました。