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醤油が前を向いているのは当たり前じゃないんだなと思った、タイミーでの日々

転職活動というお暇が、予想を超えて長く続いている。

まあ、予想が甘かった。というか、せっかちだった。今の所を辞めて転職活動します、と年上の友達に言うと、みんな「せっかくだからゆっくり休んで」とか「焦らずじっくり決めて」とアドバイスをしてくれた。だが私はそのたびに心の中で「この方たちは優しいからそう言ってくれているが、そうゆっくりなどできない!退職して1ヶ月以内に決めてやる」と思っていた。そのために一月から自己分析を始め、二月中旬には求人に応募し、少しずつ面接を受けていた。三月末に仕事を辞め、この調子であれば4月中に仕事が決まる。と思っていた。お金が減るという心配もあった。
しかし、なかなかうまくはいかない。内定寸前までいって労基に相談するような懸念点が出てきて辞退、とか、そういうのもあった。そのうち嫌になってきて、自分から応募したくせに一次面接のお知らせが来たら面倒になって辞退するという所業も何度かしでかした。私のレディー・ガガ(アルバイトの時にできた友達。内気な私にも気さくに接してくれる、笑顔の眩しい人。とにかく優しく、どんな決定も全肯定してくれるので、まるで人類全体を肯定してくれるパワーを持ったレディー・ガガのようだ)には「◯◯(私)を落とす会社なんてみんな見る目ないからね!」と強気な励ましを貰っていたが、それを思い返して踏ん張っていても、だんだん参ってきてしまった。
その上貯金も早いうちに底をつき始める。私は実家にいて、3ヶ月くらいどうにかできるような貯金すらしてこなかったのか、と自分に落胆する。私は自分に無理な課題を課して必死に踏ん張り、出来なければ心の中で叱責するという、完璧主義の行き過ぎのような性格をしている。これは高校生くらいの頃からずっと変わらない。大分和らいではきたが。学生の頃はもっと自分を追い込んで精神的に病んでいた。今は病むまではいかないが、この性格のせいでたまに生きづらい。

失業手当の給付制限期間のあいだ、週に20時間未満という決まりを守りつつアルバイトを始めた。長期の雇用契約は交わしてはいけないそうなので、人生で初めて「タイミー」を使い始めた。
最初、「このアプリにはマックとコンビニと引っ越しのアルバイトしかないのか?」と戦慄した。でもそれは通知をオフにしていたからだと気づいた。通知をオンにしたら、次から次へとアルバイトの募集が降ってきた。そして魅力的な募集は秒で埋まる。これは争奪戦だと気づいた。
私も争奪戦に何とかくらいつき、工場や、カフェやレストランの洗い場など、いろんな場所でアルバイトをした。

知らない場所に行くと、いろんな人と出会えるから楽しい。
それ以上にタイミーの体験で印象的だったのは、「こんなことまで人間の手でやっているの?」と驚くことが何度かあったことだった。
例えば飲み物を段ボールに詰める作業なら、てきぱきと、且つ飲み物の缶が潰れないように気を使いつつ、商品名が見えるように詰める必要がある。郵便物の仕分けなら素早く住所を見極める。お店の商品の品出しなら、早朝に起き、さまざまな商品をラベルが見えるように丁寧に並べていく。お店で醤油のボトルを並べている時に思った。ぶっちゃけダンボールから出して適当にボカボカと置いていくこともできるしその方が楽だ。でも、列を揃えて並べ、全てラベルが前にくるように置く。私はその状態をデフォルトだと思って買い物をしていたが、早朝から人間の手で丁寧に配置されているおかげなのだと気づいた。頭で考えれば体験しなくても分かることなのだが、実際にやるとそれが思ったより大変な作業だと知った。また、一見簡単に見えるような作業でも、実際にやってみると神経を使うし難しい、という体験も何度かした。

全てが当たり前じゃない。と感じるようになると、当たり前になってしまっていたことに気づくようになる。
アルバイトをしながら節約生活をしてほとんど何も買わずに過ごしていると、「実は家に読んでいない本がこんなにあった」などの新たな気づきもあった。
世界を揺るがす野望を見つけた。(ちょっと大袈裟)実現には少なくとも10年くらいかかりそうだが、自分の夢なので仕方がない。

最初は焦ったり落ち込んだりしていたものだが、それを過ぎるとこんな毎日も悪くはないと思い始めて、今は自分の足で、自分のペースで「生きること」を見つめている。
たった数ヶ月、数年、こうして自分を見つめてみるのも貴重な体験なのかもな、と思う。


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