見出し画像

【こんな場所に出会いたかった⑨】誰も排除しないから、カオスなほど多様な人があつまる、頼れる居場所~富士市「ゆめ・まち・ねっと」たくさんの物語~

■最初に

こんにちは!サイボウズのもっちーです😊

静岡県庁を38歳で退職し、今は子ども若者のためにたくさんの活動をされている、渡部達也さん(以下:たっちゃん)と美樹さん(以下:みっきぃ)のご夫婦がたくさんの活動をされている、NPO法人ゆめ・まち・ねっとさんのシリーズです。
ゆめ・まち・ねっとさんには、
写真のねこちゃんによく似ている保護猫みなみちゃんと、保護犬ぴーすけもいますよ!

前回は、たっちゃんとみっきぃの大切にしていることをご紹介しました✨✨

今回は、これまで20年の活動の中でのたくさんの物語編です!
本にも物語がたくさん載っているので、それ以外で一部にはなりますが、お伝えできたらと思います。

以前の記事
⓪「子どもたちへのまなざし」の紹介記事はこちら
① 活動の紹介編はこちら
② 視察・体験編はこちら
③ 発達障碍のお勉強編はこちら
④たっちゃんの軌跡編はこちら
⑤県庁を辞めて相棒との活動編はこちら
⑥子どもたちの姿から編はこちら
⑦大人との関わり編はこちら
⑧大切にしていること編はこちら

※障碍(者)の文字について
これからは、障碍と書きますと宣言した理由はこちらの記事から


たごっこパークの駄菓子屋さん

■たくさんの物語


【ヤングケアラーの子】


生活困窮家庭に暮らし、ヤングケアラーの若者A子が、たっちゃんのところに家出してきたことがありました。
付き合っている人がいましたが、その彼も不遇な子ども時代を過ごしてきたといいます。

ヤングケアラーのA子は、親から離れたいというし、結婚も考えているというが、
親が怖くて言い出せないといいます。
親に知られたら戻されてしまう
親に転居先を知られたくないと考え、どうにもできなかったのです。

2人の意思を確認し、20歳も超えているので、たっちゃんが婚姻届けにサインをして、届けを出すことになりました。

たっちゃんと一緒に役所へ行き、親に居所を知られないようにするための手続きをしました。
すると、役所の担当者が
「今日の手続きはここまでで、また2週間後に来てくださいね。」
と、対応されました。

高卒で一生懸命働いて、これまで手続きなどで、仕事を休むことになってしまい、職場でもだんだん嫌味を言われ始めていて、これ以上休めない中だったので、
たっちゃんは、
「2週間後に来てください。と簡単に言うけれど、この2人はそんなに勤務先に休暇申請できないし、そういう人のために、休日対応の窓口ありますよね?」
と掛け合いました。

すると、
「原則、平日の時間中に来てもらうことになってるんで。
 その日に私が当番で出るかどうかって決まってないので。」
と返答があります。
たっちゃんは引き下がりません。

「今、原則って言いましたよね。例外があるって意味ですよね。あなたの制度ではなく、行政の制度でしょ?なんであなたが必ずいる日に来なきゃいけないんじゃないですか?」

こんな形で手続きを終えました。
行政のことを知っているからこそ、そして、困っている人を助けたいという気持ちが大きいので、
「そんな感じで、役所の人とケンカになっちゃうこともあるんだよね」
と締めくくります。

知識があるたっちゃんだからこそ、戦えることも多いんだなって思いました。
「やさしさの半分は知識」って言葉がありますが、本当に想いと知識どちらも大事だなと感じたエピソードです。


たごっこパークの焚火

【16歳で子どもを出産】


小さなころからたごっこパークに来ていたIちゃんのお話です。

中学に入って金髪になって、髪を黒く戻すまでは学校に来ちゃいけないって言われたけれど、戻す気がないので、金髪のまま学校に行かずに過ごしていました。

中学を卒業してすぐに出産をし、赤ちゃんを見せに来てくれました。
お母さんも一緒に来て、もう一人の赤ちゃんを抱っこしていたので、
「双子だったのー?」と聞くと、「いえ、こっちは私の子です」とお母さん。

結局、離婚するに至ったIちゃん、母子扶養手当を受けたいということで、一緒に行きました。
離婚はしたけれど、養育費をもらっていて、アパート代も元夫が出してくれていて、そうすると児童扶養手当では、生計が一緒だって見なさざるを得ないと言われてしまいました。

だけど、Iちゃんは無職で、養育費が10万円、夫の払うアパート代が5万円。 養育費が15万円で、そこから5万円のアパート代を出してますっていう母子は児童扶養手当がもらえて、元夫からの受け取り総額が同じでも、アパート代は元夫が直接、支払っていたらもらえないというのはおかしいのではないか?と猛抗議。

「制度がそうなっているので・・」 たっちゃんはいつも制度と言われることを知っています。そこで、
「その制度はどこにどう書いてあるの?」って確認をすることにしているといいます。
時間がかなりかかって、制度運用が書いてある資料を持ってきましたが、そこには、
生活実態を調査して、「臨機応変な運用を」とあり、なぜ臨機応変な運用ををしないんだとさらに迫ったそうです。

Iちゃんのお話は他にもあります。
保育園の申請に行った時には、戸籍謄本を添付してくれって言われました。

「 戸籍謄本を添付するって制度で決まってますか?」って聞くと、
「基本的に付けてもらうようにしてもらってるんで」と返事がありました。
「基本的にとかじゃなくて、それが法律や条例でいわれているの?」
と聞くと、そうではなく、戸籍謄本はいらないとされたといいます。

