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差別化の源泉とイノベーションのその先

モノに満ち足りた現代。
特段これといった不満を感じていない生活者。

そんなマーケットの中でいかに競合との差別化を図り、選ばれるブランドになるのか?

ウチの商品はこんなに優れているんです。
他社の商品と比較してこんなベネフィットがあるんです。

単純なプロダクトセールスでは生活者は振り向いてくれない。

前回のエントリーの「だいたいいいんじゃないですか。時代の到来」とも
近しい文脈でこんな過去記事を見つけました。
https://webtan.impress.co.jp/e/2017/11/27/27236

日本「だけ」無関心化が進行
サービス体験の場は望んでいるのに機会がない

企業の生活者との接点の取り方がセールス活動に傾斜していて、ブランドに“触れてもらう(「触れる」とはモノだけでなく思想やコトなども含む)”アプローチが見失われてしまっている昨今。
今や生活者は商品やサービスの“消費”を求めているのではなく、ブランドと関わることで得られる“体験”を求めている時代にも関わらず。です。
※正確に言うと、今は見直しがなされているタイミングだと思いますが。

話が少し横道にそれてしまいましたが、
「差別化の源泉」という話に触れる機会がありました。
差別化の源泉になるものは・・・

ブランドに付随するストーリーと世界観

何を抽象的なことを。
そんなことで選んでもらえるブランドになるのか?

そんな声が聞こえてきそうですが、この話には続きがあります。

デザインもテクノロジーもコピーすることはできるが、世界観とストーリーだけは決してコピーすることはできない

この話を聞いて真っ先に思い出したのが、池井戸潤原作小説の「陸王」です。
昨年ドラマにもなりヒットしたので、ご覧になった方も多いかと思います。

簡単に解説すると、長年“足袋”で生計を立てていた老舗「こはぜ屋」が
業績低迷の煽りを受けながら、足袋作りで培ったノウハウを活かし、ランニングシューズ事業に乗り出す物語です。

当然ランニングシューズ業界には業界最大手企業「アトランティス」という潤沢な資産のある会社が存在し、新しいセグメントに乗り出した「こはぜ屋」は、お金もない実績もない。
あるのは社長(役所広司)を始めとした社員の愛と情熱だけ。で、会社が潰れるのではないか?!という苦労をするわけです。

そんな紆余曲折を乗り越えて、最終的に業界最王手の「アトランティス」よりも高い技術のランニングシューズを開発し、ジャイアントキリングを起こす!という痛快な物語だったわけですが、
ここで差別化の源泉になるのは「ブランドに付随するストーリーと世界観だけ」という話に戻してみると・・・

仮に「こはぜ屋」のランニングシューズが「アトランティス」と性能が”同等”のものだったとしても、「こはぜ屋」を選ぶよな〜

そういうことです。
※原作やドラマをご存知の方には頷いて頂けるかとw

時代とともに、技術やデザインの差異から生まれる競争優位性は、
コピーという攻撃を受けた際にポジションを守ることが困難になっているが、
ストーリー性だけは、コピーされてもオリジナル価値が揺るがない最後の価値である。
濱口秀治『「デザイン思考」を超えるデザイン思考』

イノベーションのその先に何を見るのか?

イノベーションを起こそうと、新しい技術・新しいデザイン・新しいサービスを開発することだけを考えていても
それはリリースした瞬間、近い将来に類似品は出てくるでしょう。

ブランド。というアイデンティティ。
今の時代だからこそ原点に立ち返り、その伝え方・作り方を改めて見直したいと感じました。

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