モフリーの始め方④~ブランディング編Vol.1~
という訳でブランディング編です。今回も一度では紹介し切れなさそうなので分けたいと思います。暇な方はぜひ。
カフェモフリーを立ち上げるにあたり、最も考え抜いたのがお店のブランドイメージじゃないかな、と言える気がする。
「ブランド」という響きはシャネルやブルガリといった高級なものを連想して身構えてしまうかも知れないけど、もちろんそれだけではない。
ざっくり言ってしまうと、ブランドとは「形のない価値」で、「消費者が商品やサービスに抱く共通のイメージ」の事。
そしてブランディングというのは、「そのイメージをみんなに認識させる活動」の事だ。
高級店だけじゃなくてスーパーやコンビニ、チェーン店等でも当然ながらブランディングを行っているし、我々はそのブランディングに誘導されイメージを認識している(させられている?)のだ。
また、企業が誘導して行うブランディングとは別に、誰もが抱くイメージというのもあると思っている。人にはけっこう固定概念というものがある。と言っても「これ!」というものではなく、「こんな感じ…?」程度くらいだけども。
ホテルマン、バーのマスター、小料理屋の女将さん、電気売り場のおじさん、携帯ショップのお姉さん、スーパーのレジのおばさん…これらの人達を思い浮かべる時、大体の人が頭に浮かべるイメージはそんなにブレないのではないか。
言葉遣いや挨拶、距離感だけじゃなく、ネクタイをしてるとかシャツにアイロンが掛かっているかいないのか、髪は整えられてるのかちょっとボサボサなのか、年齢は若いかそうじゃないか…
項目を分けると、みんなの想像する人となりって、実は案外共通しているんじゃないか、なんて思っている。
そういったなにかをイメージする時というのは、意志をもって誘導させられているものや、どこかで刷り込まれて印象付けられたものがごちゃ混ぜになって、我々は知らない内に日常を送っているものだ。
ちなみに初めて来た方が僕を見るなり「もっとおじさんで髭とか蓄えているのを想像していた」と度々言われる。なんなら「だいぶ年もいってるだろうにSNS使いこなして凄いな・・・と思ってました」くらい具体的に言われる。実に喫茶店のマスターのイメージたるや、な出来事だ。
さて、カフェモフリーを利用する人にどんなイメージを抱かせたいか、どんなお店だと認識させたいか…という話に戻る。
珈琲と紅茶、ピアノ、本、これに男性店主と猫一匹。これが揃っている空間は、外からたくさんの光が入る開放的で洒落たものなんかじゃなくて、ほんのり薄暗くて穏やかな音楽と時間が流れる場所…というのが、僕の頭に浮かんだ光景だった。
カフェという軽やかな開放的なイメージではなくて喫茶店、もっと言えばオーセンティック・バーに近かったと思う。
「カフェ」も「喫茶店」も同じなのだけど、僕の中ではこの2つはほんの少し、微妙なニュアンスながら違う。これはもう感覚的な問題だ。
ただし、重苦しいのもいただけない。重々しさの中にカジュアルさも同居させたい。我ながら我侭ですな。
なんて、ここまでいわゆるイメージについて色々言及してきたけれど、最も忘れてはいけないこと、やらなければいけないこと、というのを思い出さなければいけない。
それは僕の場合は自分がやりたいこと、アイデンティティを打ち出すことに尽きる。
自分がやりたいことをやる。我が道を行き、その活動をみて「面白いじゃないか」と感じてもらうのを目指すのだ。経済活動を行うのだから要望に沿ったり喜ぶことを想像してウケなければいけないのだけど、それらもあくまで自分が主体で、やりたいことでなければならない。
ニーズを読んだり応えるのではなく「生み出す」というのが正確かも知れない。もちろんこれは理想なのだけど。
退かない、媚びない、省みない。
少年時代に胸に刻まれた聖帝・サウザー様の生き様がおじさんになって甦るとは夢にも思わなかった。
そんな理想を無想転生しながら最初に決めたもの、それは店名だ。
お店をどんな名前にするか。これはもう確固たる自分を打ち出し表現する最たるものだ。
自分は一体何を表現したいだろうか。