たっちゃんには、こんな思いが、
戸籍謄本とるのに、お金がかかる。状況によっては、そのお金で家族4人で1食、食べられるレベルで生活している人に対して、簡単に戸籍謄本取ってきてって言う。

僕みたいな人間が付き添ってきて、いちゃもんをつけたから戸籍謄本はいらないですって話じゃない。
戸籍謄本をこの人の分だけなくしてくれって言いたいわけじゃなくて、それが決まりなら、どの家庭も出すべきだと思うし、決まってないんだったら廃止するべき

スタンダードにしてねっていうことを言いたいだけ、「じゃあ今日はこれでいいです」っていうだけでなく、今日以降、同じ申請の人は全員戸籍謄本はいりません。としてくださいよって思っているといいます。

このお話を聴いた時に、今まで何も疑いもせずに必要と言われたら必要なのね。と思って出していましたが、 300円のお金で家族が1食食べられる、そこまで想像力を働かせて、自分を頼ってきた人が少しでも困りごとの解決ができるようにと対応していることに感動したお話でもあります。

みんなの家むすびめのお庭


【貧困の家庭】


視察中に食料を取りに、むすびめに来た姉妹がいました。

姉妹の上には、兄、姉がいます。

親は働けていないし、兄の稼ぎだけでは足りなくて、スマホがしばらく止まっちゃうと思うから。と、言われました。

出会った頃は、兄と姉が働いて、家計をなんとか維持してる状態って聞いていたけど、
姉が家を出てしまい、維持できないくらいになってしまいました。

姉は仕事をして家計を維持していました、そして、家事もすべて姉がやっていました。
それでも、父から家事に対する不満を言われ続けていて、限界になった姉が家を出たといいます。

その後、食料を取りに来た姉妹の姉(次女)が家事をやっていて、同じように父から不満をぶつけられています
姉の変わりに次女が同じ苦しみを抱えることになったこと、もし次女が家を出たら三女が同じように苦しい想いをするのかもしれません。

今、現状で起きているお話なので、何かが解決したわけでも、課題が収束したわけでもありません。
でもどこかにこういった子がいるんだなっていうことを、考えていきたいと思ったエピソードです。

貧困って、かつてのように、ボロボロの服着てるわけじゃなく、隠れているとか分かり辛いとかって専門家とかはよく言われるけれど、
ゆめ・まち・ねっとは、そこに特化してない分、出会った時からちょっと気になるよねっていう気持ちがあるとたっちゃんはいいます。

その子が放っている雰囲気や空気を感じて、ちょっと気になると、気にして見守っている日々や、直接的に食材や日用品を提供していることから、物理的にも精神的にも救われている人がとても多いと感じます。


【親が困っている?】


20年近く遊び場や居場所をやっていて気付いたことがあるといいます。

その1つに親の自立に関係しているお話をお聴きしました。
正直耳が痛いところも多いです・・・笑

それは、例えば子どもが好きな物を選ぶシーンでも、こっちがいいんじゃない?こっちの方がいいよ。
もっというと、「こっちにしなさい」とか、、
それは食べれないでしょ、という前提があっても、こっちにしなさいと、結局親が決めていたりとか、

子どもに早くしなさい早くしなさいっていう親が多い、そういう親は、自律性がない

早くしなさいといって、子どもが迷って、親が怒っちゃう。
自分で食べたいって言ったんでしょ、やりたいって言ったんでしょ、といって親が怒っちゃう。

その逆に子どもを見守らずにスマホやってるとかもある。
子どもってあちこち行くし、火もあるし、見守って気を付けている人は多いが、親はスマホに夢中ということも多いといいます。

また、たごっこパークに初めてきた親にも差があるといいます。
それは、挨拶にくる人と来ない人。

「挨拶に来る人は安心できる。挨拶出来ない人は、親が社会性がないので、地域の中でも、大人同士の交流がないんだろうな、っていうのは容易に想像できる。」

その場合、地域の方と孤立化していることは心配で、でも来てくれているということは、何かを感じて、何かを求めてきてるんだろうなと思うから、どうやって近づこうかと、いつもみっきぃと観察しているそうです。

みっきぃが声をかける?たっちゃん?それとも、他の人? など、
親を通じてその家族の心配をしています。


■最後に

最後までありがとうございます。

他にもたくさんのエピソードが、たっちゃんの書いた「子どもたちへのまなざし」に書かれてます。
きっとあなたは「こんな場所に出会いたかった」と思うはず・・!

これは私の感想で、「こんな場所に出会いたかった」、「こんな人たちに出会いたかった」。まだ会っていない、たっちゃんとみっきぃのこと、活動に対してそう思いました。

サイボウズは「チームワークあふれる社会を創る」を企業理念にしています。
(青野さんの本「チームのことだけ考えた」もおススメです。)

たっちゃんとみっきぃ、2人のバランスの良さも素晴らしいなと感じます。そして、2人だけでなく集まっている人達のチームワークって本当に理想的だなって感じていて、できる事を役割をもってやっている。
そして、それが安心できる居場所になっている。
みなさんの理想のチームワークはどうですか…?

次回は、「子どもに関わる人すべての人へ」ゆめ・まち・ねっとさんの紹介も残すところ2話です。
私たちにもできることも聞いています。

また見てもらえると嬉しいです😊