虐殺器官の感想。地獄は頭の中にある!
みんな興味津々、地獄って何。どこにあるの。そんなのないよ、いや、比喩だよ。色んな考えがある。そんないろんな考えを集めてみようと思う。
地獄といえば、面白い考え方を表すセリフがある。
地獄からは逃れられない。だってそれは、この頭の中にあるんですから。
伊藤計劃という漫画家の作品、『虐殺器官』からのセリフ。
この作家はけっこうカルト的人気があつたみたい。SF作家で、百年くらい先の未来の社会を描いている。
この作品は、テロが盛んになった社会で、国際テロの元凶の犯人を追いかけるアメリカ陸軍特殊部隊の隊員が主人公。テロを防ぐ社会作りの中で、個人の管理が徹底されて、あらゆる足跡が記録されるようになる。ちょうど今の社会みたいに、監視カメラ、電子マネー決済、入店記録、全てが収集されて、個人のプライバシーは無くなる。中国が一番似ているかも。
そのような社会で、主人公は監視システムを騙してテロをするやつを追いかける。そして、捕まえたテロリストから、監視社会とテロの拡大は関係ないとの真実を聞く。その犯人は、反対に、人間の脳に備わる虐殺の能力を悪用して、世界各地にテロを起こしてきたと白状する。それを聞いた主人公は、世界中のテロを減らすために、人間の脳に備わる虐殺の能力を開放するきっかけをアメリカ社会に撒き散らす。
アメリカは、混乱へと突き落とされ、どうなるか、で幕が下りる。
この続きは、次作の『ハーモニー』というプライバシー無しの優しい社会へと続きます。
では、上記の地獄は、脳の中にある。カトリック神学を学んだ兵士のセリフ。戦って、殺して、アメリカの平和な生活に戻る。でも、殺した記憶と光景は頭の中に残って、心を苛む。逃れられない苦しみ。
だから、地獄は死後やどこかにあるのでは無くて、頭の中にある。
死んだら行くという地獄は、現代の地獄ではない。この生きてる世界の頭が作り出すのだ。
すると、天国も頭の中にあるのかなと茶化す同僚のセリフ。
地獄の解釈から、伊藤計劃は、肉体にこだわって世界観を作る作家の性格がよくわかります。