思い浮かんだのは、ほとんど飼い猫と一日中過ごすために始めるようなものなので、「これから一日中、いつでも自由にモフれるんだ!」という思いがまず一つ。
そしてこれからは組織に属さずにやりたいことをやる、「俺はもう何をやるにも自由なんだ!」という一個の自由人としての決意表明。ピアノも好きな時に弾きたいし、本も読みたいだけ読むのだ。
猫をモfree放題だし、俺はもうfree。モフリーという呼び名の響きも語呂も悪くない。
あとは平仮名、片仮名、大文字小文字・・・色々とノートに書いてみて個人的にしっくりきたものを採用した。そんな感じで、ほとんど勢いで決まったのがcafe Mo.freeだ。
いわゆるダブル・ミーニングというやつですね。この店名を決めるのはあまり時間が掛からなかったと記憶している。
考えてみれば、自分の人生で最も憧れて魅力に感じていたもの、渇望していたもの…それは自由というものだったのかも知れないな、と店名を決めた時に思ったりした。
また、思い返すと少年時代に憧れていたのは雲のジュウザで、彼のように雲のように自由に生きたいと願っていたのを思い出したりもした(もしくはスナフキン)。
こういった想いを込めた店名に、さて一体どうやってブランディングという肉付けをしていくか。
決まっているコンセプトがあって、これらをどう訴求すればお店のイメージを世間に伝えられるか。色々と思案した結果、まず最初に取り掛かるべきなのは看板や宣伝に使用する店の顔とも言うべきロゴだな、という結論に達した。
ロゴ作成にあたり、気を付けるべき大事なことは何か、というものを様々な角度からアプローチをしてみた。そこで辿り着いたのがこの3つだ。
・明確
・シンプル
・アイデンティティを感じられる
つまり、パッと見の一瞬でどこまで強力なメッセージを受け取らせるか、あるいは興味を持たせられるか、が勝負なのだ。
看板の歴史は古く、世界史で見ると紀元前3000年の古代バビロニア時代にもあったとされているし、日本では奈良時代まで遡る。大宝律令に肆標(いちくらのしるし)という法律があり、いわゆる「商店は看板を立てなさいよ」という義務が定められていた。
いずれにせよ、文字を読める人が少ない時代。そんな人たちにも分かるような仕掛けが必要なので、やはり見た目で分からせるインパクトは大事ということだ。
また、「人は色からどんな印象を受けるだろうか?」という心理的にアプローチするのも重要ではないか、と考えた。
そんなあれこれを試行錯誤していた当時のメモやラフがこちら。
そしてこれらを綺麗にして頂いたのがこちら。殴り書きのようなラフスケッチを、当店のメニューイラストを担当して頂いた谷野まことさんに起こして頂いた。
その節はありがとうございました。
「このロゴで使ったフォントをこちらのロゴに」とか「色を変えたのが見たい」「このロゴとこのロゴを組み合わせて・・・」という要望に応えて頂いたりしてブラッシュアップしていきました。
谷野さんその節は非常にお世話になりました。
そんなあれやこれやを組み合わせて、最終候補に残ったのがこちら。
これらを僕の友人知人、はたまたその人たちの友人や職場の方に印象を聞いてもらいアンケートを取って、その結果、今のロゴに決定したのだ。
シックなフォント、そして鍵盤の上に猫がいて、堅苦しすぎず可愛すぎないロゴ。このお店を表現するのにこれ以外ないのではないかというくらい、我ながら気に入っている。
また、自分でも「こっちがいいな」という方が選ばれたのもあって、僕が良いと感じたもの・生み出したものに世間とのギャップがないどころか、非常に評判も良く好意的に受け入れられるという手応えを感じられたのはとても大きく、自信に繋がった。関わってくれた皆さん、どうもありがとう。
採用に至らなかったロゴたちもこのまま葬られるのは勿体ないので、幻のロゴとしてお披露目もした。これらも評判は上々で、調子に乗ってグッズにもなってしまいました。
谷野さん、助かってます!
後半に続きます。
P.S.ちなみにロゴのカラーを白黒にすると、オリジナルグッズを作ったり印刷するときに余計な費用が掛からなくて地味に助かりました。これもロゴ作成にあたって一つの参考になればと思います。
最後まで読んで頂きありがとうございました。