『北欧こじらせ日記』続編発売を前にストレッチします(これまでの3作品を語る)
週末北欧部chikaさんの著書『北欧こじらせ日記』の続編発売が発表されたのは、10月5日の夜のこと。
別府旅に出ていたわたしは、別府温泉の湯上りに、休憩室でコーヒー牛乳とカルピスソーダを交互に飲んでちゃんぽんさせながら、スマホを開いてこの情報を知った。
いつか続編は出るのだろうと思ってはいたものの、とってもうれしくて、うれしくて、うれしかった。続編が出るってすごいことだ。著者の方が描き続けていて、わたしの手元まで届くって、あたりまえのことじゃない。ありがたい……
『北欧こじらせ日記』は、どん詰まりでなんにもできないわたしを救ってくれた本だった。
▼そのときのことをこちらに書いています
さてさて、続編の『北欧こじらせ日記 フィンランド起業編』発売まであと3週間。気持ちがかなり高まってきましたので、このへんでこの作品への想いをほぐしておくためにも、前作までを振り返ってストレッチさせてもらいます。お付き合いいただけるとうれしいです。
『北欧こじらせ日記』
1作目では、フィンランドとの出会い、いつか移住することへの決意、移住に向けた10年以上にわたる北欧こじらせ人生が描かれている。
わたしはこの本で描かれているchikaさんのキャリア観がすごいと思っている。
大好きな北欧に携わる仕事をしようと、北欧系の会社に自分からアプローチし続けて就職する。自ら企画を立ち上げ、泣くほど気持ちを込めて働いたのに、その会社がなくなることを宣告され、かなり落ち込むことになる。そりゃそうだ、大好きな北欧と距離を置きたくもなるとも思う。
そしてつぎに転職したのは、北欧と関係のない人材系の会社。そこでできることを増やして人生の選択肢を増やしつつ、自分の気になること、すなわち北欧関連のことにチャレンジするという道を選んで進んでいく。
好きなことを仕事に、って魅力的なことではあるけれど、やっぱりうまくいかなかったときのダメージは好きな分だけ大きくて、重くて、ときには自分を押しつぶしてしまうことだってあるかもしれない。だから好きなことに”携わる”ではなく”守る”ための環境づくりをする。この生き方って本当に大事なことだなあ、と思う。
好きなことを自分が好きでい続けて、大事にし続けるために、自分の生活の基盤となる仕事をしながら、その傍らで好きなことに向かって日々チャレンジしていく。低クオリティだとしても、すこしでもはじめてみる。これって、好きなことで生きていくための、最初の大事なステップのような気がする。
これをすべてご自身の経験をもって描かれていて、本当に何度読んでも、がむしゃらに挑んだそのまっすぐなまぶしさに、立ち上がったその強さに、生き方を見つけていく柔軟さに、読むたび勇気をもらっている。
『北欧こじらせ日記 移住決定編』
2作目となる移住決定編では、コロナ禍にフィンランドのペンパルとやりとりすることで過ごした日々、入院生活ではじめたマンガを描くこと、お寿司学校とお寿司屋さんでの修行の日々、フィンランド就活、移住決定、フィンランドでの寿司職人としてのキャリアのはじまりまでが描かれていて、かなり内容は盛りだくさんだ。
フィンランド就活のなかでぐっときたのが、働きたいお店の求人に応募し、急なリモート面接の要望がきたとき、このチャンスの勢いを逃さないためにも、と面接を受けることを決意したシーンだった。
決まったらもう面接を受けるしかない。英語面接まで24時間、想定問答の準備、会社研究、面接官のインタビュー記事の翻訳……と、すさまじいスピードと熱意で準備をしていく。
この勢いって、チャンスをつかむのにすごく大事なことなんだと思う。急で不安だからと怯んで先延ばしにしてしまうと、チャンスはきっといなくなってしまう。挑むことを自分で決めてしまって、短時間でも走り抜く。こうやってチャンスを自分のものだと決めて突き進むことができる人がいちばん強い。
自分のものだと思えるチャンスがきたら、ためらわずに挑む。それまでの積み重ねた日々さえあれば、きっと準備は万端で、だれにも負けない愛を持って挑むことができるのだと思う。
『北欧こじらせ日記 フィンランド1年生編』
2023年4月にヘルシンキに移住し、はじまった寿司職人としての生活! と思ったら職場が倒産するという大ピンチ! からのフィンランド生活の立て直しに向けた奮闘が描かれる。3作目のチャプターも盛りだくさんだ。
勝手な想像でしかないけれど、フィンランドの職場って労働時間もそんなに長くなくて、働きやすそうなイメージを持っていた。けれどやはり、どこの国でもその職場の状況によって大変な負荷のかかっている人というのは存在する、という現実があるのだ。レストランが大変なときは長時間の勤務になることもあるし、冬に日照時間の短いフィンランドでは多くの人が冬季うつを経験するらしい。そうして療養のための休暇をとる人が増えると、残った人がすべてを引き受けてハードワークをすることになってしまう。幸福な国だからってみんながずっと幸福なわけじゃないって、あたりまえだけどあらためて気付かされる。
そんなときchikaさんが勇気をだして「余白」をとることを選ぶシーンが印象的だった。一生懸命にすべてを引き受けて働くことで得られるものもあるかもしれないけれど、自分の人生は自分のもので、理想の暮らしをデザインしていくためにも、余白が必要だ。その余白を得るためには、強い意志と、勇気がいる。
これは自分が壊れないために、自分のケアをしながら働き続けることにおいて、とても大事なことだと思う。夢に向かって走っているときは、無理していても大丈夫だと思えるけれど、夢のその先に進んだとき、夢の続きを走り続けるためには、自分のスタイルを決めて、その自分を守るために、勇気を出してひと呼吸おく時間を作ることが必要なのだと思う。
『北欧こじらせ日記 フィンランド起業編』
これまでの3作品を振り返ってみました。なんかわたし、『北欧こじらせ日記』を自己啓発本として読んでるのか? ってくらいキャリア観に感銘を受けている気がする……が、この本にはフィンランドの魅力、chikaさんの素敵なフィンランド生活、愉快な友人たちとのエピソードがたくさん描かれていて本当に癒されるし、ほっこりできる本なのです。ビジネス書ではありません。
コミックエッセイで描かれているから読みやすくてほっこりしがちだけど、キャリア観とか人生観とか、はっとするような言葉もたくさん書かれていて、何度読んでも考えさせられる。ほっこりフィンランド本でもあり、ゆるふわ自己啓発本でもある。とにかく3冊とも、chikaさんの魅力がぎゅっと詰まりすぎている!
4作目はフィンランド起業編ということで、寿司職人のキャリアを経て起業し、フィンランドでますますきらめくchikaさんの暮らしが描かれているようでとってもとっても楽しみだ! 大好きな本の続編が出ることって、生きててよかった~って大袈裟じゃなく心から思うし、またここから生きてく理由のひとつにもなるので、とってもありがたいです。
これまでの3作品を積み上げるとサーモンのお寿司(シャリ、わさび、サーモン)になる、という最高の遊び心がこもったデザイン……かわいい……