最初の訳出は1966年だから、もう半世紀以上前だ。大戦後の建築論を、建築の意匠、様式という美術史的な文脈から、「内部空間の意味」というより根底的な意味論へと定礎しなおした古典的な著作。
建築は、線と面、直線と曲線、密閉と破れ目、光と闇などの対項を組み合わせつつ、内なる空間をつくりだす。
そして、私たちが建築の外部と内部、内部の仕切り内を運動することによって、生活や儀式において、その建築の生きられた意味がつくりだされる。
著者は、建築が内部空間の生きられた経験を創造する生活ー芸術であることを論じた美術批評家の論考から何カ所か引用している。ここではそのふたつを孫引きしておく。
ひとつめは、フォションによる次の一節ー
もう一人、ゴッドフリー・スコットの論説からも一部引いておく。
現在ならば、アフォーダンス的であり且つ美学的な体験価値を、建築の固有の価値、評価基準とみなす観点が提示されている。この観点は、クリストファー・アレグザンダーの『ザ・ネイチャー・オブ・オーダー』などで論じられている、建築空間によって創出される「空間の質」をめぐる議論にも繋がっていく。