カスミ理論
前回の投稿が自分なりにうまく書けてしまったので、嬉しさと共に少しハードルが上がってしまった。
継続を邪魔するものは損得勘定や過剰な自意識だ。
乱雑な文章でもいいからまた少しだけ書き起こしてみよう。
……
僕はポケモンキッズだった。
幼稚園の頃にポケモン赤緑が発売し、当時のゲームボーイで死ぬほど遊んだ。
通信対戦は勿論だが、いかに強くて自分好みのポケモンを育てるかに夢中になっていた。
サンダースという電気タイプのポケモンが好きで、10万ボルトを覚えさせて待ちゆくトレーナーを瞬殺する。
お母さんにレベル上げをお願いしたこともあったし、
チャンピオンロードを攻略するようお願いしたのに電源を切られて死ぬほど泣いたことを覚えている(どんな息子だ)。
ポケモンに対する情熱は中学辺りでサヨナラバイバイした。
興味の対象が変わり、別のゲームに夢中になったのだ。
僕の冒険の物語はルビーサファイアで幕を閉じ、そこからは日常からポケモンが遠のいてしまった。
……
話は変わるが、僕はビジネス本が好きだ。
中でも自己啓発の類が好きで元気な頃には通勤電車でよく読んでいた。
本によってテーマはあれど、自己啓発本の趣旨は大体こんな感じだ。
「行動しろ。」
「人生を豊かにしよう。」
この趣旨はポケモンで言うところの「カスミ理論」だ。
カスミ理論とは「水タイプのポケモンで攻めて攻めて攻めまくることよ」といったカスミのプレースタイルを表すセリフからきている。
攻撃こそ最大の防御みたいな理論である。
20代前半の僕はカスミ理論に夢中になっていた。
いかに人生を能動的に楽しく豊かに過ごすか。
仕事だけでなく、プライベートも充実させたいといった気持ちでいっぱいだった。
休んでいるくらいなら行動しよう。
色々な人と繋がりを持ちたい。
積極性が空回りしてよくわからない行動を起こしたこともある。
そんな中会社の同僚から「ハイスコア」といった本を教えてもらった。
全部が全部納得できる内容ではないけど、概ね納得できる価値観だと思った。
というより、この気持ちを忘れてしまったら本当の意味で老化が始まるんだろうなとぼんやり思った。
周囲からの影響もあったと思う。僕の同級生は優秀な奴が多い。
有名企業に就職していたり、会社を経営していたり、もう結婚している奴だっている。
みんな順調に生活を送っているのだ。
身近だった友人の近況報告はなんとなく自分との距離を感じてしまう。
SNSのタイムラインを下にスクロールしていると同級生に続いてインフルエンサーの投稿が目に飛び込んでくる。
ファッションや音楽、ビジネス哲学など自分の「好き」を受け手にわかりやすい表現で発信している。
カスミ理論を後押しするインフルエンサーは多い。
本人たちは意識せず楽しんでいるんだろうが、僕たちは知らず知らずにその刺激を受けてしまう。
影響力の程度はあれ、どんな人でも彼ら彼女らなりの「カスミ理論」で人生を切り開いているんだろうと思った。
僕にとってカスミ理論は一つの軸だった。
以前とりつかれたように読んでいた恋愛工学の本にはこんなことが書いてあった。
成功率=ヒットレシオ×試行回数
大事なのは「試行回数」。
成功率を高めるにはへなちょこでもとりあえずバットを振ってみること。
数打てば当たる戦法だ。
僕はカスミ理論を信仰し、試行回数を稼ぐことに疑問を持たなかった。
思いついては実行する。
Googleの検索履歴は色とりどりだ。
攻めて攻めて攻めまくる
生活を豊かにして人生のハイスコアをとるために。
何もしていない時間は、怠けている・人生損してるとさえ思っていた。
でも僕にとってのカスミ理論は崩壊した。